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4-9.熱

ヤマトが熱を出した。

医師に診て貰ったところ、私は前にかかったことのある病気だった。

2、3日はしんどいだろうな。

昼前になると私はルッカ達の部屋の扉を叩いた。


「ヤマトどう?」


「まだ辛そうだね」


ルッカが扉を開けて中に入れてくれた。


「ご飯食べられるかな?」


「どうだろ。本人に聞かないとわからないな」


手にしたトレーにはお粥が乗っている。

宿の女将さんに頼んで厨房を少し使わせて貰った。

ベッドではヤマトが目を開けてぼうっとした表情でこちらを見ている。


「ごめん起こしたかな。大丈夫?」


「……怠い。うつったら悪いから近寄らない方がいいぞ」


「それは大丈夫。前に罹ったことあるから」


何度も罹るような病気ではないらしい。


「そっか……」


「ご飯食べられそう?お粥食べる?」


「……ミオリが作ったのか?」


「うん。ネギと卵と塩くらいしか入れてないけど」


「食べる……」


ヤマトが起き上がったのでベッド脇の小さな机にトレーを置いた。


「……長粒米の粥初めて食うわ」


「日本米ないもん。煮込んだら一緒だよ」


お米の種類が違うけどお粥にしてしまえば大差ないよね。たぶん。


「普通に美味いよ」


「それは良かった」


ぱくぱくとお粥を食べるヤマトにほっとした。

食欲あるなら治るのも早いかな。


「また後からお皿取りに来るよ」


「どっか行くの?飯?」


「ううん、もう済ませた。あんま部屋に人いると落ち着かないでしょ?ゆっくりしてね」


立ち上がりかけた私の手をヤマトが掴む。


「ここにいて」


熱を出している手が熱い。

視線も熱を帯びているような気がした。


「……わかった。よし、食べたら休もうね!」


内心の驚きを隠す為に空いている方の手でヤマトの髪をくしゃくしゃに撫でる。


「……犬かよ。やめて」


不服そうに呟いた後、照れたように少し笑った。

食事を終えたヤマトが再び眠るまで見守ってから、握られたままの手をそっと外した。


「ミオリはヤマトに甘過ぎない?」


2人で部屋を出るとルッカが拗ねたような顔をした。


「そう?」


「頭撫でてたし……」


「ルッカも撫でる?」


「俺はこっちの方がいい」


微笑んで両手を広げるので素直にその中に入った。

廊下だからね、少しの間ハグをしてから離して貰った。


「やっとわかった?」


「……うん。びっくりした」


流石にあの態度で気付かないほど鈍くはないなぁ。

ルッカは前から知ってたんだね。


「仲間意識が強くなり過ぎたのかと。あと熱出してるし気の迷いなんじゃないかなぁ?」


「その解釈はヤマトが気の毒だと思うけど……」


「他に親しい女子がいないせいもあるんじゃない?」


「それは……あるかも知れないけど。でも好きな人にそう思われるの俺だったらイヤだなぁ」


そうか……うん、そうね。

でも次からどんな顔して会えばいいのかな。


「何も言われてないし普段通りでいいんじゃない?」


私の表情を読んだのかルッカがさらりと言う。


「……知らないことにしていいかな?」


「いいと思うよ。言いたくなったら本人が言うだろうし」


確かに自分だったら何も望んでないのに急に避けられたりしたら辛いな。


「……うん。普通にしとく」


「撫でるのはやめてね」


そう言った顔は笑ってるけど若干の圧を感じるわ。


「わかった」


ノータッチの精神ですね。気を付けます。

友達だもん。そんな触ることもないけどね。



◇◇



熱に浮かされて理性が飛んでいたような気がする……。


一眠りして起きて水を飲むと、寝る前の出来事を思い出して羞恥と後悔が押し寄せて来た。

「ここにいて」とか手を握って離さなかったりとか色々やらかした。


どうせなら記憶も飛んで欲しかった……。

ミオリはどう思ったんだろう。

熱で頭やられてたと思ってくれるだろうか。


鍵が開く音がしてルッカさんが部屋に入って来た。

皿が無くなってるから片付けてくれたのかな。


「起きた?ちょっと話があるけど」


ヤバい。笑ってるけど目が凄い怖い。


「今回は熱のせいってことにして許すけど次はないから」


「……はい」


すいませんでした。

俺の嫁触んな横恋慕野郎ってことですね……。

溜め息を吐いて再び寝転がった。


「……どうしたら吹っ切れるのか分からなくなってて」


呟いてから言う相手を間違えたと思った。まだ判断力が鈍ってんな。


「言って玉砕してみる?」


余裕の笑みが腹立つけど、玉砕するのはわかりきってるもんな。


「それも有りかもなぁ……」


「あと他の女性ともっと話した方がいいと思うよ」


他の女子は緊張するんだよなぁ……。


「他の人見ようとしないからミオリ以外に目が行かないんだよ」


……ごもっともで。なんか心痛くなって来た。


「ルッカさんは失恋とか経験ある?」


俺、小学生の時しかないんだよなぁ。

やんわり好きになって、卒業したら忘れた程度の恋だった。

その次が人妻って辛い。


「ない。13でミオリに出会ってるし、ミオリが最初で最後の相手」


「……いいなぁ」


叶わない場合は痛いだけだし。こんな経験なくていいわ。


「越えたら俺にない経験してるし実る恋出来るんじゃない?たぶん」


たぶんかよ。まぁいいけど。


「ミオリも心配してるし寝て体調戻してね」


「りょーかい」


とりあえず熱下げて思考力を戻すのが優先だな。

後のことはまた後日考えよう。


寝て食べてを繰り返して2日で体調を戻すことに成功した。


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