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慶「私もそう思うよ。でも最悪の事態を考えないと。2箇所に癌ができてる場合だよ。」
清「たしかにそれなら通常の手段が通じませんな。20%以上残すことができないかもしれませんからな。しかし、移植せずともやりようはありますがね。2箇所にできていた場合より思い方を一度切除し、時間を置き再生を待ってからもう一部を切除するというやり方です。」
慶「本当ですか。でもまずは検査からですね。でもそれより前に返事を聞かせてくれますか?」
清「その前にもう一つだけ、貴方は何故そこまでするのですか?」
慶「毒を飲んでしまったんだ。でも苦い訳でもない。甘くてちょっと酸っぱいのに何故か胸が締められるような思いをする、恋と言うなの毒をね。」
清「ありがとうございます。こちらは協力しますよ。」
慶「ありがとうございます。では契約書の方にサインを。それと判子を。」
清「この契約内容で本当に良いのですか?」
慶「嫌なら変えますが?」
清「では1つ付け加えさせて下さい。『清瀬大学病院を傘下に加える』と。」
慶「なっ。絶句ですね。それはやめておいたらどうですか?」
清「病院はこれまで通りの経営方針で行き後ろ盾ができるような形ですね。利益は全部そちらに統合してもらって構いませんよ。」
慶「まあ、付け加えてもいいですよ。ちょっと私の目的に進むための道のりが簡単になりそうだ。では、毎月4000万振り込んでおきます。そちらの利益を吸収するのはやめておきたいのですが?」
清「うけ取って下さい。人件費、光熱費は抜いてから渡しますよ。それと、毎月1000万ではなく病院食用の食材を少し回して頂きたい。」
慶「では、一部食材を回します。というか、全部渡します。必要な量を見積もって下されば。その分だけ、育ててもらっている分と輸入した分を。これでよろしいですか?」
清「ええ。ありがとうございます。これで、私の代で病院が潰れることは無くなりましたな。」
慶「それはどうでしょう?」
清「いまや、世界的に有名で注目されてる実力商家『寿松木商事』に世界的にも高水準、世界の病院トップ30にもランキング入りした『清瀬大学病院』が加わった。さらに...
慶「おっと、その先はまだ未定ですから。それに無理矢理合併するような真似はしませんよ。相談はしますが。」
清「今日はいい商談ができました。一経営者として見習いたい手腕ですな。」
慶「こちらこそ、本日はありがとうございました。私なんてまだまだの腕前ですよ。季節の変わり目ですのでこれからも体調に気をつけて、患者に寄り添いまっすぐ患者を診て行って下さい。そしてこれからは私の為に、働いてくださいね。言っていませんでしたが、もう既に一つの手段は見つかっているんです。それとあの子をすぐに連れて行くので開けておいてくれると助かります。」
清「ほう、面倒事は嫌いですかな?それにもう一つの手段とは?これに関しては詮索をしないほうが良さそうですな。来る当日に一報入れて下されば構いませんよ。ではまた会いましょう。」
慶「有難うございました。」
清瀬智和病院長を見送ったあと父『寿松木十蔵』の書斎まで来た。
慶「失礼します。清瀬病院長との契約が成立しました。」
十「契約内容は?」
慶「簡単に説明します。『寿松木商事は手をのばしている医療に関わる一切の事業を手放す。その後、清和大学病院が吸収合併。その後清瀬大学病院を12億円で買収。清瀬大学病院の利益及び病院の資産は寿松木商事の物とし、注文された分だけ食材を清瀬大学病院並びに分院に手配。清瀬大学病院はこれまで通り一族経営を続けてもらうつもりです。」
十「清瀬大学病院が出す利益が本当に食材費や12億円を上回ると思っているのか?」
慶「12億円は病院の資産に入るんですよ父上。そして清瀬大学病院は、長い会議、相談をしてどのように予算を使うか考えます。つまり12億円が一瞬で消えることなんてない。その間に回収できますよ。なにせ買収が成功した時点で、清瀬大学病院の資産は寿松木商事の物です。そこから必要な予算を流しましょう。そして清瀬大学病院に対しての出金は来年度中に減りますよ。それにこれが赤字になったとしても他の部分で簡単に賄えられる。来年度合計で、14つの企業を吸収合併。その後サポートします。その中には含まれていませんがもう一つ買収したい企業があります。この企業を手に入れられたら必要な費用を削れるし身内で色んな事ができるようになりますよ。」
十「なるほどな。」
慶「絶対に損しない事業ってなんだと思いますか?」
十「そんなものはない。一般的な商売は買い手が居なかったら店を畳まなくてはならない。貿易業だってそうだ。貿易して手に入れたものを買うものが居なければただ金が出ていっただけだ。」
