表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/54

4-18 夢のお告げ

前話を読んで下さった方に感謝です

今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 月宮神社を後にした日向と火雷は、ガゼボまで戻って来る。

 「じゃぁ、ひむちゃん、ここからひいかの家まで案内するから、付いてきてね」

 ガゼボから西に伸びる、緩やかな上り坂の小径を進むと、5分ほどで緑色の屋根の、二階建ての家が見えてくる。

 「わぁ~~、ひいちゃんの家、洋風な感じでおしゃれだね~~。 屋根には煙突があるし、屋根のすぐ下にはステンドグラスも……二階には出窓があるんだね」 玄関を前にして、日向は家を見上げている。

 「煙突はただの飾りだけど、それも、ステンドグラスも、出窓もお気に入りなの。 出窓の部屋はママの寝室で、ひいかの部屋は二階の奥にあるよ」

 玄関先で二人が話していると、中から女性が出てきて、 「こんにちは、ひむかちゃん。 ひいかの母の由美子よ。 初めてよね、家に遊びにきてくれるの。 ひいかから話に聞いてて、ずっと会うのを心待ちにしてたのよ」 と、笑顔で挨拶する。

 「初めまして、おばさま。 いつも、ひいちゃんに仲良くしてもらってます、ひむかです。 今日はひいちゃんのお誕生日会……心待ちにしてました」

 「こちらこそ、いつもひいかをありがとうね。 さあどうぞ。 今日はたっぷり楽しんでいってね」

 挨拶を済ませ、三人はリビングに入る。


 カウンターキッチンと向かい合わせに、立派な木のテーブルと椅子が配置されており、テーブルの上には既に色んな手料理がセットされている。

 それを見た日向は、 「うわぁ~~、お肉に、お野菜に、デザートにドリンク……まるで、何かの小説で出てきたビュッフェみたい。 おばさま、お料理上手なんですね!」 と、驚きを隠せない。

 「うふふ、ありがとう、ひむかちゃん。 子供の頃から料理を作るのが好きで、今日もワクワクしながら料理してたものだから、ついつい作りすぎちゃった」 由美子はそう言って、軽く舌を出す。

 「もぉ、ママったら。 今日はママを入れても女子三人なのに、こんなに沢山、どうやっても食べ切れないよぉ」 火雷が軽くツッコミを入れる。

 「まぁ、量はともかくとして、こんなに美味しそうな手料理が食べられるなんて、私、凄く幸せだよ」

 「うふふ、幸せだなんて、ひむかちゃんの期待に応えられるかしら」 と言いながらも、顔には自信が溢れているように見える。

 三人のグラスに、絞りたてと思われるアップルジュースを注ぎ、由美子は開会の音頭を取る。

 「ひいか、お誕生日、おめでとう! 今日は大切なお友達と一緒に、最高の思い出を作ってね。 じゃ、乾杯~~!」

 「「乾杯~~」」 三人がグラスを合わせる甲高い音がリビングに響く。


 日向はまず、山のように盛られたフライドチキンを手に取り、勢いよくかぶりつく。

 「うわぁ~~、美味しい~~! 外はカリッとしてるのに、中はジューシーで、お店で食べてるみたい。 あっ、ついついがっついちゃった……」

 「うふふ。 美味しい! って言って食べてもらえるのが、私には何より嬉しいの。 他の料理も一杯食べてね」 由美子は満面の笑みを浮かべながら、日向が食べる様子を眺めている。

 「ひいかも、ローストビーフをサンチュで巻いて……うーーん、美味しい~~」

 「まぁまぁ、二人とも、やっぱり育ち盛りの女の子ね、うふふ」 由美子は二人が夢中で食べる様子を、優しく見守っている。

 「ひいかは今日で16歳だから、育ち盛り真っただ中だよ。 朝、神社の神様に、誕生日を機に色んな事に積極的に頑張るから、見守ってて下さい、ってお願いしたの」

 「へぇ~~、ひいちゃん、叶えてほしい事をお願いするんじゃなくて、頑張ってる姿を見ててねって神様に誓ったんだね。 えらいなぁ~~」 日向は感心している様子。

 「うん。 それと、これからもひむちゃんと、ずっと仲良くいられますように、って」

 「もう~~。 ひいちゃん、それ、いっぺんに二つお願いしてるよ~~」 呆れたように日向が言うと、 「あっ、欲張っちゃった、かな……」 と、火雷はちょっと後悔するような素振りを見せる。

