アニマ狩り
ある夕暮れ時、ハルとマサは買い物をしていた。
「ふぅー。なんとか必要な物は揃ったわね」
「しかし、いっぱい買ったな……」
「これでもまだ少ない方よ。でも、やっぱりこの前のこと、ニュースでやってるね」
ハルがスマホで見ていた画面には、ビルの屋上で爆発があったという記事だった。
「そりゃぁ、あれだけ目立てばこんな記事も出るよねー」
「言っとくが、俺は悪くないからな」
「いや、あの爆発はあんたのせいでしょ」
二人がやいやい言ってると、前から一人の男性がこちらに歩いてきた。
「こんにちは。話してるところ悪いんだが、この辺りでアニマ狩りを見なかったかい?」
「アニマ狩り?」
「あぁ。契約してるにも関わらず、アニマだけを襲っている輩がいるらしいんだ。心当たりはないかい?」
「話を聞く前に、あんた何者だ?」
マサが男を睨むと、男性ははははと笑った。
「これはすまない。俺は犬のアニマで、名をレンという。よろしくな」
「レンさんは、どうしてアニマ狩りを探しているんですか?」
「俺は管理者の任も任されているから、見過ごすわけにはいかないんだ」
「そうなんですか。私たちは何も知りません」
「そうか。帰ってるところすまなかったな。では、君たちも気をつけて帰るんだよ」
そう言って、レンはばっと飛んで行った。
「なんだったんだろう。でも気になるね」
「……そうだな」
ハルがマサを見ると、少し怒ったような顔をしていた。家に帰り、夕食の準備をしながらハルは先ほどの話題を振った。
「そういえば、なんでアニマだけを狩っているんだろう?」
「それは、俺たちアニマは人間を襲えないというルールがあるからだ」
「そうなの?」
「まぁ、それをちゃんと守ってる奴が、今回の犯人なのかもな」
「普通ならちゃんと守るんじゃない?」
「甘いな。そんな奴そうそういないぜ」
「そっか。でも、私たちも気をつけないとね。この前のことがあるから」
そこでハルははっとする。あの三人組を思い出したからだ。
「あ、でもあの三人のことじゃない? だってマサを追いかけていたでしょ?」
「あいつらは研究所の奴らだよ。俺が指輪を持っていったからな」
「あんた、もしかしてここに書かれているニュースで脱走者が出たっていうのは、あんたのことじゃないの?」
ハルがじーっと見つめると、マサは気まずそうにそっぽを向いた。
「やっぱりそうなのね。まぁ契約したんだから私も共犯か」
ハルが少し笑うと、マサは食事を終えテレビの前に座った。テレビをつけると、またアニマ狩りの話をしていた。
「また出たみたいね。しかもこの近くじゃない」
「少し用心した方がいいな。相手もアニマみたいだしな」
ニュースには犯人と思われるシルエットが映し出されていた。
とある廃ビル。一人の青年が中へと入っていく。中にはたくさんのアニマたちがいた。その中の赤い服を着た少年に、青年が近づき殴り倒す。
「ぐっ……」
「この役立たず! 映像に残っているじゃねぇか。あれだけ証拠を残すなと言っただろう!」
「も、申し訳ございませぬ」
「ユキ、今度はしくるなよ。また新しい契約者が出たみたいだからな」
「……承知いたしました」
「頑張れよ。お前がやらなきゃ他の奴らがどうなるか、わかってるよな?」
「わかっております。皆には手出ししないでくだされ!」
「わかってるよ。お前がちゃんとやればな」
ユキと呼ばれた少年は走ってビルを飛び出した。
「頑張って、俺の邪魔をする奴らを消してくれよ」
男はにやにやしながら笑っていた。
次の日の夜、ハルはバイトを終えてマサと歩いていた。
「今日も出るかな、アニマ狩り」
「さぁな。でも、俺たちも新しく契約したから狙われるかもな」
「えー! それは嫌だな」
二人で話していると、目の前に炎が広がった。
「……来たな」
前を見ると、ユキがハルたちの方に歩いてきていた。
「あんたがアニマ狩りか?」