慶「それって需要と供給の問題じゃないですか。望んでいる者がたくさんいるところで行えば絶対儲かります。通常よりも値段を上げたとしても買いては居ますからね。でもいつか飽きが来てしまう。そうするとそこでは買い手がつきません。ですがずっと、半永久的に需要がなくならない仕事がありますよ。それは医者、病院です。これらは需要は尽きません。しかし、供給は尽きてしまう。何故か、自分等が損してしまうからです。だから地方には誰も手を伸ばさなかった。その結果地方では病院に付く前に死亡という事が多くありました。しかし、清瀬病院長は地方に分院をたくさん作った。あの人の代になってから20も増えた。大損をこく確率のほうが高い。しかし他の黒字部分で赤字を抑え、今では見事黒字経営だ。あの経営者がこの一点を見落とすはずがない。なにか考えがあるはず。だから今回の商談は私の負けですね。」
十「それはわからんぞ。まああの男が聡明だという意見には賛成だがな。」
慶「聡明ですか。どちらかというと明哲の方が似合うと思いますよ。」
十「あの男、昔はあそこまで賢くなかったんだ。俺は昔生徒会長をやっていて副会長があいつだった。事駆け引きにおいては一歩も譲らずに俺が勝ってきていた。あいつにあるのは知識だけ。技術として身についていなかったんだ。それからどれだけの回数積み上げたのかは知らんが思わず感嘆の声を上げる程になっていたんだ。そんなあいつのあだ名は孔明だった。孔明が行うのは戦の指揮だ。そこに戦術等の知識が関わっても商売の交渉術は必要ない。なら今のやつは何なんだろうな?実際に戦ったお前が名付けてやれ。」
慶「話の流れが全く見えませんが、名付けるのなら『ブルータス』ですかね?カエサルのようにならないようにしないと。」
十「ブルータス、か。言いえて妙だな。今日はもう遅い。遅くまで突き合わせてしまった私が言うのも変だが早く寝なさい。」
慶「満足いく答えだったようで何よりです。それではお休みなさい。」
十「ああ。」
書斎から出て自室へと戻る。寝る前にやらないと流石にまずいよな。もう一度ログインをする。流石にこの時間になるとほとんどがログアウトしていた。
ア「エルが居ないみたいなので少しお話をしませんか?商談です。」
ヴ「内容によるわね。」
ア「皆さんの会社を買収したいなぁと思って。こっちに有利になるように運んでくれませんか?」
レ「何故そのようなことを?」
ア「エルが、いや涼輝がさ、もしかしたら病気なんだよね。検査しないと分からないけど恐らく肝癌。」
ヴ「なるほど。だからこんな事したのね。あの噂が本当で、説明に書いてあったことが本当なら、どんな病気も治し、二度と病気にならないから。」
ア「ああ。だけど違ったら嫌だし、一応どの程度のものか見ておきたいからね。ゲームの世界の病気がかなり厄介と聞いて完全耐性まで持っていったのが功を奏したね。」
レ「何故そこまでのことを?ただの恋心だとは思えないのですが?」
アザゼルの目の色と表情力の加わり方が一気に変わった。普段の気怠さを感じさせるように力が抜けておらず表情は能面のように無かったが、どこか切なさを感じさせた。
ア「恋や愛っていうのは人や時代によって形が違うだろう。他者を甚振ることで愛していると思う人だっているし、他者から叩かれたり支配されて…おっと、性癖の話にそれてしまったね。私はもうとっくに彼に溶かされちゃったんだろうね。彼は純物質だが、私は不純物。混合物というのもおこがましいなにかだ。幾重にも張り巡らされた私の『嘘』と言う名の障壁。それを全て溶かし挙句の果てに襲った。何度か体を重ねていくうちに好きになってたんだよね。あれが2年前か。今の私は彼のことしか見ることが叶わず彼は本当の私を見たことがある。そんな関係になっちゃったよね。」
ヴ「助けたい理由はわかったけど会社の買収にどうつながるのかわかんないのだけれど。」
ア「内のギルドの人が勤めてるいくつかがあの子の会社と取引をしているとこがあったから買収ないしは吸収合併しようかと。そこだけすると感づかれそうだから全部いっちゃおうかなと。」
ヴ「さすがの財力ね。しかし、理由やちゃんとした契約内容等々を明白にしない限りは頷かないのでは?」
ア「だろうね。でも、どれだけ適当でも良いから買収するさ。吸収合併はしない。会社を残してそこを完全に任せてしまったほうが得策だからね。わざわざ自分の仕事を自ら増やすマネはしたくないんだ。」
レ「なるほど。そろそろ12時ですね。私はこの辺で失礼します。お休みなさい。また明日。」
ア「ああ。お休み。また明日。」
ヴ「風引かないようにね。」
ア「貴方は優しいのか非道なのか偶にわからなくなる。」
ヴ「私以上に優しい人間はこの世に居ないわよ。『平等』が私のモットーだからね。そして私以上に非道な人間は居ないでしょうね。多くの血を被ってきたから。」
ア「過去に何があったかは知らないですが、詮索はしません。私ももう寝ます。Я никогда не позволю тебе увидеть мое истинное лицо. Gute Nacht.」
ヴ「Självklart vet jag. Sogni d'oro.」
性癖の愛の違いとは?書いてて思った疑問。ちな、いや、言うべきか言うまいか悩むな。