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5-10 旅立ちの時、到来

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 翌日の昼休み、日向は火雷に、安土が提案した事を説明する。

 「そっかぁ……ひむちゃんちから神社まで、透明化しないとぬいぐるみは運べないもんね。 分かった、ひいか、その提案に乗るよ。 金曜日の学校帰りに、ひむちゃんちに寄るから、準備をお願いね」

 「ありがとう、ひいちゃん。 いつも助けてくれて、感謝しかないよ」 

 「ううん、ひいかに出来ない事にチャレンジしようとしてるんだもん、少しでも力になれて嬉しいよ。 じゃぁ、土曜日はあの洞穴でスタンバっておくからね」

 「うん、よろしくね」


 金曜日、火雷と一緒に下校した日向は、自宅で衣服一式を託す。

 「あっ、このブラウスにパンツ……この前絵日記帳に描いたイラストに凄く似てるよ」

 「うん。 ひいちゃんに言われてこの前、お母さんに頼んで買ってもらったんだぁ。 きゆりちゃんに登山に誘われた時、一度着てみたんだけど、動きやすかったよ」

 「そっかぁ。 きゆりちゃん、山岳部で忙しいのに……気に掛けてくれてたんだね。 私もひむちゃんがその服を着てるとこ、見てみたいなぁ」

 「今、お披露目しても良いけど、明日のお楽しみ、っていうのはダメ?」

 「あっ、その方がもっと感動できそうだね。 分かった、そうするよ。 あと、ひいかも明日、ちょっとしたサプライズを用意してるから、楽しみにしててね」

 「わ、何だろう……楽しみにするよ」


 土曜日……いよいよ【然るべき時】と思われる日がやってきた。

 今日6月30日は古川町の記念日で、町内の全ての学校は臨時休校である。

 目覚めるとすぐ、パジャマ姿のままで日向はリビングへと向かう。

 「おはよう、ひむか。 いよいよ言ってた日ね。 お母さん、ひむかの好きなモーニングセットを、腕によりをかけてスペシャルに仕上げたからね。 お腹いっぱい食べて、頑張ってらっしゃいね」

 「わぁ~~、美味しそう~~! お母さん、ありがとう。 私にしか出来ない事だから、やり遂げてみせるよ。 いただきまーす」

 …………

 「ごちそうさま~~、美味しかったよ。 じゃぁお母さん、透明化すると話せなくなるから、ここで挨拶するね。 行ってきまーーす!」

 「行ってらっしゃい、私の自慢のひむか。 いつもの儀式もここでやりましょ」

 「じゃ」 目をつぶってお互いの額を合わせ、 「「今日も良い一日になりますように!」」 と、二人で声を合わせる。 

 食事を終え、明美との挨拶を済ませた日向は、寝室に戻って衣服を脱いで透明化すると、勉強部屋からウサギのぬいぐるみを持ち出し、玄関から出ていく。

 「ひむか、扉の開け閉めで、そこを通ったのが分かるよ。 無事に帰ってきてね」


 日向はいつもの参道を通って、月宮神社へと向かう。

 (さすがに日向のこの姿は……私達には見えてしまうから、自分の事のように恥ずかしいよ)

 ((ま、違う視点から自分の裸を見てるようなものだからね。 まず確実に放送禁止だろうね、このシーンは))

 「あっ、ほつきが光った……何だか、久し振りだなぁ。 励ましてくれてるのかな」

 (あはは、初代のメタン発電(メタはつげん)を、日向がいいように捉えてくれたね)

 神社に到着するなり、安土の計画通り、例の洞穴へ向かう。

 そこには既に火雷が到着していて、日向が預けた衣服が、何時の間にか用意されていた簡易テーブルの上に置かれている。

 「もしかしてこのテーブル、ひいちゃんが手配してくれたのかな」

 日向は抱えてきたぬいぐるみを地面に置くと、下着を身に付けて実体化する。

 「あっ、ひむちゃん! おはよう。 無事、ぬいぐるみは持って来れたの?」

 「おはよう、ひいちゃん。 うん、バッチリ持って来たよ。 今、ここに置いたとこ」 と、床の方を指差す。

 日向が衣服を全て着終えると、その姿を見た火雷が、 「わぁ~~、凄く似合ってるよ~~。 スタイリッシュで凄くおしゃれ。 ひむちゃんの新しい魅力、発見だよ」 と、全身を眺めて見惚れている。

