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3-1 幻のぬいぐるみ

前話を読んで下さった方に感謝です

今話から第三章で、起承転結の「承」の開始です

引き続き温かい目で目を通していただけると嬉しいです

 今もひむかの右肩には、ホログラムのように透き通った、星形の何かが乗っている()()()()()()

 下山を始めて30分ほど経っても、誰一人、そこにツッコミを入れてくるクラスメイトはいない。

 (もしかして、この子が見えてるの、私だけなのかな? でも、他の誰かに、見えてないこの子の事を話したとしたら……変な事言い出してどうしたの? って思われるだろうし……) 結局、それを恐れて、ひむかはこの事を内緒にしておこうと思う。

 その後も、誰にもこの子の存在に気付かれる事無く、歓迎登山は解散となる。


 その夜、自分の勉強部屋で右肩を見やるひむか。

 (やっぱ、霊的なものなのかな……私から離れないけど、私に何か惹きつけるものがあるのかな……)

 考えを巡らせているうちに、この存在に名前が無い事に気付く。

 (発見したからには、名付け親になってあげないと……。 色は薄いだいだい色で……形はノートに書くような星印で……オレンジスター? オレスタ? うーーん……) ボツ。

 (星って、幸運を呼ぶ、なんて言われるよね……ラッキースター? らきすた? えっ?! 絶対ダメなの?!) この世のものとは思えない声を聞いた気がして、ボツ。

 あれこれ迷った末に、 (形は星だけど、月のように付いてくるから……ほしつき? ほつき? うーーん……ちょっと呼びにくいけど、これならオリジナル感あるし、いいかな) 名前を()()()と名付ける。


 その後、明美の書斎にお邪魔するひむか。

 「お母さん、昨日言ってたウサギのオブジェ、探しに行ったんだけど……って!! どうしたの、そのおっきいウサギのぬいぐるみ!! かわいいーー!!」 昨夜、この部屋を訪れた時には無かった、1mはあろうかという、凄い存在感のぬいぐるみを片隅に見付けて、報告どころではなくなっている。

 「…………。」 明美はきょとんとした顔をしたまま、かれこれ10秒はひむかを見て固まっている。

 「今日、買ってきたんだよね? どこで売ってたの? 凄く興味ある~~。 教えて~~」

 「…………。」

 「あれっ?! お母さん? どうしたの? 喉をやられて、声が出なくなっちゃったのかな?」

 「落ち着いて、ひむか。 どこに……どこにウサギのぬいぐるみなんてあるの?」

 「もぉ~~、とぼけちゃってぇ~~。 ほら、そこの隅に……」

 「あははは。 冗談で言ってるのよね。 登山でだいぶ疲れてるんじゃない? もう寝なさい」

 「お母さんこそ、冗談は止めてよ~~。 ほら、ここに……」 ひむかは片隅に歩み寄り、ぬいぐるみを両腕で抱きかかえようとする……が、腕は空を切る。

 「えっ? こんなにはっきり見えてるのに、触れないの? 私、幻覚が見えてる!!」 ひむかは半分パニックになって、自分の寝室に飛び込んでいく……その夜はまともに眠れず、日曜の朝を迎える事になる。


 連休明けの火曜日の夕方、学校を休んだひむか。

 コンコンコン。

 ひむかの寝室のドアがノックされる。

 「ひむちゃん……お見舞いにきたよ。 どうしても顔が見たくて……」 手にお見舞いの花束を抱え、ベッドの高さに目線を合わせるように、ひいかはしゃがみこむ。

 「おばさまから、風邪を引いて寝込んでるって聞いたよ。 早く元気になってね。 ひいかに出来る事があれば、言って欲しいな」

 それを聞いたひむかは、顔をひいかに向け、微笑みを返す。

 「ありがとう、ひいちゃん。 熱が下がったら、また仲良くしてね」 そう言うと、そのまま眠りに落ちる……側にひいかの心地良い気配を感じながら。


 結局、ひむかは翌日も学校を休むが、GW(ゴールデンウイーク)突入を翌日に控え、ようやく心が落ち着いてきた。

 明美はあの出来事を深く追求せず、周りには風邪で寝込んでいると言ってくれているようだ。

 ひむかも、書斎で見た()()は、疲れで見えた幻だったみたい、という事で片付ける事にする。

 ほつきは今も、ベッドに横たわるひむかの右肩に乗っている。

 まだ生態については分からない事ばかりだけど、少なくとも口は利かないようだ。

 あのウサギのぬいぐるみが見えた事と、ほつきとは関係があるのか……それも全く分からない。


 翌朝、リビングにある電話が鳴る。

 「もしもし」 受け手は自分からは名乗らない……この街の決まりの一つだ。

 「もしもし、ひむちゃん? おはよう。 ひいかだけど、今日、ひむちゃんち、お邪魔してもいいかな?」 声のトーンから、体調を心配している事が伝わってくる。

 「ひいちゃん、ホントにありがとう。 もうすっかり元気になったよ。 おととい、励ましてくれたお陰かな、あはは。 来るの、楽しみにしてるね」

 「うん! おばさまにも言っといてね。 じゃぁ、あとでね」

 「うん。 あとで」 ひいかが受話器を置くのを待って、ひむかも置く。


 昼前になり、呼び鈴が鳴る。

 玄関に出て、ひいかを迎え入れるひむか。

 「ひむちゃん、元気そうで良かった~~。 みんな、心配してるよ」

 「そっかぁ……。 ごめんね、ひいちゃん。 どうぞ、上がって。 今日は一緒にお喋りしよ。 まずは私の家を案内するね」

ここから、ひむかの周囲に少しずつ異変を起こしていきます。


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