博士との対話
次の日の早朝、ハルたちは薫の研究所を出発した。博士のいる研究所までは途中までワゴン車での移動である。
「すみません、こんな朝早くに」
「いいえ。薫先輩から頼まれたことなので」
「その薫は出ていく時見かけなかったな」
マサが腕組をして話していると、ハルがマサを見た。
「まだ何かの研究をしていたからじゃないの?」
「……だといいんだがな」
マサの言葉に、ハルは首を傾げた。
「ねぇ、それってどういう意味……」
「あんたは何も気にする必要はないよ」
ハルは心配そうにマサを見たが、マサは前を向いたまま黙った。その後は目的地に着くまで気まずい空気が流れた。
しばらくして、やっと目的地の山までやって来た。ハルたちは車からおり、ハルは運転手に近づいた。
「ありがとうございます。後は大丈夫ですから戻ってて下さい」
「わかりました。お気をつけて」
「はい!」
それから全員で山を登った。ハルはユミに、アキナはイグに抱えられていた。後の三人は走って登っていた。
「ユミちゃん、重くない?」
「大丈夫ですよ」
「アキナ、博士のいる研究所はまだなのか?」
「もうすぐです。ほら、あれです!」
長時間進んでいると、アキナが少し先を指さした。
「けっこう大きい所だね。もしかしたらもういないのかな?」
ハルがそう言うと、目の前の自動ドアが開いた。
「入ってこいってことだろうな」
「皆気をつけろ。何かワナがあるかもしれないからな」
レンの言葉に全員が頷き、中へ入っていった。
「誰もいないのかしら……」
中はとても静かで、人の気配はなかった。ハルたちがしばらく進みドアを開けると、広い敷地内に出た。
「こんな所があったなんて……」
「ようこそ、いらっしゃいました」
ハルが驚いていると、奥の方から声が聞こえた。全員が振り向くと、スタスタと博士が歩いてきた。
「くくく……あなたと会うのは初めてですね。はじめまして。私は皆からは博士と呼ばれています」
「はじめまして、ハルです」
ハルは警戒しながら自己紹介をした。博士はにこやかに笑っていたが、その目はユミを見ていた。
「おや? 君はユミ君だね。てっきりあの時、死んだとばかり思ってましたが、これもハルさん、あなたが関係しているのかな?」
博士の問いかけに、ハルは押し黙った。それをユミはちらっと見たが、一歩前に踏み出した。
「私はハルさんに救われました。だから、もうあなたとは関係ないです!」
「おやおや。大きく出ましたね。しかしアキナ、あなたにはがっかりですよ?」
博士はくくくと笑いながら、次はアキナに目を向けた。その目はとても冷ややかだった。
「その者たちを始末しなさいと言ったのに、あなたは何も出来なかった。本当にがっかりです」
博士は、はぁーっとため息をついた。そして、手を二回叩いた。
「しかし、君たちは運がいい。私の研究成果を見ることができるのですから! さぁ、いらっしゃい!」
博士が大声を出すと、奥の方から地響きが聞こえてきた。姿を現したのは、あの巨大生物だった。
「あの生物は一体……もしかしてアニマなの?」
ハルたちが呆然としていると、博士が両手を広げてしゃべり始めた。
「どうですか! すごいでしょう。研究に研究を重ね、やっと作りあげたのです。そしてこの指輪もですよ」
博士は薬指にはめた指輪をハルたちに見せた。
「あなたもアニマの契約者なんですか?」
「いいえ。これは私が、ある研究を元に作り出した物です」
「ある研究?」
「そう、あなたのおかげですよ!」
博士がそう言って振り返ると、ある人物がこちらに歩いてきた。
「えっ……! 薫さん?!」
現れたのは薫だった。薫が博士の所まで来ると、博士はお礼を言った。
「本当にありがとうございます。あなたのおかげで、私はここまでやることが出来た」
「薫さん、どうして……」
ハルの問いかけに、薫は顔を背けた。
「さぁ、話はここまでです。この指輪の力を試すとしましょうか!」
博士がそう言うと、指輪が光りだし巨大生物が雄たけびを上げた。
「ハル! 今は傷ついてる場合じゃないぞ!」
マサの言葉にハルは首を振った。そして、目の前の敵を見据えた。