 「あはは、ありがとう。 私のセンスじゃないのが残念だけどね」

 日向はペロッと舌を出して微笑む。

 準備が整うと、日向は火雷に誘導され、一緒に授与所の裏口を通って社務所へと向かう。

 二人が社務所に入ると、安土と茅金、それに、水鶴と木柚梨も待っていた。

 「えっ?! どうしてここに、みづるさんがいるの? きゆりちゃんも」 日向は心底驚いている。

 「ああ、先日、ひいかに誘われてな。 ひむかを見送りに来たんだ」

 「私もひいかちゃんに誘われたわ。 ひむか、見ないうちに立派になった感じね。 何だかオーラを感じるわ」

 「ひいかが二人を誘ったの。 これがひいかのサプライズ。 ひむちゃんを皆で励まそうって思って」

 「ひいちゃん、皆……ありがとう。 凄く嬉しいよ」 日向の声は裏返り、涙が頬を伝って流れる。

 「いよいよですね、ひむかさん。 もう、準備は万全ですか?」

 「はい、宮司さん。 アドバイスありがとうございました。 お陰で、上手くいきました」

 「ひむかちゃん、いよいよね。 目の前で舞う姿が見れないのが残念だわ」

 「ちかねさんの分も、恥ずかしくない舞を舞ってきます」

 日向は安土、茅金、水鶴、木柚梨と握手した後、火雷と抱擁し合う。

 「ひいちゃん、行ってくるね。 沢山助けてもらって、感謝しかないよ。 必ず笑顔で戻ってくるから、それまで待っててね」

 「うん、分かったよ」

 そして、日向は皆の方へと向き直り、 「皆の気持ちを背負って、使命を果たしてきます。 では……行ってきます!!」 と、元気に出発の挨拶をすると、 「「行ってらっしゃい!!」」 皆の声を背に社務所を後にし、独り、先程の洞穴へと向かうのであった。


 衣服を脱いでテーブルの上に綺麗に畳んで透明化すると、島へ渡るための服装に着替えてぬいぐるみを抱きかかえ、カヌーに乗り込んで、長森島へ向けて出発する。

 水鶴に教わったテクニックを駆使してカヌーで島に渡り、木柚梨に教わったアドバイスを生かして長森島を登り、途中、しっかり水分補給をしてから、月宮神社奥宮に辿り着く。

 手水舎で手と口を清め、安土に教わった手順で茅の輪をくぐり、明美に教わった作法通りに参拝すると、前回と同じように独りでに本殿への扉が開いた。

 「さて、ここからが本番よ」 日向は自分に向かって言い聞かせ、気合いを入れ直す。

 茅金に教わった通りに巫女衣装を着ると、神籬(ひもろぎ)の前へと進み出る。

 「なるほど、これがちかねさんが言ってた、ひもろぎっていうものね」

 その前で、日向が安土に教わった唱え方で大祓詞を奏上すると、神籬が光を放ち、輝き出した。

 「す、凄い! 何だか祝詞に反応して輝き出したみたい。 上手くお唱えできた、って事なのかな」

 そして、茅金に教わった通りに略装束を身にまとうと、先日、神社で観た通りに、小さな台の上に鉾先鈴をスタンバイさせ、檜扇を手に持って、浦安舞を舞い始める。

 (演奏が無いのに、しっかりリズムが取れてる。 文句のつけようがない出来だよ)

 舞い終わると、神籬から更に光が溢れる。

 「わっ、まぶしい……一体、何が起ころうとしてるの?」

 光が落ち着くと、何処からともなく女性と思われる声が聞こえてくる。

 [様々な難題を乗り越え、長い旅を経て、よくここまで辿り着きました。 私の愛しい日向よ]

「〇〇に教わった……」という表現を連発して目立たせました。

ここに辿り着くのに、自分一人の力だけでは何もできなかった事を強調するためです。

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