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謎の生き物がいる

作者: 日野下幸


 女の子がいます。


 その女の子は四人家族で、父、母、兄、女の子。全員が自慢の家族。


 父は狩人で、家族にお肉を狩ってきてくれます。


 母は家族思いで、いつも女の子達の安全を第一に考えてくれます。


 兄も母に似て、家族を大切にしています。


 女の子は好奇心旺盛で、すこしばかり危なっかしく、いつも母と兄に怒られていました。


 ある日、日課である家族全員での散歩の途中、女の子は見たことのない謎の生き物を発見しました。


 女の子は家族全員に聞きました。「あの生き物は何?」


 父は答えます。「わからない。だが、近付いただけで逃げるか弱い生き物だ」


 母は答えます。「わからないわ。たぶん、昔私に食べ物をくれたから、きっと優しい生き物よ」


 兄は答えます。「わからない。けど、なんとなく危険な気がする。謎の多い生き物だよ」


 女の子はますますその生き物に興味を惹かれます。


 (あの生き物達はなにを考えているんだろう?)


 女の子は謎の生き物に興味を持ちました。


 しかし、何度近づいてもそれはすぐに逃げてしまうのでした。


 そんなある日、いつものように近づいても逃げないものがいました。


 女の子が話しかけます。「こんにちは」


 生き物は答えません。


 あちらにはこちらの言葉がわからないようでした。


 ただ、ひどく怯えた様子です。


 女の子はその生き物をこれ以上怖がらせないよう、すっとさっていきました。


 父の言葉は正しかったのです。


 またある日、生き物は食べ物をくれました。


 女の子が見たことのない食べ物でしたがとても美味しかったのです。


 母の言葉は正しかったのです。


 そしてその日は訪れました。


 謎の生き物が遠くに二匹いました。


 女の子は生き物達に近づくと鳴き声のようなものを聞き取りました。


 それは警告のようです。


 しかし、女の子にはその生き物が脅威には写らないのです。


 あのひ弱そうな体で何が出来るというの?


 女の子は近づきました。自分が脅威ではないと教えるために。


 自分たちは友達になれることを伝えるために。


 近づいて、殺されました。


 女の子以外の家族全員が。


 大きな音がしました。初めて聞いた音です。空気を押し切るようなまさしく轟音と言ったような音が周囲に鳴り響きました。


 最初は父でした。それは父を捕らえ一瞬にしてただの肉塊にしてしまいました。


 次は母でした。家族を守ろため勇敢に立ち向かい、眠ってしまいました。


 兄も女の子を守り、動かなくなりました。


 兄の言うことは正しかったのです。


 女の子は震えていました。


 ただ、震えていました。


$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$


 草原を走るトラックに二人の男が乗っていました。


「それで、こいつどうします?とりあえずおりに閉じ込めましたけど、先輩、こいつを飼ったりするんですか」


「いや、そいつはサーカス団に売っちまおう。メスだがまだ幼い。芸を覚えさせるのに好都合だろう」


「うっす」


「そういや、この前写真家がライオンを撮ろうとやってきただろう?そいつ、いざライオンの群れにあったら腰を抜かいしちまって、すっかり動けなくなっちまったらしいぜ」


「へぇ、そいつはご愁傷様」


「ばか。死んだのならこの話が伝わるわけないだろ。どうにも見逃してもらったらしい」


「珍しいこともあるもんですねぇ。そういや、近頃野生動物に食い物をやるあの集団ぱったり消えちまいましたね。あいつら何を考えていたですかね」


「さあな。同じ人間であってもあいつらの行動は謎だよ。俺たちは金のためって明確な理由があるのにな」


「そりゃあそうですね。この仕事が高給取りでなかったら今頃やめてますよ」


「ああ、人間はみな自分のために動いてる。にもかかわらず、一人は腰を抜かして、一人はエサをやって、俺たちは家族を殺して、ライオンからみりゃ人間はずいぶん不思議な生き物だろうな」


「違いありませんね。動物はいつだって人間に振り回される。地球温暖化にしたって外来種にしたって」


「それを密猟者の俺たちが言ったらおしまいだろ」


「そりゃそうだ」


 ぎゃははは。と二人は笑いました。

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