覚醒と決着
「え……? これは大型アニマ?」
ハルが驚いて見上げていると、博士が喜びの声を上げた。
「おーっ! すごいぞ! やはりこの指輪には秘密があるのですね。しかし、私のに敵うでしょうか? やりなさい!」
博士の言葉に、巨大生物は駆け出した。
「紅蓮……」
巨大生物は、ユキから奪った炎の渦を放ってきた。それを大型アニマは地面を蹴り、空へと飛び立った。
「何をしているのです。早く追いなさい」
「ガアァァァー」
巨大生物は雄たけびを上げた。すると、背中からコウモリの巨大な羽が生えた。そして、大型アニマを追いかけるように飛び立った。
「そうです、それでいいのです。早く倒してしまいなさい! それで私が正しいと証明される」
「もう、やめて下さい! あなたは間違っている!」
「そうだよ、お父さん。もうこんなことやめようよ」
ハルとアキナは博士に呼びかけたが、博士は少し顔をしかめるだけだった。
「うるさいですね。何を間違っているというのです? 私は何も間違ってなどいない!」
空中では、大型アニマと巨大生物が激突していた。
「サンダーボルト!」
大型アニマが電撃を放ったが、巨大生物は姿を消した。
「何? どこへ行った?」
大型アニマが辺りを見回していると、その背後に巨大生物が現れて、水の球を放ってきた。
「水の波動……」
「甘い!」
大型アニマはそれを軽々と避けた。
「そんな水しぶき、当たりはしない! 水の波動とはこういうことを言うんだ」
大型アニマは、いくつもの水の球を出し巨大生物に放った。
「グウゥゥゥ……」
それは巨大生物に当たりびしょぬれになった。
「くらえ! サンダーボルト!」
「ギャアァァァー!」
巨大生物は電撃を浴びて悲鳴を上げた。
「まだ……終わりではない……」
巨大生物は右手を大蛇に変え、毒針を放ってきた。
「かまいたち!」
しかし、大型アニマは風の刃でそれを吹き飛ばした。
「何故わからないんですか!」
空中戦が行われている間、下ではハルたちが博士に問いかけていた。
「あの巨大生物はあなたのために戦っているのに、あなたは自分のことばかりじゃないですか」
「言ったでしょう? レオもネイも望んであれと融合したのですよ。それを責められる筋合いはないですね」
「お父さん……」
「さぁ、アキナ。あなたも早くその娘を黙らせなさい。もう私をがっかりさせないで下さい」
博士はため息をつき、頭に手をやった。
「お父さん、私はハルさんたちに呪縛を解いてもらいました。だから私は自由です。お父さんの言う通りにはしません!」
「おや? 確かにペンダントがないですねいやはや、君は本当に私の邪魔ばかりするんですね。」
「私は皆を助けたいだけです」
「それは傲慢です。助けることには限度があるんですよ」
博士の言葉に、ハルはある契約者の言葉を思い出していた。
「そうだとしても、私は……」
ハルが言いよどんでいると、空中戦ではもうすぐ勝敗が決められようとしていた。
「何故そこまで戦う!」
「あの方のためです……あの方が望むならこの命尽きようと構わない……」
「そんなことはしなくていい。今あきらめさせてやる! ダイヤモンドクラーッシュ!」
大型アニマの全力の拳の一撃が巨大生物に当たり、巨大生物はそのまま落下した。
「何! あれが負けただと?」
「あなたが信じているのは、自分だけですよ」
「なんだと?」
「私は彼らが勝つと信じていました」
ハルの言葉に、博士は口を噛みしめた。
「認めない……私は間違ってなどいない! 全て私が正しいのだ!」
博士がそう言うと、上から巨大生物が大きな音を立てて落下してきた。
「何をしているのです! 早く立ってあの者たちを始末しなさい!」
「博士、もうやめよう」
薫が博士に近づこうとしたが、博士はそれを拒んだ。
「私はまだあきらめませんよ! あの娘に出来て私に出来ない訳がない」
博士が指輪を握りしめると、指輪はボロボロと崩れていった。
「何故だ! 私の研究は正しかったはず……」
「お父さん……」
「もういい……皆私がこの手で始末してあげましょう!」
博士は笑いながら、懐から拳銃を取り出し、ハルに銃口を向けた。
「ハル!」
すぐさま大型アニマがハルを庇うように前に立った。すると、大きな扉が現れた。
「なんですか、この扉は……」
博士が眉をしかめていると、ハルはその扉を見て驚いた。
「あれは、あの時の……!」
「あの時?」
博士がハルに目をやった時、扉が開かれあの影たちが現れた。
「なっ! なんですか、これは!」
「薫さん、早くこっちへ!」
ハルが薫を傍まで引き寄せた。影たちは博士と巨大生物をからめとった。
「離しなさい! こら、何をしているのです! 早く私を助けなさい!」
博士は叫んだが、巨大生物はぴくりともしなかった。
「何故です……私はどこで間違った。アキナ、早く私を助けなさい!」
「……ごめんなさい、お父さん」
アキナはそう言うと目をそらした。博士は初めて絶望した顔をした。すると、扉から声が聞こえてきた。
「アニマの命を弄んだ罪、その身をもって償うがいい……」
それはあの神の遣いの声だった。そして、博士たちはどんどん扉に引きずりこまれていた。
「嫌だ! まだ死にたくない! 私はまだやることがあったんだ! 私はただ私をバカにした奴らを見返したかっただけなのに……!」
博士は泣きながら拳銃を放ったが、影にはきかなかった。
「嫌だーっ! 助けてくれーっ!」
博士の叫びとともに、巨大生物と博士は扉の中に引きずりこまれていった。そして勢いよく扉が閉まり、またスーッと消えていった。
「終わったの……?」
ハルがぽかんとしてアキナを見ると、アキナは声を殺して泣いていた。
「アキナちゃん、辛かったね、今は泣いていいんだよ」
ハルがアキナを抱きしめると、アキナはその胸の中で大声で泣いた。
「う……うわあぁぁぁん!」
その声を聞いたハルは、ぎゅっと強く抱きしめたのだった。




