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5-8 及第点のお墨付き(登山編)

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 水曜日の昼休憩中、日向の席に木柚梨が訪ねてくる。

 「よっ、ひむか。 この前言った山登りのアドバイスの件だけど、明日、一緒に神尾渓谷までハイキングに行かないか? 急に誘って申し訳ないけど、午後からの授業も、山岳部の活動も休みになったし、折角だと思ってな」

 「きゆりちゃんが私を誘ってくれるなんて、嬉しいよ。 喜んで!って言いたいけど私、きゆりちゃんの歩くペースに付いていく自信、無いよ……」 日向は喜びつつも、不安そうに口にする。

 「なに、心配ないさ。 私は後ろを付いていく……ひむかのペースで歩くと良い」

 「そっか。 私の今の運動能力を客観的に見てくれる、って事だね。 分かった、一緒に行こ!」


 翌日、日向は初めて学食で昼食を摂った後、山岳部の部室の前で、登山スタイルに着替え終わった木柚梨と落ち合う。

 「よっ、しっかり食べてきたか? じゃ、中で私服に着替えなよ」

 日向は家から持参した私服に着替え、木柚梨とともに西門へと向かう。

 「きゆりちゃん、今日はよろしくね」

 「ああ、こちらこそ。 ところでその服装、いつものひむかとは随分違う雰囲気だけど……あ、なるほど、この前見せてもらった絵日記帳の表紙に描いてた衣装に似せたんだな。 良い心掛けだ」

 「凄い! 気付いたんだね、私の考えに。 実際に長森島を登山する時はこんな感じの服装になるから、より実践的に臨めるかな、って。 ひいちゃんにアドバイスをもらって、お母さんにこの前、買ってもらったの」

 「ま、足元のローファーの安定性が不安だけど、ワイドパンツなら機動性があるしな。 じゃ、出発しようか」

 「うん」 気合を込めて短く返事をし、日向は力強く一歩を踏み出す。


 「4月の歓迎登山の時は、2時間掛けて登ったコースだけど、今日は1時間半を目指してくれ」

 「って事は、30分も縮めなきゃダメなの?! しかも、あの時は結構脚にきたんだよ?」 日向の弱気な発言を聞いて、 「なに、今のひむかなら出来るさ、きっと。 自分を信じなよ」 木柚梨は力強く励ます。

 …………

 「ふぅ~~、着いたよ~~。 あの時はあれだけ脚にきたのに……自分でも不思議だよ。 こんなに早く、ペースを崩さずにここまで登れたなんて。 で、タイムはどうだったのかな?」

 日向が尋ねると、木柚梨は登山後の疲れなど微塵も感じさせない表情で、時計を確かめる。

 「うん。 1時間25分……目標クリアだな。 後ろから見てたけど、私が前に教えたポイントは大体掴めてたし、何より、下半身がだいぶ安定してたな。 ひむか、結構根性あるんだな。 見直したぞ」

 「良かったぁ~~。 きゆりちゃんにそこまで認められるなんて、自信になるよ」 日向は心底からホッとした表情を浮かべる。

 「ところでひむか、折角ここまで来たんだ、一緒にボート、乗らないか?」 木柚梨は渓谷の底を指差して提案する。

 「わぁ~~、良い案だね。 今日は普通に観光客もいるし、ボートにも乗れるんだね。 行こ!」

 二人は橋を渡って、反対側の崖にあるボート乗り場へと向かう。

 「あっ、きゆりちゃん、ボートの操縦、私に任せて欲しいな。 これもあの島に渡る時の予行演習になると思うし、今日誘ってくれたお礼もしたいから」

 「なるほど、予行演習か。 ああ、それなら、ひむかに任せるか。 よろしくな」

 日向は水鶴から教わったテクニックを駆使して、ボートを漕ぐ。

 「カヌーとは感覚が違うけど、応用すれば上手く漕げるもんだなぁ」

 やがて、遥か上方から流れ落ちてくる滝の側に差し掛かる。

 「きゃーっ、滝からのしぶきが凄いよ~~。 涼しい~~」 日向がはしゃぐと、 「ああ、気持ち良いな。 疲れた身体にはやっぱ、マイナスイオンだな」 と、木柚梨が独特な表現を使って共感してくれる。

