4-5 火雷の決意
前話を読んで下さった方に感謝です
今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです
その夜、日向は浴槽にお湯を張りに行き、沸き上がるまでの時間を勉強部屋に戻って過ごす。
日向が一思案した後、右腕を伸ばすと……。 (きゃーーーーっ!! か、身体が凄い力で引っ張られるよぉーー!!) 星月は日向から解放され、勉強机の上に着地する。
((星月は、私たちの意志では日向の身体から離れられないの。 だけど、日向が腕を伸ばして、星月を解放する事を願うと、今みたいに強制的に降ろされる))
(確かに、私も日向だった時はそうやってたけど……ちょ、ちょっとこれ……心臓に悪いよ~~。 思ってた以上に凄い勢いだもん。 あ、あれっ?)
((どうかしたの? 現役))
(目が、目が見えなくなった……真っ暗になっちゃった!!)
((日向の身体から離れると、視力も運動能力も奪われ、発電も出来なくなるの。 聴力だけは残るけど……他は本当に何も出来なくなる。 渓谷の休憩所で日向と出会う直前の事、思い出してみてよ))
(あ……。 これって、仮死状態、みたいなもの?)
((外部への干渉が断たれる、ってところかな。 内部では、私と現役が会話する事は出来るけど))
(じゃぁ、日向が風呂に入ってる今は、私たちに出来る事は何も無い、って事よね。 で、ふと思ったんだけど……)
((ん? 何か気になった事があるの?))
(このまま、日向がずーーっと星月を放置する、っていう危険性って、無いのかな)
((それは、確率的にはあるだろうけど……現役が日向だった時、どうだったか思い返してみて))
(うーーん……言われてみれば、そうしようなんて思った事、無かったよ。 何でだろう……まるで、星月と離れちゃいけない、っていう意識を深層心理に植え付けられたみたいな……)
GWが明けた。
待ち合わせ場所のガゼボで待つ日向に、火雷が手を振りながら近付いてくる。
「おはよーー、ひいちゃ……って、可愛い~~! 久し振りだね、その髪型」 日向は目を丸くして、火雷の頭を眺める。
(あれっ? ひいちゃん、このタイミングで髪型変えてきた……私の時は、ここじゃなかったような……)
((因果律が少し変わったのかもね))
「うん。 ちょっと気持ちを入れ替えたくて、久々にツインテにしてみたんだ~~」 火雷は少し力のこもった声で答える。
「えっ?! 気持ちを?……そっかぁ。 ひいちゃんにピッタリだよ、ツインテ。 ひいちゃんの髪、ボリュームあるから、蝶々リボンでツインにしたら似合うって思ってたんだぁ」
「ホントに?! 髪型、褒めてくれて嬉しいよ。 ひいか、縮れ毛だから、ちょっとコンプレックスなんだ。 でも、ひむちゃんに似合うって言ってもらえて、自信になったよ。 とりあえず、ツカミはバッチリだね。 じゃ、行こ!!」
「うん!」 二人仲良く坂を下っていくのだった。
(ツカミって……ひいちゃん、何かを決意したから、気持ちを入れ替えたかったんだろうな……)
朝のHR。
「入学から1ヶ月が経とうとしてますが、今日から課外活動が解禁になります。 中学の時と同じですが……」 冴先生が教壇に立ち、説明を始める。
「ひいちゃんは中学の頃、絵を描くのが得意な先生に付いて、イラストを描いてたよね」 日向が尋ねると、 「うん、そう~~。 でも、それも卒業かな。 新しくやりたい事が見付かったの」 と、隣の席の火雷が生き生きとした声で答える。
「そっかぁ。 ひいちゃん、他にやりたい事が見付かったんだね」
(ひいちゃん、もうイラストのレベルは十分だもん。 卒業でもいいかもね)
「うん。 その件で今日、学校帰りにひむちゃんのおばさまに会いたいの。 詳しい事はその時まで内緒」
「えっ? お母さんに指導者を頼むの? お母さん、何か他人に教えられるような特技、あったかなぁ……」 日向は軽く首をかしげて考える。
「あっ、ひむちゃん、そんな事言ったらおばさまに失礼だよ~~。 ま、教えてもらうのとは、ちょっと違うんだけど」
「指導者をお願いするのに、教えてもらうんじゃないって、どういう事??」 日向には火雷の考えが全く想像もつかない様子。
放課後、日向は火雷に声を掛け、約束通り一緒に帰る事にする。
「その前に、ちょっと文房具店に寄ってほしいんだぁ」 と火雷が申し出る。
店の前に辿り着き、 「じゃぁ、私も一緒に入……」 と言おうとした日向を、 「ダメ。 ひむちゃんはここで待ってて。 買い物だけ済ませたら、すぐ出てくるから」 と火雷は両腕を横に広げて制する。
(日向を店に入れちゃうと、ウサギグッズに夢中になりそうだもん……ひいちゃん、それを避けたね、あはは……)
「ごめんごめん、待たせちゃって」 ほんの3分で出てきたのに、火雷は謝る。
「ううん、全然早いよ~~。 で、何買ったの?」 紙袋に包まれた感じからすると、ノートのように見えるけど、 「うん、ちょっとね」 と、教えてくれない。
「じゃぁ、ひむちゃんちまで、よろしくね」 日向はキツネにつままれたような表情で、火雷の半歩前を歩くのだった。
日向と火雷が家に着いた頃には、17時を回っていた。
明美はしっかり時間を空けて待っていてくれた。
「こんばんは、おばさま。 遅い時間にごめんなさい。 お邪魔します」 火雷は深々と頭を下げる。
「いえいえ、大丈夫よ。 こんばんは。 また家に遊びに来てくれて嬉しいよ、ひいかちゃん。 どうぞ、中に入って」
玄関での挨拶はほどほどに、3人はリビングにあるテーブルに着座する。
「おばさまにお願いがあります。 ひいか、新しいサークル活動のグループを作ろうと思ってるんです。 それで、おばさまに指導者になっていただきたくて」
「わ、私が指導者? で、でも、おばさん、特別何かを教えられる事なんて思い当たらないんだけど……」 明美は、火雷の打診に少し戸惑っている様子。
「えっと……教えてもらう、というより、協力してほしい、っていう方が合ってるかもしれません」
「うーーん……協力、ね。 私に出来る事なら、喜んで協力するけど、どういう活動をしたいの?」
暫く間をおいた後、火雷は力強く宣言する。
「ひいか、”超常現象解明サークル”を作りたいと思います」
第3章での因果律を変えていきながら、第4章を進めていってます。
大きく変わるところ、あまり変わらないところ……なかなか難しいです。