 そんな二人の微笑ましいやりとりを聞きながら、由美子はニコニコと二人を眺めている。

 「本人の目の前で、そんなお願いを口に出しちゃうなんて、ずるいよぉ。 私、絶対それ、叶えなきゃいけなくなるもん。 プレッシャーかかるよぉ」 そう言いながらも、日向の表情は柔らかくなっている。

 「あはは、どさくさに紛れてコクっちゃった。 でも、心からそう願ってるんだもん」

 「そのお願い、聞いた以上は叶えるように頑張るよ」

 「あらあら、二人の絆が深まる場面を目撃しちゃったわね、私。 夢のお告げが叶って良かったかな」 由美子は意味深な事を言う。

 「えっ?! ママ?! その話は……」 火雷は慌てて止めに入ろうとする。

 「こうして、ひむかちゃんが初めて家に遊びに来てくれたんだから、()()()、聞いてもらうタイミングなんじゃないかな、って、ママは思うの」

 「ほ、ほんとに話すの? ……まぁ、ママがそう思うのなら。 ひいかの心の中を覗かれるみたいで恥ずかしいんだけどなぁ」

 「おばさま、私、その話、ほんとに聞いてもいいのかな?」 日向が遠慮がちに由美子に尋ねる。

 「ここで話さないといけないって、心が訴え掛けてるような気がするの。 聞いてくれる?」


 「実は、ひいかは予定より1週間早く生まれたの。 早産ね。 それだけならよくある話だろうけど、不思議なのは、その前日、夢に見た事なの」 由美子は当時の出来事をなぞりながら話し始める。

 「本来なら予定日に生まれるはずの()()()を、()()()()()早産をお願いする事になって、申し訳ない気持ちでいっぱいです。 どうぞ、許してください、と、夢の中で告げられたの」

 「ちょ、ちょっと待って……もう、理解が追い付かなくて……。 私の都合、って、声の主は一体誰なの?」

 (日向、由美子が話すペースを意図的に落として、話の理解に努めようとしているみたいね)

 「姿形は登場せず、声だけだったから、誰かは分からないの。 でも、落ち着いた感じの女性の声だった。 私ですら、生まれてくるのが男の子か女の子か知らないのに、娘さんと言い当てたのにも驚いたんだけど……ここからが本題なの」 由美子は語気を強めて、話を続ける。

 「生まれてのち、何年か後に、娘さんにとって、かけがえのない存在になる運命の女の子が、声を掛けてくる事になります。 その子を見分ける方法は、誕生日。 娘さんより数日遅いのです」

 (あっ、もしかして……。 私、その日に心当たりあるかも)

 「当時は変な夢だったなって、心の奥底にしまいこんだんだけど、ひいかが小学校に入学した日、後ろの席の女の子に話し掛けられたって聞いて、詳しく尋ねたの。 名前が一文字違いで、お互いに平仮名で……そう聞いた時、夢を思い出し、ひいかに夢の内容を話してから、次の日、彼女の誕生日を訊いてくるように言ったの」

 「そう言えば、誕生日を訊かれて、凄く近いね、って話をした記憶、あるよ」 日向は当時の状況を思い出しているようだ。

 「ひいかが帰ってきて、彼女の誕生日を聞いた時、きっと”運命の女の子”だから、姉妹のように仲良くしなさい、って言ったの。 ま、そこまで夢を妄信するのも変だとは、内心では思ったんだけどね」

 「なるほど……って事は、ひいちゃんとここまで仲良くなれたのは、夢のお告げのお陰、って事になるんじゃないかな。 私、感謝しないと」 日向は、神様に祈るように手を合わせる。

 「うん。 ひいかはあの日から、ずっとひむちゃんの事、大切に思ってるんだよ。 夢のお告げの話、今も信じてるもん」

 「でもでも、出産の予定日を早めました、なんて、夢のお告げとはいえ……やっぱ、神様っているのかなぁ」 日向はあまりにも途方もない話で、不思議そうな表情を浮かべるのがやっとのようだ。

 (ここで出てきた夢のお告げの主……因果律を操作しました、っていうふうに聞こえたんだけど……もしかすると、これも例の何者かの……)

 ((うーーん……全く関係ない、って考えるのは不自然かもね。 ただ、もし、何者かが関係してるとしても、因果律をいじってまで火雷の誕生日を前倒しする動機って何だと思う?))

 (うーーん……確かにそうよね。 全く分からないよ)

今エピソードで提示した夢のお告げは、物語の最終局面で種明かしする予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