小話 ワイン
広大な葡萄畑を有するその街は、見た目の通りワイン造りが盛んに行われているらしい。
「飲んでみよっか」
適当に入ったレストランでワインを勧められて私は言った。
今年で20だしね。
そもそもこっちってアルコールに特に年齢制限ないけども。
流石に小さな子供には飲ませないようだけど、10代後半くらいになると食事の時にワインを飲んでいる人は多い。
「ミオリ飲めんの?」
「ちゃんと飲んだことないからわからない。母がザルで父がカシスオレンジで真っ赤になるタイプなんだ」
「どっちに体質似てるかで大きく変わるなそれ」
懐石料理の食前酒をちょっと貰ったことがあるという程度しかお酒は飲んだことがない。
「ヤマトは?」
「俺もわからん。親はどっちもそこそこ飲むタイプだったと思うけど」
「ルッカは普通に飲めそうだよね」
確かモンゴロイド以外の人種ってアルコール弱い人っていないんだっけ。
「みんな飲めるものなんじゃないの?」
ルッカが不思議そうに言う。
「俺らみたいな人種は酒弱い奴とか全く飲めないやつもいるんだよ」
「飲めないって?」
「あー……酒飲むと倒れたり下手すると死にかけたりする体質の奴が少数だけどいるんだ」
ヤマトの説明を聞いてルッカが心配そうな顔になる。
「……ミオリ飲まない方がいいんじゃない?」
「たぶん大丈夫だよ。ちょっとなら飲んだことあるから」
笑って返すと安心したように微笑んだ。
「てか結婚式で飲まなかったのか?」
「親達は飲んでたけどね。俺達は引っ越し作業が残ってたから」
ヤマトの問いにルッカが返事をする。
「よし、料理に合うやつ頼んでみよう」
「ヴァルドなら樽でいけそうだよな」
確かに……だってドラゴンだし。
今は狩りに行ったので不在だけど、人型でどこまで飲み食い出来るのか見てみたいような気もする。
「思ったより美味しいね」
赤はちょっと酸味もあるけど濃くて香りが華やかだ。
ルッカに少し貰った白は爽やかに甘くて飲みやすい。
これはみんなが料理を食べながら飲んでた理由がわかったかも知れない。
結局赤も白も飲んでしまったけど、少し体温が上がった程度で大した動悸もない。母に似たかな?
ヤマトは2杯目を飲み終えると顔が赤くなっていた。
「ちょっと回って来たかも」
「ふふふ。可愛いね」
赤いヤマトがなんか可愛い。
「……やめて」
ヤマトが気まずそうに目を逸らす。
「ミオリ?」
ルッカが笑顔で私を呼ぶけど目が笑ってない。
これは怒ってる時の顔だわ。
ヤキモチかな?可愛いな。
「ルッカが一番可愛いよ」
だから怒らないでね。
「……どういう意味かな」
空になったお皿を下げに来てくれたホールスタッフの女性が可愛い。
「ありがとう。可愛いね、お仕事頑張ってね」
女性がウインクをくれた。かーわいい。
ふわふわとした気分で美味しいワインを口にする。
「わかりにくいけど酔ってるよなミオリ……」
「ミオリそれ置いて水に変えようか」
「まだ全然大丈夫だよ」
「たぶん大丈夫じゃねぇよ」
ヤマトが呆れたように言い、ルッカに手のワインを取られた。不満だわ。
「戻ったぞ。どうした?」
あぁ、ヴァルドが帰って来た。
お肉は食べて来れたのかな。
「お帰りヴァルド、いつも凄い可愛いね。大好き」
ヴァルドに抱き付くと可笑しそうに私を撫でる。
「ミオリが面白いことになってるな。酒か?」
「ワイン3杯でこうなってしまって。誰彼構わず可愛い可愛い言ってるよ」
ルッカがヴァルドに説明する。
「楽しそうでいいんじゃないか。害はないだろう」
「そうよね?可愛いって言っただけなのにワイン取られたの」
「酔ってるからだよ」
「ヤマトとルッカとあの人にしか言ってない。あとヴァルド」
「ヤマトに言うのは問題だよ……」
ルッカが困ったような顔をしている。可愛いな。
お酒ってちょっと気分が高揚するかも。
「ルッカ可愛いね」
「わかったから水飲みなさい」
「ヤマトも可愛いね」
『やめて』
ヤマトとルッカが声を揃える。
「ミオリの酔い方は可愛いな」
ヴァルドが可愛いって言ってくれた。嬉しいな。
「ふふふ。大好き」
「ヴァルドにだけ愛情過多じゃない?」
「ルッカも大好きだよ」
「……俺も好き」
笑い合う私達にヤマトが半眼になっている。
「2人の時にやってくれないか……」
「ヤマトも友達として好きだよ」
「……心痛くなるからやめて」
「いい奴なのになぁ……絶対可愛い子が好きになってくれると思うのに」
「何だこれ色んな角度からえぐって来るぞ……」
私達のやり取りをヴァルドが笑って聞いている。
大好きなみんなと美味しい物食べて飲めるって幸せだな。
ふわふわした気分の楽しい夜だった。
後日からお酒は一杯までにしなさいとおかわり禁止にされた。
ナゼなのか。




