よみがえり
ハルは走っていた。手には「よみがえり」が書いてあるレポートが入ってあるファイルを持って。
「これならまたあの子に会える……!」
ハルがずっと走っていると、前からレンが歩いてきた。
「おや、ハル。そんなに慌ててどうしたんだ?」
「あ、レンさん! すみませんが薫さんはどこですか?」
「彼女ならこの先の研究室にいるはずだよ」
「ありがとうございます!」
そう言ってハルはまた走り出した。それをレンは苦笑しながら見送った。
「こらこら、廊下は走るんじゃないよ! って言っても、もう聞こえていないか」
ハルはやっと薫のいる研究室に着いた。しかし、走りすぎたのかぜぇぜぇ言っていた。
「しまった……もう少し運動してればよかったな」
ハルが後悔していると、前の扉が開いた。
「あら、どうしたの? 顔真っ青じゃない!」
それから中に入って、ハルは薫からお茶をもらった。
「ふぅー……」
「ふふふ、少しは落ち着いた?」
「はい、ありがとうございます」
「でも、そんなに急いでどうしたの?」
薫が首を傾げていると、ハルが持っていたファイルを薫に見せる。
「さっきこれを読んだんですが……」
「あぁ、これはここに来てすぐの頃に書いたものね」
受け取った薫は、懐かしそうに目を細めた。
「そのよみがえりはある洞窟の中にあって、アニマたちの魂を守っていると聞いたから書いたのよ」
「聞いたって誰から?」
「レンからよ」
「その洞窟ってどこにあるんですか?」
「この研究所の裏よ」
「近っ!」
「だって言ったじゃない。ここに来てから書いたって」
「だからって裏にあるとは思いませんよ」
「ふふっ。まぁ、今区切りがついたし、案内するわ。皆を連れてきてちょうだい」
「わかりました!」
それからマサたちと合流して、研究所の裏にある山の中へ入っていった。そして少し行ったところに大きな洞窟があった。
「ここが例の洞窟よ」
「なんか嫌な気配がするな……」
マサが顔をしかめているのを、ハルは横目で見ていたが洞窟の方へ歩き出した。
「私たちも少し奥の方までは行けたのよ。でも、途中で大きな扉があって、全然動かなかった」
薫が歩きながら説明を始めた。
「だからそれ以上は調べられなかったの」
しばらく歩くと、その大きな扉が現れた。
「確かに大きい……」
「しかし、嫌な気配はここが一番強いな」
「あれ? ここ何かへこみがあるけど……」
それは指輪の形をしていた。薫がハルの指輪を指さした。
「これが入るんじゃない?」
そう言われて、ハルは指輪を外してへこみにはめてみた。すると、ギィーッと扉が開いた。
「やっぱりこの指輪がないとだめだったのね! さぁ、中に入りましょう!」
ハルとマサ、そしてユキが中に入ったが、薫とレンとイグが何かにはじかれて後ずさった。
「どうして私たちだけ、中に入れないの!」
「もしかしたら、その指輪の契約した者だけが入れるのかもしれないな」
「そんな……」
「大丈夫です、薫さん。後は私たちが中を見てきますから」
「うー……しかたないわね。よろしく頼むわ」
「はい!」
そしてハルたちは中へと消えていった。それからはずっと一本道が続いていた。
「なんか何もない所だね」
「でも油断はするなよ。嫌な気配がずっとつきまとってるみたいだ」
「さっきから言ってる気配って何……」
ハルが言い終わる前に、周りから黒い影が襲ってきた。
「きゃぁー、何これ!」
「サンダーボルト!」
マサが電撃を放ったが、すぐにまた影たちが集まってきた。
「これではキリがありませぬぞ! 火炎!」
ユキの炎が影たちを消し去っていく。しかし影は集まり続ける。
「どうしよう、これじゃ前に進めない……」
ハルが戸惑っていると、いきなり地面が崩れ始めた。
「えっ……」
「ハル!」
「ハル殿!」
そしてハルは下へと落ちていったのだった。
「そんな……」
ハルは落ちていく。それはもう慌てながら。
「きゃぁー! どうしよう落ちてる、落ちてる! 私こんなところで死ぬのは嫌よ! 助けて、マサ、ユキ、ユミちゃん……!」
そう言うと、誰かがハルの手を掴んだ。
「え……」
「ハルさん! なんであなたがここにいるんですか!」
「……ユミちゃん?」
ハルの手を掴んだのはユミだった。その姿は、前にあった大型アニマのものではなく、初対面で会った時の姿だった。
「よかった! また会えた!」
「よかったじゃありません! ここがどこだかわかっているんですか」
ユミは少し怒ったようにハルに言った。ハルはきょとんとした顔でユミを見た。
「ここは黄泉に通じるはざまですよ?」
「えっ! じゃあ私死んだの?」
「いいえ、ハルさんはまだ生きてます」
「誰だ……我の眠りを邪魔したのは……」
ハルたちが話していると、どこからか低い声が聞こえてきた。振り返ると、そこには巨大な鹿に白い大蛇を巻き付けた者が座っていた。




