4-12 名前の謎、解明?
前話を読んで下さった方に感謝です
今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです
(ねぇ、初代、今朝、きゆりちゃんと別れた後からずっと考えてたの。 初代が教えてくれた、元々は漢字だったのに、途中から平仮名の名前に変わった人たちの事……)
((うん? 現役、何か気にかかる事があるの?))
(ここまでで教えてもらったのは、日向、星月、火雷、茅金、安土、木柚梨の6人。 そして、この場所、棗海岸には、みづるさんがいるかもしれない。 私、思うんだけど、みづるさんも、元々は漢字の名前だったんじゃない?)
((そう、その通りだよ。 彼女の元々の名前は、水に、鳥の鶴で、水鶴だった))
(なるほど~~、それであの時、みずるじゃない! って怒られたんだね。 水より鶴の方に重きがあるって事かぁ。 でも、私が気付いたのはそこじゃなくて……7人の漢字の名前を考えてみてよ。 日月火水木金土っていう字が、一人に一つずつ入ってる。 こんな事、偶然には起こり得ないよ)
((なるほど! 言われてみると、確かにそうだね!! 歴代の星月で、そこに気付いたのは現役が初めてだよ。 ま、偶然起こるなんてあり得ないだろうね。 だとすると、どう考えるの?))
(うーーん……これはおそらく、何者かが手を加えてる、って思うの。 初代が言ってた、ほら、因果律とか、運命とか、そういったものを)
((何者かが因果律を操作する……途方もない話だね。 で、7人の名前をそうする事によって、何者かは一体何をしようとしてるんだろうね))
(うーーん……あくまで想像でしかないけど、日向に対してヒントを示してるんじゃないかなぁ。 いや、こんな短期間で日向にそれに気付けだなんて、無理難題だなぁ……。 ちょっと待てよ、私たち星月サイドへのヒント、っていうのはどうだろう。 私たちがその法則性に気付いて、これらの人たちに日向を会わせる事によって、何らかの協力を得させる必要がある、とか。 ま、途方もない話だけど……)
((現役……凄い想像力だね。 さすが、色んな小説を読んできた事はあるよ。 私たちへのヒント、ねぇ。 でも、それだったら、平仮名の名前に変える必要性はどう考えるの?))
(うーーん……最初は漢字の名前にヒントを含ませてたけど、実際は、周りもみんな漢字の名前だから埋もれてしまって、これらの人たちの名前の法則に歴代の星月が気付けなかった。 もっと分かりやすいヒントを出そう、って考えた何者かは、それらの人たちの名前を、因果律を操作して、途中から平仮名に変えた……っていうのは、どう?)
((現役、その想像力、小説を書くのに生かしたらよかったのに。 想像の上に想像を重ねても、何も見えてこないよ。 まずは一つずつ、目の前の課題を片付けていかない事には))
(そうだね。 だとすると、私が今、しなきゃいけない事は、日向をみづるさんに会わせる事。 何とか、日向を彼女の方へ誘導する手立てを考えないと……もう、ちょっとやそっとじゃ、日向の気を引けないかもしれないけど、やってみるしか)
「ところで」 話が煮詰まったところで、明美は思い出したかのように切り出す。
「私たち、舟を見に来たんだよね、ここに。 そっちを当たってみない?」
「イラストに似てる舟、あそこに集まってるけど、その近くにいる人に話を聞きに行ってみようかな、って」 日向が指差しながら提案すると、 「そうね。 それがいいかもね」 と、明美は同意する。
(みづるさんは……ここからだと遠くて、何処にいるかはっきり分からないなぁ……あっ、あの人かな。 背格好といい、髪型といい……でも、カッターの側にいるよ。 今のお母さんのアドバイスを日向が聞いてしまうと、違う人に声を掛けてしまいそう……どうしよう……)
((確かに、カッターの側にいるのが水鶴だね。 さっき、現役が披露してくれた推理によれば、ここは重要な場面になるよ。 腕の見せ所だよ、頑張れ!))
(よし、こうなればイチかバチか!!)
