白いインコの勘違い
ユミは考えていた。
「今日のハルさんはおかしかった」
それは数時間前にさかのぼる。ハルは鏡の前で服を選んでいた。
「ハルさん、どこかに出かけるんですか? なら私も一緒に……」
「あー、ごめん。今日は大事な用があるから一人で大丈夫だよ」
そう言うと、ハルは着替えて出ていった。そして今に至る。
「やっぱりおかしい。ハルさんがあんなオシャレして出ていくなんて」
「そんなに気にすることないんじゃないか?」
マサが呆れていると、ユミはキッと睨んだ。
「何を言ってるんですか! 大事な用が男と会うことだったらどうするんですか!」
そう言われて、マサは固まった。ユキはおろおろし、イグはお茶をすすっていた。
「ま、まさか。ハルに限ってそれはないだろ」
「わかりませんよ? あんなオシャレしてるんですから否定はできません」
「だからって俺たちが、ハルのプライベートにまで口を出すことじゃ……」
「私ちょっと見てきます!」
「あ、おい!」
マサが止める間もなくユミは出ていった。
「……何もなければいいんだが」
「確かこの辺だったはず……」
ユミは、ハルが前に見ていた雑誌を見ていた。そこには付箋がしてあり、オシャレなカフェがのっていた。
「あった! ここだ。一応、羽はしまっておこう」
そしてユミは中に入り、辺りを見回した。
「ハルさんはどこだろう……」
「お一人様ですか?」
「は、はい! あの、この人来てませんか?」
ユミはハルの写真を店員に見せた。
「あぁ、この方なら、あの窓際の席にいらっしゃいますよ」
「なら、その近くの席でお願いします!」
「か、かしこまりました」
ユミの気迫に店員は少し引いていたが、近くの席に案内した。
(二人は何を話しているのかしら)
ユミが聞き耳をたてていると、会話が聞こえてきた。男がハルに笑いかけながら言った。
「ハル君、すまないが付き合ってくれないか?」
「え、私ですか?」
その言葉に、ユミは震えだした。
「付き合う? そんな軽い男と? 私たちがいるのに……」
すると、辺りは強風に包まれた。さすがにハルも気づいて辺りを見回した。
「一体何が起こってるの!」
「わぁぁぁ!」
ハルが男の方を見ると、風の刃が襲ってきていた。かろうじて当たってはいなかったが、男は走って逃げだした。
「あ、先輩!」
ハルは座席にしがみつきながら原因を探った。
(こんな力、自然現象なわけがない。もしかしたらアニマなの?)
ハルが風の中心を見ると、ユミを見つけた。
「ゆ、ユミちゃん?! どうしてここにいるの?」
「ハルさん、あの男は誰です! 私たちがそばにいるのにお付き合いをするなんて!」
ユミの叫びに応えるように風が強さを増した。
「ユミちゃん! それ以上力を使っちゃだめ! あなたの体がもたないわ」
「誰かにとられるくらいなら……」
ユミは泣きながら顔を手でおおった。ハルは、なんとかユミに近づき頬を叩いた。
「は、ハルさん……」
「いいかげんにしなさい! あなたがいなくなったら、悲しむ人がいるのを忘れないで!」
「う、うわああぁぁん!」
泣きじゃくるユミをハルは抱きしめた。すると、周りの風がやみ、二人が辺りを見回すと店内はぐしゃぐしゃだった。
「あなたたちは出入り禁止です!」
「「す、すみませんでした!」」
そう言うと、二人は慌てて店を飛び出した。
「ハルさん、ごめんなさい。私のせいでこんなことに……」
「気にしないで。ユミちゃんに何もなくてよかったよ」
「ハルさん……」
ユミはぱぁっと笑顔になり、ハルに抱き着いた。
「もうあんな男には渡しません!」
「あぁ……そのことなんだけどね。あれはバイトの買い出しを付き合ってくれってことだったのよ」
「え……」
すると、ユミは気まずそうにハルから離れた。
「じゃあ全部私の勘違いってことですか?」
「うーん、そうなるかな?」
「おーい、何してるんだ。早く帰ってこいよ!」
遠くでマサたちが手を振っているのを見たハルは、ユミに笑いかけた。
「まぁ、いいじゃない。早く帰ろう? ユミちゃん」
ハルの言葉に、ユミは顔を上げて笑った。
「はい!」
そして、二人は手をつないでマサたちの所に走っていった。




