4-14 推理、そして、実証
前話を読んで下さった方に感謝です
今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです
日向は、明美と合流した火雷と、砂蒸し風呂へ向かう通路で鉢合わせする。
「ひいかちゃんから聞いて、びっくりして……ひむか、突然、目の前から消えたって」 明美は驚き、 「ひむちゃーーん! 良かった~~、身体、元に戻ったんだね。 突然、神隠しにあったよって、びっくりしちゃって……」 火雷は半べそをかいている。
「ごめんなさい……私にも何が何だか……。 それより、折角ここに来たんだもん、今の出来事を考えるのは後でじっくりするとして、まずは砂蒸し風呂を楽しもうよ」
「そうね、今、いくら考えても埒が明かないもんね」 明美も、とりあえず後回しにする事を了承する。
海岸からは蒸気がもうもうと上がっており、その一角の、屋根で覆われた場所へ三人は向かう。
空いているからか、係の男性にすぐに案内され、砂蒸し風呂の準備が着々と進み、どんどん三人の身体が砂に埋もれていく。
「温か~~い。 もう汗が全身から吹き出してるよ」
「ひむかの言う通りね。 身体の中の悪い物が吸い出されて、何だかお母さん、若返りそうよ」
「おばさまは十分若いよ~~。 ひいかも、徹底的に悪い物、吸い出されて欲しいよ」
三人がそんな会話をしているうちに、10分があっという間に経過し、それぞれに満足して立ち上がる。
砂蒸し風呂を出て、脱衣所に戻る途中に天然温泉があり、そこで、しっかり砂と汗を落としてから、脱衣所で服を着て、三人は棗温泉を後にする。
三人が、今朝合流したガゼボに戻ってくる頃には、日もだいぶ傾いてきていた。
「ねぇ、おばさま、ひむちゃん、さっき、温泉であった出来事、ここでまとめてみてもいいかな」 火雷が話題を切り出す。
「ひいかちゃん、家に帰る時間、大丈夫なの? だいぶ遅くなっちゃったけど」
「あっ、それは大丈夫です。 ひいかの家、ここから5分だから。 お心遣い、ありがとうございます」
「家、すぐ近くなんだね。 そっかぁ。 なら、少し時間を取って、話をまとめましょうか。 ねぇ、ひむか、お母さんにもしっかりあの出来事を教えて」 三人はベンチに座る。
「うん。 ほつきを肩に乗せたまま、着てたものを全部脱いだ瞬間、ひいちゃんがびっくりして大声を上げたの。 何処に行ったの、って。 目の前にいるのに、何言ってるんだろう、って私が思った時、ひいちゃんが腕をぶんぶん振り回し始めたんだけど、私の身体をすり抜けて……」
「えっ? あの時、ひむちゃん、目の前にいたの? だって、全く見えなくなったんだよ、一瞬で」
「でもでも、私にはひいちゃんが見えてたの。 で、ひいちゃんを落ち着かせようと思って、抱え込もうとしたら、今度は私の腕がひいちゃんの身体をすり抜けて……」
「ひいか、そんな気配、全く感じなかったよ。 とにかく、突然消えた事があまりにショックで……」
「ひいちゃんが脱衣所を飛び出していった後、ふと、ほつきの重みを肩に感じたの。 で、触ろうとしたら、触れたの」
「えっ?! 不思議な現象に触れた、って事?」 今度は明美が驚く。
「うん。 で、その後、砂蒸し風呂に向かうために浴衣を着たら、今度は重みを感じなくなって……触ろうとしたら、また触れなくなってた」
「今の話を聞いてると、ひむかがほつきを肩に乗せたまま裸になった、っていうのが引き金になってるよね、おそらく」 明美がそう考察すると、 「ひいかもそう思いました。 着替える時、ひむちゃんはほつきさんの前で着替えるのが恥ずかしいって、最初に言ってたから……きっとそういう事をするの、今回が初めてだったんだよね」 と、火雷は日向に質問を投げかける。
「うん。 今までそうならないように避けてたから。 家のお風呂でも」
「で、その状態の時、ひいかちゃんからはひむかが見えなくなったけど、ひむかからはひいかちゃんは見えてた、と」 日向も火雷も頷く。
「しかも、ひいかちゃんからは、ひむかに触れなくなり、声が聞こえなくなった、と。 ひむかからは、ひいかちゃんの声は聞こえるけど、同じく触れなくなった、って事ね」 二人とも頷く。
「って事は……どう考えたらいいのかな」 明美が考察を促すと、 「もしかすると……他の不思議な現象と同じように、今度はひむちゃん自身が不思議な現象化したんじゃないかな……って。 意味分かんない事、言ってるかもだけど」 と、火雷は遠慮がちに意見を述べる。
「うーーん……確かに、私とひいかちゃんの側から考えると、見えないし、触れない、って事だから、その考察、的を射てるかもしれないね」 明美は納得するようにつぶやく。
「うーーん……あっ! 一つ試してみたい事が思い浮かびました。 ひむちゃんの家にあるウサギのぬいぐるみ、あれを同じ状態で触れるかどうか……ほつきさんを触れたっていう例を考えたら、もしかしたら、不思議な現象同士なら触れるようになるのかな、って。 おばさま、今からそれを確かめに、家にお邪魔してもいいですか?」
「そうね。 ここまで話が煮詰まってきたんだもん、検証してみる価値は十分にあるね」
三人が日向の家に着くと、日向と火雷は勉強部屋に入り、星月を肩に乗せたまま、日向は着ているものをするすると脱ぎ始める。
全て脱ぎ終えた時、やはり日向の姿は見えなくなったが、今度は火雷は驚かない。
日向は扉を開け、明美の書斎に向かい、ウサギのぬいぐるみのある部屋の片隅へ向かい、それを抱え上げると……。
「持ち上がった!! 凄い、ウサギのぬいぐるみ、触れるよ~~」 側にいる明美には、やはり日向の声も姿も認識できていないようだ。
それを抱えながら勉強部屋に持って入り、部屋の片隅に置き直す。
そこで衣服を着ると、火雷は再び日向の姿を確認できるようになる。
と同時に、明美も部屋に入ってくる。
「どうだったの?」 明美が尋ねると、 「うん! ひいちゃんが考えた通り、お母さんの書斎にあったウサギのぬいぐるみに触れたよ。 凄くふわふわしてて、手触りが良くて……。 で、今、ここに持ってきたよ。 持ち運びもOKみたい」 と、日向は興奮しながら答えを返す。
「凄い! 何だか大発見のお手伝いができて、ひいか、嬉しいよ」
「ひいかちゃんの考察、凄いね。 おばさん、ひむかの事を心から思ってくれる親友が側にいてくれる事に、感謝するよ」
「おばさま……こちらこそ、です。 もう遅いから、そろそろ帰らないと……。 家で、今日の事をもうちょっと考察してみます。 今日は朝早くからありがとうございました」 火雷は深々と頭を下げる。
「こちらこそ、ひいかちゃんのお陰で、ひむか共々、中身の濃い一日にできたよ。 ありがとうね」
明美と日向は、火雷が懐中電灯を手に、暗くなりつつある外へと踏み出していくのを見届ける。
「ウサギのぬいぐるみが私の書斎にあった理由も、いずれは分かるのかな……それ、知りたいなぁ」 明美はそうつぶやきながら、書斎に戻るのであった。
不思議な現象にコンタクトする方法を開示しました。
隠された島への上陸が近付きつつあります。