「だとしたらどうだと言うのでござるか」
「いや、ただの確認だ。やろうっていうなら容赦はしない!」
マサはダッと走り出して、ユキに拳をぶつける。それをユキは両手でガードする。二人の攻防が続き、マサが電撃を放つ。
「サンダーボルト!」
「がはっ!」
ユキに見事に命中し、下に落下した。
「……このままではまずい。一度引かなければ」
ユキは力をふりしぼり、ビルの方へ走っていった。
「待て! まだ戦いは終わってないぞ」
マサが追いかけようとすると、レンが現れて行く先を遮った。
「そこをどけ! 俺はあいつと戦わなければいけないんだ」
「それは止めないよ。今から行くところに俺もついて行っていいかな?」
「レンさんもあの子に用事が?」
ハルの言葉にレンがうなずく。
「彼は多分アニマ狩りの犯人だ。君たちを襲っていたところを見て確信したよ。さぁ、行こうか」
そう言って三人は廃ビルの方へ向かった。
廃ビルの中。ユキは呼吸を整えながら走っていた。
「このまま戻ったらまた怒られる。それに皆が大変な目に……」
「やっと追いついたぜ。少し話そうじゃないか」
「俺からは話すことなどない!」
ユキが怒鳴ると炎が三人をかこった。
「あっつ!」
「これは俺に任せてほしい」
レンがそういうと、炎を出してユキの炎を打ち消した。
「なっ……」
ユキがよろよろと壁の方に行って座りこんだ。すると、向こうからあの青年がやって来た。
「なんだユキ。もうやられちまったのか。だらしねぇな」
青年は笑いながらユキを蹴り飛ばした。
「なっ!」
「ひどい! 仲間じゃないの!」
「仲間? そんなんじゃないね。こいつらは俺の所有物さ。だから俺が何をしようと勝手だろ。しかも、こいつら人間様には逆らえないっていうんだから面白いじゃねえか」
マサとレンが怒りを露わにしていると、ハルが大声で言った。
「そんなの間違ってる! 彼らは所有物じゃないわ! 見た目が少し違うだけで、あとは私たちと同じじゃない。それをわからずにひどいことしないで!」
全員がぽかんとハルを見ていると、青年が怒鳴りだした。
「うるせー! 俺が何をしようと口出しするんじゃねえ!」
そういうと、近くにあった棒をハルに振りかざした。
「マサ! 下の床に攻撃して!」
「わかった。ライジングショット!」
マサが床に打撃を与え、青年がよろける。それをレンが見逃さず、近くにあった縄で縛り上げた。
「は、離しやがれ! 俺を誰だと思ってるんだ!」
「はて、君は誰かな。君はこれから警察に行くんだよ」
青年は、がくっとうなだれた。ハルたちはユキのところに行き、目の前に座った。
「もう大丈夫だよ。あなたはもう自由だから。今までずっと辛かったね」
ハルはユキの頭をぽんぽんと叩いた。ユキは目を潤ませてハルに抱きついた。
「う……うぅ……」
ユキが泣きじゃくるのをハルはよしよしと背中を撫でた。
「大丈夫……もう泣かないで」
それから警察がやってきて青年を連れて行った。青年は最後まで暴れていたが、マサに睨まれて大人しくなった。
「捕まっていた他のアニマたちは俺の方で別の契約者を探そうと思うよ。そして、ユキはこれからどうするんだ?」
ユキは、もじもじしながらハルを見た。
「俺はこれからは、ハル殿についていこうと思いまする」
「え、それって……」
「俺の契約者になってくだされ」
「ちょっと待って。契約って一人じゃないの?」
「そういうのにルールはないよ」
レンがはははと笑った。そして、ユキはハルの指輪にキスをし、周りに光があふれだした。
「俺はユキ。虎のアニマでございます。これからよろしく頼みます、ハル殿」
「うん、よろしくね」
「じゃあ、さっきの戦いの続きをしようぜ、ユキ!」
「もちろんでございます! マサ殿」
「せんでよろしい!」
ギラギラした二人をハルがゲンコツで制した。レンはそれを見てまた笑い出した。




