忍び寄る影
とある研究施設に博士たちはいた。
「くくく……さぁ、そろそろですよ? 私の実験の成果です」
そこに横たわっていたのは一人の女性だった。
「アキナ、あなたはこの者たちに近づいて始末しなさい」
アキナと呼ばれた女性に、博士はマサたちの写真を見せた。
「お父さん、もうこんなことやめようよ?」
アキナは体を起こし、写真を受け取った。
「何を言ってるんですか。私はただ研究をしているだけです。お前にとやかく言われる筋合いはないよ」
「お父さん……」
博士は言い終わると、また画面に目を戻した。それをアキナと蛇のアニマ・ネイ、カメレオンのアニマ・レオはじっと見ていた。
「なぁ、博士よ。俺が行ってこようか?」
「いいえ。これはアキナの初めての仕事です。上手くやって下さいよ?」
「……わかりました」
そしてアキナは施設を出ていった。
ハルたちはリビングでくつろいでいた。
「最近何もないから、平和だねー」
「そうだな」
「でも、それがなんだか怖いですね。あの博士が何か企んでないか心配です」
ユミが俯いていると、ハルが手を握った。
「大丈夫! 今度はあなたを渡したりしないから、安心して」
「ハルさん……はい、ありがとうございます」
二人が話していると、テレビのニュースが聞こえてきた。
「今日は新月ですね」
「そうですね、月が見えないとさみしいですね」
テレビのキャストが話しているのを、ハルはボーッと見ていた。
「へぇー、今日は新月なんだ。あまり気にしてなかったな」
ハルが振り返ると、全員が固まっていた。
「あれ、皆どうしたの?」
ハルが首を傾げていると、マサが口を開いた。
「やばい、今日は新月なのか……」
「どうしましょう、ここではハル殿に迷惑をかけてしまいますぞ?」
「そうですね……」
各々がしゃべり始めたため、ハルは混乱していた。
「一体新月がなんなのよー」
「それは俺から話そう」
声の方を振り向くと、レンが窓に腰かけていた。
「レンさん?」
「俺たちは新月になると、力を失うんだ。まずは全員薫のいる研究施設まで来てくれ。詳しいことはそこで話そう」
レンに促され、ハルたちは軽く荷物をまとめて家を出た。
「でも、相変わらず窓から入ってくるんですね」
「おや、悪かったかい?」
「いや、外から目立つので、あまりしてほしくないですね」
「ふむ。気を付けるとしよう」
「本当ですか? 頼みますよ?」
施設に行くまでのバスの中で、レンとハルは何気ない話で笑いあっていた。それをマサたちはつまらなそうに見ていた。
「やっと着いたー」
長い間、バスに揺られてハルはぐったりしていた。
「今日はもう遅いから、ここに泊まりなさい」
「いいんですか!」
それを聞いたハルは、笑顔になりすぐに施設の中に入っていった。
「じゃあ、俺たちも中に入るか」
「あぁ、君たちは別の部屋に行ってもらうよ」
「は?」
ハルは談話室に来ていた。荷物を下に置いて、机に突っ伏した。
「はぁー、本当に疲れたわ。もう少し近くにあったらいいのに」
「本当にそうだよね、お姉ちゃん」
ハルが振り向くと、猿渡が画用紙を持って立っていた。
「い、いつの間にそこにいたの?」
「少し前からだよ」
「じゃあ私の会話、聞こえてたの?」
「うん。僕、ウサギと猿のアニマだから、よく聞こえるんだ」
「そ、そっか……」
(なら、この子もキメラなんだ……)
ハルが俯いていると、隣に猿渡が座ってきた。
「お姉ちゃん、前に約束したよね? 一緒に絵を描くって」
「あぁ、確かに言ったわね。今日は何を描こうか? さあちゃん」
「さあちゃん?」
猿渡が首を傾げていると、ハルが慌てだした。
「あぁ、ごめんね! つい呼びやすい言い方しちゃった。嫌だった?」
ハルが気まずそうに猿渡を見ると、猿渡は首を横に振った。
「ううん。お姉ちゃんが呼びやすい呼び方でいいよ」
「ありがとう!」
「でも、なんでさあちゃんなの?」
「猿渡あきらで、名前の上だけ取ってさあちゃん」
「……適当だね」
「適当なもんですか! 一応ちゃんと考えたのよ」
そして二人は、はははと笑い出したのだった。




