4-5.ヒーロー
ラッシュと出会って5日目の夕方、私達は獣人の集落へ到着した。
森の人の集落と大きさはそれほど変わらないけど雰囲気は全然違って見える。
まず褐色肌の人の割合が多く、みんな獣人だから狼の耳と尻尾が生えている。
服装はカラフルなラインが入ったポンチョに男性はズボン、女性はロングスカートが主流だ。
子供の可愛さがヤバいし男性のイケメン率も高い。
ワイルド系だわ素敵だわと目で追っていると冷たい目をしたルッカと目が合った。ごめんなさい。
違うのこれは浮気心ではなくアイドルを見るような気持ちでして……。
「ラッシュのお爺ちゃんがいるのはこの集落?」
「うん。2年くらい前に来て以来だけど」
外から人が来るのが珍しいのだろう。集落の人々が私達を見て不思議そうな顔をしていた。
ラッシュに案内されて歩いていると、民家前の畑にいた男性を見つけたラッシュが嬉しそうな声を上げた。
「爺ちゃん!」
草を抜いていた50代くらいの男性が驚いた様子で顔を上げ、ラッシュを見て破顔した。
「ラッシュ!ラッシュじゃないか!」
ラッシュが駆け出して行き、手を広げた男性に飛び付いた。
「久しぶりだなぁ!大きくなったな。どうしたんだ?あの人達は一体……父ちゃんは一緒じゃないのか?」
男性にしがみ付いたままラッシュが声を上げて泣き出した。
わぁわぁと泣くラッシュを抱き締める男性が何かを悟ったような表情になる。
泣くことが出来る場所に来られたんだな……良かった。
ラッシュが落ち着くまで離れた場所で見守った。
◇◇
「ラッシュがお世話になりました。本当にありがとうございます」
家の中に案内された私達はラッシュの祖父のブレントさんにこれまでの経緯を説明した。
奥さんのエダさんが香ばしい香りのするお茶を出してくれた。
ラッシュは泣き疲れて眠っている。旅の緊張や疲れもあったと思う。
お茶を飲んだら辞去しようとするとブレントさん達に強く引き止められてしまった。
「狭い家ですが孫の恩人に一泊して頂く余裕はあります。別れも言えないのはラッシュも辛いと思いますので今晩だけでも」
そう言われてみんなと顔を見合わせる。
「ではお言葉に甘えて一泊だけ……」
ルッカが代表して応えるとヴァルドが立ち上がった。
「よし、今晩の夕食に何か狩って来てやる」
「いえ、お疲れでしょうしゆっくりして頂ければ……」
「問題ない。待っていろ」
何を取って来るつもりなんだろうな。
暫くすると立派な鹿を担いで帰ってきたのでブレントさん達がとても驚いていた。
鹿を近所の人にも配ると果物や野菜を頂いたので、夕食は潰したお芋と野菜汁と厚切り鹿肉ステーキと果物という豪華なものになった。
エダさん達に優しく世話をされているラッシュを見ていると来て良かったなぁと心から思えた夜だった。
翌朝になりお別れの時が来た。
家の前で挨拶をする私達をラッシュが耳をペタンとしょげさせて見ている。
目に涙を溜めたラッシュがヴァルドに抱き付いた。
「ありがとうっ……!」
「達者で暮らせ」
涙声でお礼を言うラッシュの頭をヴァルドが撫でる。
「元気でね」
「ミオリもありがとうっ……」
私が声を掛けると私にも抱き付いてくれた。
可愛いなぁ。寂しいわ。
「元気でな」
「爺ちゃん達の手伝いしろよ」
ルッカとヤマトにもラッシュは抱き付いてお礼を言った。
ブレントさんエダさんラッシュに見送られて私達は獣人の村を出発した。
ヴァルドの上が少し広くなった。
ほんの数日一緒に過ごしただけなのに寂しく感じる。
「寂しいなぁ。可愛いかったね」
「そうだね」
「爺ちゃん達いて良かったよなぁ」
本当にね。私達が連れ歩くより仲間の中で育っていける方がいいよね。
「ラッシュを酷い目に遭わせた貴族が何もお咎めなしなのはちょっと納得いかないけど。また被害者が出ないと限らないし……」
ーーー大丈夫だ。屋敷を半壊させておいたからな。下位貴族ならばもう里親になる余裕はあるまい。
私の言葉にヴァルドが飛びながら返事をした。
「えっいつの間に!?」
ーーーミオリ達が隣町にいた時だな。人には手を出しておらんから安心しろ。
「……本当いい仕事するね!最高!」
ーーーそうだろう。
助けて家に送って悪者はやっつけるって、スーパーヒーローみたいでかっこいいわ。
現場見たかったけど人が乗ってない方が動きやすいだろうし仕方ないか。
気持ちの良い風を受けて、ヴァルドを称えながらいつものメンバーで再び南へ移動を開始した。




