小話 幻を見せる鳥
雨上がりの午後、私達は山の中にいた。
雨のせいで立ち寄った村で、魔物を退治して欲しいと声を掛けられたのだ。
山に幻鳥が住み着いてしまい困っているらしい。
ギルドに依頼は出しているものの、ど田舎&依頼料が安いので半年近くそのままになっていたそうだ。
幻鳥とはそのまま幻を見せてくる鳥の魔物だ。
狩人などの山に入る人を幻で惑わし迷わせるので大変迷惑な存在だとか。
直接攻撃はして来なくとも遭難させられると命が危ない。
退治して欲しい気持ちは理解出来る。
木が密集していてまだ日が落ちる前だというのに山道は薄暗く、雨上がりの濡れた地面からは霧が上がり始めている。
「霧が出て来たね。危ないかな」
「濃くなって来るようなら止まろうか」
そんな会話をしていた矢先、ギィッ!という鳥の鳴き声が響いた。
瞬く間に視界が霧で真っ白になり、他の3人の姿が見えなくなった。
自分の手ですら腕を伸ばすと見えなくなるような白さだ。
……これは何かおかしい。幻術かな。
すぐ近くにいた仲間が突然見えなくなり声も聞こえないって自然現象では無さそうだ。
幻鳥が見せる幻は幻術にかけられる人の欲望が反映されるらしい。
美しい女性だったり、死に別れた家族だったり、眩い財宝だったりと人により様々だという。
……何が出て来るんだろう。
あっちの世界の家族だったら泣いてしまうかも知れない。
緊張で動悸を感じていると、白い空間からとても小さな人が現れた。
淡い金色の髪、青紫の目をした1〜2歳くらいの子供だった。
服がとてもシンプルなので男の子か女の子かわからないけど、めちゃくちゃ可愛い。
小さな手で私の服の裾を掴むとにこりと笑った。
「ママ」
………えええ!私の欲望ってこれ!?
いや可愛いけど!ルッカにそっくりで可愛いけども!
思ってた感じと違って自分でも驚いてしまうわ。
私はその小さな子を抱き上げた。
幻だからか凄く軽い。
ヤバいな。幻でも凄く愛しいわ。
抱き上げられて笑う子供を抱き締めた。
……いつか本当にあなたに会えたらいいな。
ドラゴンの咆哮がして、急に視界が晴れた。
ーーー大丈夫か?
ヴァルドはドラゴンの姿になっていて、その足元に鷲に似た鳥が落ちている。
ルッカもヤマトも霧が出る前のまま近い場所にいた。
「……平気。ほんの少し幻を見てたけど」
ルッカもヤマトも少し痛そうな顔をしている。
私と同じように何かを見たのかも知れない。
「幻術なめてたわ……ヴァルドがいなかったら危なかったね」
幻を見ながら居場所のわからない鳥を探さないといけないところだった。
「鳥が使える幻術なぞ半刻も保たぬから動かずじっと待っていれば消えるし、その時に矢か魔法で攻撃すればいいんだがな」
それまでに幻でメンタルやられそうだけどね。
「ミオリは何を見たの?」
ルッカが隣に立って私に尋ねる。
ルッカは亡くなった祖父母に少しだけ会ったらしい。
私の場合ちょっと恥ずかしいけどルッカになら言ってもいいかな。
ちょっと屈んで貰って耳元でこそっと言った。
「ルッカによく似た小さな子供をみたよ」
ルッカはびっくりした顔で私を見てから数秒後に嬉しそうに笑った。
「いつか本当になるといいよね」
「そうだね」
願わくばあの子のように大部分がルッカ成分だといいなぁと思ってしまった。
私の普通成分は少なめで良いな。




