3-3 課外活動
前話を読んで下さった方に感謝です
今話も引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです
GWが明け、ひむかにとっては、歓迎登山以来の登校になる。
朝のHRで冴先生が教壇に立ち、 「今日は課外活動について説明します」 と話を切り出す。
「入学から1ヶ月が経とうとしてますが、今日から解禁になります」
「中学の時と同じですが……教師を指導者として活動する”部活動”以外に、校外で指導者となる大人を探して、興味のある事を学ぶ事も出来ます」 生徒たちはふむふむと、うなずきながら聞いている。
「例えば、本屋の従業員に読書について学んだり、花屋の従業員に花について学んだり、鉄道の従業員に電車について学んだり……」 指折り数えながら、冴は学びの事例を紹介する。
「つまり、取り組みたい事柄に詳しい大人を見付けてお願いし、指導者を引き受けてもらえれば、たとえ参加者が一人でも課外活動として成立する、という事です」
(って事は、町中の大人みんなが指導者になり得る、って事だね) と、ひむかは理解する。
「サークルの名称、参加者の名前、指導者の名前、主な活動場所を既定の書類に書いて学校に提出すれば、課外活動として認められ、活動費が援助されます」
(めもめも……) ひむかは生徒手帳にメモする。
「活動は毎日でも、週1でも、月1でも構いません。 指導者の都合もありますから。 また、時間の都合が付けば、複数の活動に同時に参加する事も出来ます。 勉強に勤しむのも大切ですが、勉強では得られない体験をするのも大切です」
「課外活動は強制参加ではありませんし、結果を求めるものでもありません。 自分の視野を広げる意味で、何かやってみる事をお勧めします」
「私、これといってやってみたい事、思い浮かばないなぁ……」
「私も。 身体を動かせるようなサークルがあれば、と思うけど、いざ何をしたいの? って言われるとなかなか……」
聞こえてくる声を聞いていると、まだどうするか決め兼ねているクラスメイトも大勢いるようだ。
ひむかとひいかも、どうしようか話し合っている。
「ひいちゃんは中学の頃、絵を描くのが得意な先生に付いて、イラストを描いてたよね」
「うん、そう~~。 高校になって、新しくやりたい事が見付かるかな、って思ってたけど、今のところ……そのまま先生にお願いしようかな」
「そっかぁ。 一つの事を続けるのもいいかもね」
(ひいちゃん、まだ決めかねてるみたいだね) ひむかはひいかの表情から、そう読み取る。
「ひむちゃんは? 中学の頃は小説の書き方を、作家の先生に教えてもらってたよね」
「うん。 小説を読むのが好きだから、書くのも……って思ってたんだけど、これが結構、想像力が足りないのか、難しいんだよね」
その夜。 ひむかは勉強部屋で、課外活動をどうしようか思案する。
本棚に立ててある、自作小説のノートを眺めながら、 (小説を書くの、まだまだ未熟なのに、ここで別の何かに興味が移ってしまうのもなぁ……) 自分の文才に少し行き詰まりを感じ始めている自分に、焦りの気持ちすらある。
(だめだめ、そんな弱気じゃ。 先生にしっかり付いていって、納得のいく作品を仕上げて恩返ししなくちゃ)
そこまで決心したところで、ふと、先日のウサギのぬいぐるみ事件を思い出す。
(今もあの場所に見えるんだよなぁ……。 ウサギについて調べていったら、何か分かる事があるのかなぁ……。 でも、ウサギに詳しい人って……ペット屋さん?) 顎に右手の親指を押し当てて思案する。
(でもでも、あのウサギは動物じゃなくてぬいぐるみだよね。 そういう事に詳しそうな人って言えば……)
翌日。
ひいかは、引き続きイラストの先生に付き従う事に決めたという。
ひむかは放課後、昨夜思い付いた事を実行しようと、以前、祐子と一緒に訪れた文房具店に向かう。
「こんにちはーー」
「あら、ひむかちゃんじゃない。 この前はお友達とお買い物、ありがとうね。 今日もウサギグッズを買いに来てくれたの?」
「あははー。 もちろん、それも喉から手が出るほど欲しいんだけど、今日はおばさんにお願いがあって……」 ひむかは声のトーンを下げ、真剣な表情になる。
「あら……改まっちゃって。 どういう用件なの?」
「実は……小物が……あっ、それだけじゃなくて、文房具もだけど、どうやって店頭に並ぶのか、っていうのが学びたくて」 対象を小物に限定してしまいそうになって、ちょっとどぎまぎしてしまう。
「あら、ひむかちゃん、将来、お店を開きたいの? でも、他にも色んなお店があるのに、文房具店でいいの?」
「はい! いつもお買物させてもらってて、愛着もあるから……課外活動の指導者になっていただけませんか?」 ひむかはまるで、告白した後に相手からの返事を待つような緊張感で、深々と頭を下げる。
「そう……。 課外活動を依頼されたら、まずは受けなさい、っていう街の決まりがあるからね。 もちろん、大丈夫。 だ・け・ど……」
「だけど?」 ひむかはドキドキして、話の続きを待つ。
「おばさん、って呼ぶのはナシね。 こう見えて明美先輩とそんなに変わらないんだからね、年。 瑞雪さん、って呼んでね」
ひむかはお願いを受けてもらえて、一気に余分な力が抜ける。
「ありがとうございます、瑞雪さん! どうぞ、よろしくお願いします!!」
明くる朝、ひむかは学校に書類を提出する。
ーーサークルの名称:文房具研究サークル
参加者:ひむか
指導者:瑞雪
主な活動場所:文房具店
私の考える、理想の課外活動形態です。
街全体で子供の成長を後押し出来る社会だったらいいな。




