4-6 絵日記帳
前話を読んで下さった方に感謝です
今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです
「超常……現象……解明……サークル?」 明美は火雷が宣言した事を飲み込めず、漸く 「私、超常現象って全然分からなくて……協力するどころか、どうすればいいのか……」 と細々と返事を返す。
(お母さん、豆鉄砲を喰らったような顔してるけど……ひいちゃん、ここからどう話を持っていくんだろう……)
すると、火雷は日向に一瞥をくれてから、 「おばさま、ひむちゃんが直面してる不思議な現象について調べていきたい、って思ってるんです」 と明美に決意を口にする。
「ひいかちゃん、不思議な現象って、どんなのなの?」
「この前、お邪魔した時に、ひむちゃんが 『神秘的なものが見える』 って告白してくれたんです。 それがどういう現象なのか、どうしてひむちゃんにだけ見えるのか、少しでも解明できたらいいな、って」
「えっ?! 神秘的なものって、どういうものなの?」 一瞬、明美の表情がハッとなる。
(この前のウサギのぬいぐるみの件の事? って考えてるのかな、お母さん)
「それは、私から話すよ」 日向が二人の会話に入ってくる。
「今、その神秘的なものは私の右肩にいるの。 形は星形で、色は薄だいだい色で、ホログラムのように透き通ってて……。 で、私はこの子に、ほつきっていう名前を付けたの。 この前の登山の時、渓谷の休憩所で見付けて、その後、ずっと私に付いてきてるの」
「あ、あの……それ、聞くの、初めてよ、私」
(お母さん、日向がウサギのぬいぐるみの話をすると思ってたんじゃないかな。 違っててびっくりしてるような)
「こんな事、話しても信じてもらえないって思って、内緒にしようと思ってたの。 ひいちゃんにはこの前白状したんだけど……」
「そう……もちろん、私はひむかの言う事を信じるよ。 確かに、それは不思議な現象よね」
「受け入れてくれてありがとう、お母さん。 信じてくれて嬉しいよ」
「あ、あと、ひいちゃんにも話さないといけないんだけど……」 日向は明美から火雷の方へ向き直って話を続ける。
「もう一つ、神秘的なものが見えてるって事に気付いてるの、私」
「え、もう一つ?」 火雷は身を乗り出して、話を聴く態勢に入る。
「登山から帰ってきた日の夜、お母さんの書斎にお邪魔した時の事なんだけど……」 と話し始めた日向を見て、 「……その事に触れないように、そっとしておこうって思ってたんだけど、ひむかが話すのなら……」 と明美も話を聴く側に回る。
「ウサギのぬいぐるみが見えたの。 昨日まで無かったものが、帰ってきたら増えてたから、私はてっきり、お母さんが昼間に買ってきたんだな、って思ったの。 でも、お母さんとの会話が噛み合わなくて……ここにあるのにって、取りにいこうとしたら、幻だった」
「そんな事があったの? それって、今もその場所に見えるのかな?」 火雷が尋ねる。
「きっと、見えると思う。 お母さん、書斎に入ってもいい?」
三人は明美の書斎に入ると…… 「うん、ある! はっきり見えるよ、ウサギのぬいぐるみ」 日向はしっかりと二人に伝える。
リビングにみんなで戻り着座すると、火雷はさっき文房具店で買ってきたものを取り出す。
紙袋の中に入っていたのは、一冊のノート。
「ん? これって、絵日記帳だよね。 懐かしいなぁ。 小学生の頃、夏休みの宿題で毎日絵日記を付けた事があったけど……どうしてそれを?」 日向は不思議そうに、火雷の手元にある、それを見る。
「これにね、ひむちゃんに見えてる神秘的なものを、記録してみようって考えたの。 こうやって、ノートを見開きで使って……」
