泣かないで
大型アニマの戦いから数日後、ハルは熱を出して寝こんでいた。
「ごほっ、二人とも入ってきちゃだめだからね。風邪がうつったら大変だもの」
「わかった。ゆっくり休んでいろよ」
「うん……」
それだけ言ってハルはドアを閉めた。残されたマサとユキはリビングへと足を運んだ。
「ハル殿、大丈夫でござろうか?」
「さぁな。ユミの件もあるから、相当なダメージを受けているかもしれないな」
「俺たちには何も出来ないのでござろうか」
「まぁ、後で粥でも持っていくか」
そんなことを話していると、玄関の呼び鈴が鳴った。マサは帽子をかぶり、玄関のドアを開けた。そこには、レンとイグが立っていた。
「あんたたち、どうしてここに?」
「いやぁ、ハルが玄関から入れと言ってたのを思い出してな。それに、イグが礼を言いたいと言っててな」
「そうか。ここじゃなんだから中に入れよ」
そして、二人を中へと招き入れた。
「ハルはあれからどうだい?」
「今は熱を出して寝こんでいるよ」
「そうか……実は、あれからのことを話したかったんだがな」
「今のハルにそのことを伝えるな。これ以上ハルに負担をかけたくない。内容なら俺らが聞く」
「それは構わないが……」
それからレンは今までの事を話し出した。
「ユミの契約者は目を覚ましたよ。命に別状はないらしい」
「それはよかった」
「そして、大型アニマを作り出した研究所は、一応見つけたんだがもぬけの殻だった。何の痕跡も残さずに奴らは姿を消した」
「そうか……」
マサが顎に手を当てて考えこんでいると、レンが立ち上がった。
「少しハルの顔を見て帰りたいんだが……」
「ハルの部屋には誰も入れないぞ。俺たちに風邪がうつったらいけないんだと」
「そうか、それは残念だったな、イグ」
「そうだな。直接礼を言いたかったんだが。俺がここにいられるのは、お嬢のおかげだから」
「お嬢?」
「さっきからずっとこんな感じなんだ」
四人ではははと笑った。その頃、ハルはうーんと唸りながら寝付けないでいた。
(どうしよう……ちゃんと寝ないと治らないのに……)
ハルがもうろうとした頭で考えこんでいると、ユミのことを思い出す。
「私があの時助けれたら……」
そしてハルは意識を手放した。すると、キラキラと光がある人物へと変わっていく。それはユミだった。ユミはハルの額に手を当てて、にこっと笑った。
「ハルさん、もう泣かないで。私は大丈夫だから……」
そしてフッとユミの姿はなくなった。ハルが目を覚ますと額に手を当てた。
「あれ? さっきまで頭が重かったのに……」
ハルがベッドからおりると、一枚の白い羽が落ちていた。
「もしかして、ユミちゃん?」
ハルはそれを拾い上げ、胸にあてた。
「……ありがとう」
それからハルはリビングへと向かった。そこには、四人が談笑していた。
「何、この状況は……」
「おぅ、ハル。もういいのか?」
「うん。なんか熱下がったみたいで、もう元気だよ」
ハルがにこっと笑うと、四人はほっとした顔をした。
「どうしたの?」
「いや、ハル殿が元気になってよかったと皆が思ってるんでござるよ」
「そっか……心配かけてごめんね。そして、なんでレンさんとイグさんがいるの?」
「俺はイグを連れてきただけだ。ほらイグ、礼を言うのだろう?」
「そう急かすな! お嬢、俺をあの時見つけてくれてありがとう。だから俺はここにいられる」
「わ、私は何もしてないよ! 病院に連れて行ったのはレンさんだし」
「それでも俺は助けられた。だから礼を言わせてくれ」
イグにそう言われて、ハルは少し恥ずかしそうに笑った。
「よし! 用事も終わったし、俺は行くとするか」
「え、もう行っちゃうんですか?」
「あぁ。もう少しいたかったが、俺も仕事があるんだ」
玄関に向かう途中、レンがハルたちに向き直る。
「あと、俺は君たちに協力することに決めたよ。何かあれば頼ってほしい」
「ありがとうございます。そう言ってもらえるだけでも、すごく有難いです!」
そしてレンはにっと笑い、玄関を出ていった。
「俺もお嬢に協力させてくれ」
イグがハルの手を握ると、マサがぴしっとイグのてを叩いた。
「どさくさにまぎれて、何してるんだよ!」
「何を怒っている。俺はただお嬢に協力したいと言っただけだ」
「だったら手を握らなくてもいいだろ!」
マサとイグが言い合い、ユキがおろおろと躊躇っているのを、ハルは微笑ましそうに見ていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
大型アニマ編はここで終わりますが、話はまだ続きますので読んでもらえたらうれしいです。