 「それにしても両側の崖、凄い眺めだね。 何か柱みたいにそびえ立ってる。 自然の力って凄いなぁ」

 「ああ。 私はそういう自然むき出しの姿が好きで、登山をやってるんだ。 ここもそうだけど、私をワクワクさせる景色は、世の中にまだまだ沢山ある……それを一つ一つ苦労を乗り越えて体験して、ご褒美としての感動に酔いしれたいんだ」 木柚梨の言葉に力がこもる。

 「へぇ、きゆりちゃんの山登りへのモチベーションって、強いワクワクの気持ちからきてるんだね」

 「そうだな。 好奇心っていうんだろうな。 それに勝るモチベアップは無いだろうな」


 ボートを降り、歓迎登山の時に集合場所として利用した広場に二人は戻ってくる。

 「ちょっとだけいいかな、きゆりちゃん。 あのログハウス風の休憩所に寄っても」

 「ああ。 私も一緒に行ってみるか」

 日向は建物に入るなり、星月と巡り会った、ベルトパーテーションの向こう側にある木製の台へと近付く。

 (日向……またここに戻ってくるなんて)

 「さすがに何もない、かぁ。 あれっ?」

 日向は台の脚に刻印されている文字に目を止める。

 「寄贈 月宮神社……そっかぁ、お母さんの時代にここに飾られてたウサギのオブジェって、この台とセットで神社から寄贈されたものだったんじゃないかな。 それが何らかの理由で撤去された、と」

 (ホントだ、そんなところに刻印があるなんて気付かなかったよ。 ここにも月宮神社に繋がるものがあったんだね)

 「ん? 何か発見があったのか? 私にはただの台にしか見えないけど……」

 「ううん、大した発見じゃないよ。 ここで不思議な体験をして、全てが始まったんだな、って思って眺めてたの」

 「なら、そこで体験した事自体が、ひむかに与えられた運命ってヤツだろうな」

 「私に与えられた運命、か。 ここで見付けるべくして見付けたのかな、ほつきを。 じゃぁ、そろそろ……暗くならないうちに帰らないと」

 「ああ。 ところで、アドバイスの件だけど……今のひむかなら充分、及第点だ。 私の分も、しっかり長森島、登ってきてくれよな」

 「うん、分かったよ。 きゆりちゃんの想いも抱えて、頑張って登るよ」

 ひむかがそう言った直後、木製のログハウスが軽くきしむ音を立てながら揺れる。

 「わわ、また! じ、地震が来た!!」

 「ああ。 最近よく揺れるよな。 何かの前触れなのか、メッセージなのか……」 木柚梨が不思議な事を言うので、 「メッセージ?! 地震をメッセージに使える人なんていないよ~~」 と、軽く受け止めつつ日向は反応を返す。

 (地震がメッセージ……きゆりちゃんらしいユーモアだけど、そういう視点で見てこなかったなぁ。 何か因果関係ってあるのかなぁ)

 「じゃ、帰りを急ごうか。 今度は私が前を歩くから、しっかり付いてきて」

 木柚梨と一緒に下山する日向。

 木柚梨が下山する姿を後ろから見る事によって、客観的に動きを把握できるのであった。

 (思えば、星月を見出してからの日向は、新しい事を色々始めてきたなぁ。 今では登下校をフラット歩行を駆使しながら早歩きでこなしてるし、朝昼夜のスプリットスクワットも欠かしてない。 寝室では起きた後と寝る前に大祓詞を唱えてるし、勉強部屋では1日3枚のイラスト練習も続けてるし、巫女衣装のエアー着付けもぶつぶつ言いながら復習してる。 昨日から舞の順番を覚えるストーリーを考えてるし……この短期間で心も身体も凄く成長してるな、って思う。 それに比べて私って、これらの事を一つとして体験してこなかったんだよなぁ)

 ((向かうべき目標を見付けた時、それに向かう姿勢が今まで私が見てきたどの日向よりも全力で……自分だけに与えられた特別な使命だから、って捉えてるのもあるだろうけど、周りの人たちの後押しがあるからこそ、今の日向がいるんだよ))

日向と木柚梨のツーショットストーリーを考えました。

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