1-1 明美
小説を書くのは初めてで、読みにくいところ、表現のつたないところが多々あるかと思います。
初心者マーク付きだと思って、どうか温かい目で見てください。
小高い丘から緩やかに伸びる下り坂を、やや足早に歩を進める一人の女性。
やや細身の身体には、白色のワンピース。
遠くから運ばれてくる浜風が、彼女の身体の側を通り抜け、そのワンピースとロングヘアをなびかせる。
日が昇っていくにつれ、視界が徐々に明るくなっていく。
三叉路に差し掛かったところで左に折れ、左手にあった朝日が正面に。
まるで、明るい場所を求めるかのように、彼女は更に歩調を早めて歩く。
少し背の高い木々に挟まれた小道を進むと、小さな白い鳥居が見えてくる。
その前で立ち止まり、ひと呼吸おいて深くお辞儀をし、歩調を緩めて再び歩き出す。
そこから数百段ある石段を一歩一歩、足元を確かめながら上っていく。
途中で休憩を挟みたくなるような勾配の、幅の狭い石段を、無心に、一度も立ち止まることなく上りきる。
そこは小高い丘になっており、ここで彼女は呼吸を整えるべく、ベンチに座って休憩を取る。
足を守ってくれている、ヒールの低い靴。
その中で熱を持った足を、靴を脱いでクールダウンしながら、水筒に入れた冷えた水を口に含む。
呼吸が整い、再び歩を進める先には、逆に数百段続く下りの石段。
上りの石段で筋肉が少し疲れたのだろう、力を籠めにくくなった脚は意思に反して歩調を早めてくる。
途中から群青色の水平線が見えるようになり、耳には潮騒が届いてくる。
階段を下りきったところで、道は左に折れ、大きな朱色の門が現れる。
先ほどよりも一層丁寧に頭を下げ、彼女は心を引き締める。
まるで、ここからが本番であるかのように。
平坦な参道を進み、二つの橋を渡ると、急な下りの石段に差し掛かる。
それを降りた先、岩窟の中に彼女の目指してきた本殿が鎮座しており、彼女は心静かに手を合わせる。
海に面した、断崖の上にあるこの神社を、来る日も来る日もお参りするのが、彼女の日課になっている。
日が昇ると同時に目を覚まし、身支度を整えて、今朝もここまで通ってきた。
思えば、暑い日も寒い日も、雨の降る日も風の吹く日も……まるで、ここへ通うことが、彼女の心の拠り所になっているかのように。
(そういえば、今朝は一度も他人とすれ違わなかったなぁ) 彼女がそう感じるくらい、珍しい事のようだ。
「今日も無事にお参りができたことに感謝です。良い一日になりますように」 いつものように、声に出して神様に感謝の意を述べ、本殿を後にしようとしたその時、 「おはようございます」 と声をかけてくる初老の男性。
「はい! おはようございます!」 今朝、一度も他人とすれ違わなかったのを少し寂しく思っていたのか、彼女はついつい語気のこもった声で挨拶を返す。
「初めまして、ですよね」 と彼女に尋ねられた男性は、「私は幾度となくお姿を拝見していたのですが、お声がけするのは初めてです」 と丁寧に答えたうえで、 「私はこの神社で宮司をしております、あづちと申します。 突然お声がけしてしまい、申し訳ありません。 来る日も来る日も、貴女がこの神社をお参りする姿を拝見しておりました。 お百度参り、でしょうか」 と尋ね返す。
「お百度参り、みたいなものかも。 って言っても、もう百度どころじゃなく通ってるけど」
(あっ、何か意味深な事を口走ってしまったかな) と彼女は少しどぎまぎする。
「ここは子育て、子宝についてご利益がある神社ですので、何かその関係で心に願い続けていることがおありなのでしょうか」
(割と深入りしてくるな、この人……) そう思いながらも、尋ねるあづちの表情は柔和ながらも真顔で、その誠実さが伝わってくるように感じ、 (神職に就いてる人になら、私の心の内を話してみてもいいかも……神様の思し召しかもしれないし) と思い始める。
「そうですねーー。それは当たらずも遠からず、ってところかな」 ひと呼吸おいて、意を決したかのように彼女は自己紹介を始める。
「私は、ここから私の足で1時間ほど歩いた、丘の上に住んでる明美です」
今回は状況描写の練習を課題に挙げて書きました。
もっと表現力を磨いていきたいと思います。