日向の右肩に乗っていた星月は、勢いよく鎖骨ラインを横切り、左肩に移動する。
「ん? ほつき、珍しいね、左肩の方に来たの?」 日向が視線を左肩に向けると、 「ほつきちゃん、そっちに動いたの? 普段、あまり動かないの?」 と、火雷も、同じ所に顔を向ける。
「うん、ここ最近は大人しく右肩に乗ってたなぁ。 何だろう、何か伝えようとしてるのかな」
(オッケー、日向がこっちに注意を向けてくれたよ。 しばらく大人しくしてた分、かえって動くと目立ったみたい。 この調子で……)
「ん? 今度は左肩から首の下までの間を往復し始めたよ。 これは……分かんないなぁ」
イラストに似ている小さめの舟が集まる場所に近付こうと、進路を右に取ろうとした瞬間、 「わわわ、さっきより、同じ動きが激しくなったよ。 これは……」 と、慌てる日向に、 「うーん……ちょっと試しに、違う方向に歩いてみたらどうかな」 と、火雷が提案する。
少し進路を左寄りに、カッターが泊っている方に変えて歩き出すと…… 「わっ、ほつき、その場で回転したよ。 これは……」 と、戸惑う日向に、 「もしかすると、そっちの方に行ってほしい、って事だったりして。 そのまま、その方向に歩いたら、どんな反応をする?」 と、火雷がまたも提案する。
「えっと、今度は肩から肘の間を往復しだしたよ。 これは……」
「そうだなぁ……レッツゴー! って事かな、あはは。 そのまま歩き続けてみる?」
結局、三人は、目的にしていた舟とは違う、大きなカッターの前に来てしまう。
(はぁはぁ……何とかみづるさんの所に誘導できたよ。 でも、ひいちゃん、よく私の意図をことごとく読めたね)
((ご苦労様、現役。 ひょっとすると、漫画好きなのが、視覚的な想像力を鍛えてくれてたのかもしれないね))
カッターの側でメンテナンス作業をしている水鶴が、不思議な顔をしながら、三人に声を掛ける。
「こんにちは。 何だかふらふらと、こんな所まで来ちゃって。 興味あるのかな、カッター」
「あ、あの……私、全く舟の事、分からなくて。 このイラストを見てほしいんですけど」 と、日向は絵日記帳を水鶴に見せる。
「どれどれ……オープンデッキで、シングルブレードのパッド……これはカヌーだわ。 ここで訓練してるのを見て描いたの?」
「えっと、ここじゃない所にある舟を見て描いたんですけど、カヌーなんですね、これ」
「まぁ、間違いなく、カナディアンカヌーだわ。 ねぇ、乗ってみたいの? 今の季節、海風も気持ちいいし、良い汗もかけるわ。 マリンスポーツは爽快よ」
そう言って、水鶴はスポーツタオルで、こんがりと日焼けした首筋を拭く。
「えっ?! 乗せてくれるんですか? 楽しそう~~」 日向は思い掛けない申し出に驚きつつ、既に乗り気に。
「目の前にある舟はカッターっていって、大人数で力を合わせて漕ぐものだから、今回の見学には向いてないわ。 これじゃなくて、向こう側にある、さっきのイラストと同じ、カナディアンカヌーを使うわ。 さぁ、三人とも、あちらへどうぞ」 水鶴は三人を案内する。
カヌーの前に着くと、 「この舟に四人は、さすがに無理があるわね……ごめんだけど、一人は見学になるわ」 水鶴は申し訳なさそうにそう言うと、 「なら、私が見学するよ。 子供たちをどうぞ、よろしくお願いします」 と、明美はそう答え、後ろに後退して、頭を下げる。
「すいません、お母さま。 じゃぁ、二人はあっち側に座ってみて。 私が漕ぐから、何もせず乗るだけ体験、って事で」 と、水鶴は日向と火雷を船体へ誘導する。
「あっ、私はみづる。 カッター競技の選手よ。 よろしくね」
「えっと、私は古河高校1年のひむかで、こっちは同級生のひいかです。 よろしくお願いします、みづるさん!」
ここで、この物語の根幹にかかわる事柄の一つを開示しました。




