4-10.海の街(再)
夏が近付いて昼間の日差しに暑さを感じるようになって来た。
ヴァルドと訪れた岩ばかりの乾燥地で世界樹の枝を地に刺した。
小さな枝はざわざわと揺れると瞬く間に3m近い木へと成長する。
植物の成長動画を高速再生したみたいだ。
「2度目だけど不思議な光景だわ。この木から枝って持って行けないの?」
「分身の枝にそこまでの神力はないな。一箇所を修繕するだけで終わりだ」
世界樹は三百年前に聖人と呼ばれた人が創造神から「これで世界の修繕よろしくね」と授けられたらしい。
まぁもうちょっと言い方は威厳あったと思うけど。
他の大陸にも存在するのかも知れないけどヴァルドも別の大陸までは行ったことがないので知らないそうだ。
「じゃあ戻ろうか」
この辺りは魔素が濃い為ルッカとヤマトは気分が悪くなるので離れた場所で待機中だ。
私がヴァルドと行ってくると言うとルッカは不満そうだったけど。
ちょっと過保護だよねぇ。
ここから少し離れた場所には海辺の大きい街がある。
私にはこの後やりたいことがあった。
「今日は別行動しよう!」
海の街カンパナに着くと私はヤマトとルッカに熱意を持って提案した。
急な話に2人が戸惑っている。
「……なんで?」
「ヴァルドと……いや、ちょっと女性だけで行きたい所があるんだ。だから後から宿で集合しよう!」
「何処行くの?」
「内緒だよ!女子会したいの!」
とても不服そうなルッカにも負けずに笑顔で言い続け、夕方に宿で集合という約束を押し通した。
「ミオリは何がしたいんだ?」
ルッカ達を置き去り……否、別行動を勝ち取った私にヴァルドは楽しそうに付いて来ながら尋ねる。
そうだね、ヴァルドには説明しないとね。
「私、海産物が食べたいの」
せっかくの海辺だし、海の幸がいっぱい食べたい。
タコもイカも海老も貝類も全部食べたいんだ!
「それが別行動する理由なのか?」
「そうだよ。ルッカ海の生き物が大体苦手なんだ」
森の人だからね。前に一度海辺の街に行った時は魚しか食べなかったし、海の食材には見た目でドン引きしていた。
あの目をしたルッカの前で海鮮食べまくりは出来ないわ。
好きな人にゲテモノ食う奴みたいに見られたくないよね。
「そんなことだったか」
あちこちに出ている屋台に目を輝かせる私をヴァルドが可笑しそうに見ている。
「まずはイカとタコから!」
香ばしく焼かれたイカとタコの串を2本ずつ購入してヴァルドと食べた。
甘辛いタレと弾力のあるぷりっとした身が美味しい。
「おっちゃん美味しい!」
「そりゃ良かった。噛んでも噛んでも飲み込めないって苦手な奴もいるみたいだからなぁ」
食べ慣れてないとそうなのかな?
ヴァルドを見ると平気そうに食べてるけど、ヴァルドは人じゃないから参考にはならないか。
「なかなか美味いな」
「だよね!良かった。次は何にしようか」
海老の塩焼きを食べ、貝類の網焼きを食べ、魚と魚卵の煮付けを食べた。シメに海老が沢山入ったラーメンのような物も食べた。
「お腹いっぱいだわ。凄い満足!」
「それは良かったな」
海の幸を心行くまで食べて満足した私は元気いっぱい宿に向かい始めた。
食べ過ぎたし晩ご飯はいらないな。
私に付き合って一緒に食べてくれていたけど、ヴァルドには少ないよねきっと。
「また夜に狩りに行くの?」
「そうだな。海の物も美味かったが肉が食いたいな」
そんな会話をしながら待ち合わせの宿前まで来ると、ルッカとヤマトが先に来ていた。
ヤマトが恨めしそうな目で私を見る。
「ミオリが別行動しようって言った理由何となくわかったぞ」
「……どうかしたの?」
「海老食ったらすげぇ目で見られた」
吹き出してしまった。それは食べ辛かっただろうな。
「俺も色々食いたいからヴァルド一緒に来ない?」
「構わんぞ」
ヤマトがヴァルドと一緒に食べ歩きに出掛けて行った。ヴァルドは2周目だけど余裕だろうな。
「何か食べて来たの?それが別行動したかった理由?」
「黙秘させてくれるかな」
ルッカから思わず目を逸らす。
幼虫いっぱい食べて来たってルッカに言われたら私もちょっと辛いものがあるし……。
「何食べたのか気になるけど、今日同じ部屋にしてくれるなら聞かないよ」
そう言って微笑むルッカは妖しい魅力が溢れている。
どうやったらそんな色気が出せるのか。
「……いいけど手加減してね」
間隔を開けるようになってから家にいた時より情熱的になったので私の体力が保たなかったりするのだ。
「もちろん」
にっこり笑うルッカがちょっと信用出来ない。
他のことで嘘は付かないけど営み関係だと普通に嘘言うからなぁ……。
海辺の街の再挑戦は成功したし、今日は美味しい物いっぱい食べて楽しかったな。
まだ終わってないけども。
今からは夫婦の時間だね。