火雷の説明の途中で、 「絵日記っていう事は、絵を描くんだよね。 私、さっぱりダメだよ。 才能ないし、描けそうにないよ~~」 日向は慌てて無理無理と、手を振って抗議する。
「うん、ひむちゃんの絵が画伯レベルなのは知ってるよ。 だけど、神秘的なものが見えるのはひむちゃんだけだから……そこはひいかが代わりに描けないから、頑張っておおまかでもいいから描いてほしいの。 まず、それを見開きの右上のコーナーに描いてもらって……」
「あはは……ひいちゃん、確かにそうだけど……分かった、頑張って描いてみる。 で、それを描いたら?」
「次に、右下のコーナーに説明を書き加えてほしいの。 それがどういうものなのか、みたいなのを」
「うん。 説明ならしっかり書けそうかな」
「で、今度はひいかが、ひむちゃんが描いた絵と説明と、聞き取った事を参考にして、イメージを膨らませて、左上のコーナーにイラストを描いていって……」
「あのぉ……私の描いた絵に上書きして修正する、じゃダメなの?」 日向は懇願するような視線を火雷に送る。
「ううん、ダメ。 オリジナルの絵にあるニュアンスは大切だから、残すよ」
「とほほ……残すのね。 で、左下のコーナーは?」
「そこは、考察欄。 実際にひいかたちが考えたり、調べていって分かったりした事を書いていくの」
「なるほど。 このノートはひむかにしか見えないものを、他の人たちにも共有させるためのツール、って事ね」 明美は火雷の意図を理解したようだ。
「はい、おばさま。 では早速、ひむちゃんの肩に乗ってるっていう、ほつきさんについて書いていこうと思います」
(じゃぁ私、日向が描きやすいように移動してみようかな)
「あれっ? ほつきが左手の甲に移動したよ……もしかしてこの子、私たちがやろうとしてる事が分かったのかな?」 日向は少し驚いて星月を見ている。
日向は星月の姿形をイラストに残そうと頑張ったが、 「ひむちゃ~~ん、ホントにそんな感じなの? それじゃ、ノートに書く星印だよ。 大切だねこれ、みたいな」
「ごめ~~ん。 私、ホントに絵心なくて……これで許して~~。 で、説明を付けるのね。 えっと……」
・神尾渓谷の休憩所で発見した。
・形は星形で、色は薄だいだい色で、ホログラムのように透き通ってる。
・名前は”ほつき”。 私が名付けた。
・時々歩いたり、瞬いたりするけど、喋らない。
・腕を伸ばして、私から離れてって願うと、身体から離れる。
「こんなところかな」
「うんうん、上出来だよ。 で、ひいかがこれと聞き取りをヒントに、イラストを描いていくね」
火雷はショルダーバッグから色鉛筆を取り出し、日向にちょくちょく質問を挟みながら描いていく。
十数分後……。
「うわぁ、ひいちゃんのイラスト、凄い! ほつきにそっくりだよ」
(今の私の姿は見れないけど、私が日向だった頃の星月と変わってないみたいね)
「じゃぁ、これで完成でOKだね。 で、次は、同じ要領で、ウサギのぬいぐるみのページも作っていくよ」
再び明美の書斎に足を運んだ日向は、部屋の片隅に置かれているウサギのぬいぐるみのスケッチを始める。
「さっきのほつきより、この子の方がずっと難しいよぉ……」 そう言いながらも何とか描き上げ、リビングに戻る。
「で、説明は……」
・お母さんの書斎の片隅に置かれてて、動かない。
・全体的に白くて、眼は赤くて、1メートルくらいある。
・後足で立ち、前足をひょいと前に突き出してる。
・手作り感があるような?
「こんなところかな」
日向がノートを火雷に手渡すと、十数分後には火雷がイラストを完成させた。
それを見て、明美は驚く。
「ちょっと待って! そのウサギの姿形、何処かで見たような気がする!」
第三章では一人、または一対一の単純な描写がほとんどでしたが、第四章では多人数での描写が増え、難易度が格段に上がって……誰のセリフか混乱させないように注意して書きます。




