何度でも君に会いに行く
なんとなーく勢いで書き上げたものです。
感覚のまま書き殴ったような拙い文章ですが良ければ読んでみてください。
毎年夏になると彼に会いに行く。
私にとって大切な人。
大好きな彼に。
〜 〜 〜 〜 〜
「おかえり。待ってたよ」
家に帰るといつも笑顔で迎えてくれる。
私は会社ではいじめられ、実家では存在しないかのように扱われ、どこにも居場所なんて無かった。
そんな私を暖かく迎え入れてくれる場所があることがとても嬉しかった。
ある夏、私は彼と喧嘩をした。
外は暗く冷たい雨が降る中、靴も履かずに家を飛び出した。
冷たい雨が傷ついた心に深く沁み込んだ。
なんだか怖くなって橋の下に逃げ込んだ。
怖い。
彼を傷つけた私が怖い。
何でこんなことになったんだろう。
何で私はあんなことを言ってしまったんだろう。
涙がとめどなく溢れてくる。
大切な人になんてことをしてしまったんだ。
心の奥底からどす黒い何かが湧いてきたような気がした。
声が枯れるまで泣いた。
大雨の音が全てをかき消して洗い流してくれるように思った。
やがて喉は掠れ涙は枯れた。
泣き疲れたからかフッと意識が途切れた。
どれだけの時間が経ったのだろうか。
泣いて全て吐き出したからか何だかスッキリした気がする。
さっきまでの大雨は嘘のように晴れていた。
そうだ、彼に謝らなくちゃ
私は急いで彼の待つ家へと戻った。
「ただいま」
声をかけたが何も反応がない。
そりゃあんなことをされたら誰だって怒るよね。
「さっきはごめんね。私、自分に余裕がなくてあんな
ひどいこと言っちゃった。本当にごめんなさい」
早足に玄関を通り抜けリビングに入る。
彼は机に突っ伏して寝ていた。
その寝顔はいつもの明るく優しい顔ではなかった。
深く傷つき、疲れ果てた顔だった。
私のせいだ。
せめて何か私にできることはないだろうか。
そう思って部屋を見渡すと家を出るときにはなかった物があった。
私の写真だ。
ここに並べる写真は二人で写っているものだけにしようと約束していたのに。
更になぜか写真の前に線香の香炉まで置いてある。
まさか・・
私の写真の前には新聞の切り抜きが置いてあった。
『大雨翌日の河川敷に女性の遺体を発見。河川の増水に巻き込まれたか』
と書いてあった。
言葉を失ったまま立ち尽くすことしかできなかった。
「ごめんな。おれの気が回らないがために君を死なせてしまった...こればっかりは悔やむにも悔いきれないよ」
いつの間にか起きてきた彼が私の写真の前でそう言った。
まさか。
そのまさかだ。
私はあの日死んだのだ。
それと同時に彼に癒えることのない傷をつけてしまったのだ。
彼が一体どれだけあの日の喧嘩のことを悔やんだのだろうか。
それを考えただけで胸が締め付けられる。
思わず後ろから抱きしめた。
「ごめんなさい。あれはあなたのせいじゃないから立ち直ってよ」
この想いは届くわけがない。
それでも伝えたかった。
私は君のことが大好きです。
だから私のことでずっと悲しい気持ちになって欲しくないの。
私のことは忘れて欲しくない。
でも私が原因で立ち直れないのなら忘れてほしい。
また前みたいに明るく笑ってよ。
私は君が笑ってる姿が見たい。
伝わらない想いを伝えに何度でも君に会いに行く。