大型アニマとの戦い
「一応廃ビルのところに来たけど、本当に来るの?」
ハルが心配そうにマサを見ると、マサは頷き、空を見上げた。
「あぁ。言っただろう? 俺たちは相手の気配で大体の位置がわかるんだ」
「やはり大型アニマでしょうか」
「多分な。次の獲物は俺たちってことだ」
三人が話していると、ズシン、ズシンと音を立てて、大型アニマが現れた。横には、蛇のアニマもいる。
「やっと見つけたぜ。さっさとこいつに取りこまれちまいな!」
「冗談じゃない!」
そう言ってマサが飛び出し、攻撃をしかけた。
「ライジングショット!」
「ギアーショット」
「なっ!」
すると、大型アニマも拳を突き出して攻撃した。
「あの技は、ユリアって子の技だったはずじゃ……」
「マサ殿、助太刀いたす!」
ユキも戦いに入り、攻撃を開始した。
「敵を焼き払え、火炎!」
たくさんの炎が大型アニマに向かって放たれた。
「水の波動……」
しかし、大型アニマは大量の水で応戦する。
「なっ、打ち消された?」
「ユキ! 一度引いて!」
ハルが叫ぶが、ユキは構わず戦いを続けた。マサも防戦一方だった。それを見ていた蛇のアニマが、割って入ってきた。
「おいおい、俺を無視するなよっ!」
蛇を槍に変えて二人をなぎ払った。
「ぐっ!」
「しまった!」
「マサ、ユキ!」
二人が飛ばされたところに、大型アニマが一撃を入れる。
「ギアーショット」
二人はビルの壁まで吹き飛んだ。
「「がはっ」」
「二人とも、しっかりして!」
ハルが二人に駆け寄ろうとすると、大型アニマがハルを捕まえた。
「きゃあっ!」
「ハル!」
「ハル殿!」
二人が名前を呼んだ時、大型アニマの動きが止まった。
「どうした? 早くそいつをやれよ」
しかし、大型アニマは動かない。それにハルも少し疑問を持った。
「やっぱりあなた、どこかで会ったことがあるの?」
ハルの問いに、大型アニマがしゃべり出した。
「は……ハルさ……ん。助けて……」
「え?」
「私……ユミよ……」
「っ!」
ハルとマサたちは息を飲んだ。大型アニマはボロボロの羽以外にユミの形が無かったからだ。ハルは、震える手を大型アニマに伸ばした。
「ユミちゃん、ユミちゃんなのね。ごめんね、あなたが困っていたのに、私はその手を取らなかった。後悔してもしかたないけど、あなたを助けたい! もう苦しまなくていいんだよ」
「は……ハルさん……」
大型アニマは涙を流していた。それを見ていた蛇のアニマは、先ほどの槍をハルに向かって投げた。
「そいつに勝手なこと言うな!」
「なっ!」
しかし、ハルには当たらなかった。大型アニマがハルを隠すように、背中で受けたからだ。
「ガアアアァアッ!」
大型アニマの悲鳴がこだまする。
「ユミちゃん!」
その時ハルを大型アニマは離し、そしてその場に倒れこんだ。落ちそうになったハルをユキが受け止める。
「ありがとう、ユキ。ユミちゃん、しっかりして! どうしよう……」
「ちっ、邪魔しやがって。こっちにはお前の人質がいるんだぞ」
「それは彼のことかな?」
「何?」
蛇のアニマが振り向くと、レンが高木を背負っていた。
「なっ! 見張りがいたはず。なんでここにそいつがいるんだよ!」
「あぁ、見張りの者たちは、今はぐっすり眠っているだろう」
「ちっ、このままじゃ俺が不利だな。ここは退散させてもらうぜ! 毒霧!」
「くっ……これを吸ったらまずい!」
蛇のアニマは、それからばっと木を伝いながら逃げていった。
「逃げられたか……」
レンがそれを目で追っていると、ハルの声が聞こえてきた。
「どうしよう! このままじゃユミちゃんが死んじゃうよ!」
「ハル、あきらめろ。もう急所に当たって動けないんだ」
「私がいけないんだ……あの時ユミちゃんに協力していれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに!」
「ハル、それは違う」
レンがハルたちに近づく。
「君のせいじゃない。悪いのはこういう研究をしていた者たちだ。だからあまり自分を責めるんじゃないよ」
「でも……」
ハルが涙を流しながら、大型アニマを見ていると、大型アニマはうつろな目をしながらハルに手を伸ばした。
「ハル……さん、ケガはありませんか……?」
「大丈夫よ、あなたが守ってくれたもの!」
「よか……った。ありがとう……」
「どうしてお礼を言うの? お礼を言うのは私なのに」
ハルは伸ばされた手をぎゅっと握った。大型アニマはうっすらと笑った。
「あなたのおかげで、私は救われた……だから、ありがとう……」
そう言うと、大型アニマの体がボロボロと崩れていった。
「あぁ、ユミちゃん! ごめん、ごめんなさい! あなたを助けられなかった……」
「ハル……」
泣きじゃくるハルを、マサたちは何も言えずに見ていた。それから少したって、レンがマサたちに話しかけた。
「では、俺はこの契約者を一般の病院に連れて行こうと思う」
「あぁ、頼んだ」
すると、レンはマサに近づき、耳元で囁いた。
「ハルのこと、ちゃんと見ていてやれ。あのままじゃ彼女が持たない」
「わかってる。ハルのことは任せろ」
レンは頷き、その場を後にした。ハルはまだ大型アニマがいた場所に座りこんでいる。
「ハル、そろそろ帰ろうぜ」
マサが言うと、空から雨が降り出してきた。まるで、ハルの涙を洗い流すかのように。




