別視点 ヤマト3
ガッ!!
俺の振った一撃が、初めてミオリの手から得物を弾いた。
お互い一瞬呆然となり、次の瞬間に喜びが湧いた。
「やった……!」
秋から始めて何十回負けたんだろう。いや下手すると百回超えてたか?
その相手に初めて勝てたのはまぐれでも物凄く嬉しい。
呆然としていたミオリの顔が、急に泣きそうな顔になったかと思うと俺に背を向けて走り去ってしまった。
「え……」
ルッカさんがその後を追いかけて行く。
俺は驚いて動けなくなっていた。
……笑ってくれると思ってた。
強くなったね、ヤマト凄いねっていつもみたいに。
一瞬のあの表情が心に焼き付いて胸がぎゅっと痛くなった。
あんな顔をさせたかったわけじゃないのに。
「……勝てるとこが他に無いって言ってたよ」
俺達を見学していたラッシュが宿での話を教えてくれた。
「……」
嘘だろ?俺そんなに凄い奴じゃ無いんだけど……。
出会った時からずっと情け無いとこばっか見せてた気がするのにミオリの中ではそんな評価なの?
嬉しいんだけど過大評価が過ぎると思う。
「人の良い部分しか見てなさそうだよね」
出会ってまだ3日目のラッシュにも言われてるぞミオリ……。
ミオリにだって俺にない凄いとこいっぱいあるのに。
分け隔てや打算なく他人に優しいのはミオリの美点だし、何より俺はあんなに素直に他人を褒められない。
ミオリは自己評価が低いんだな……。
あんなイケメン捕まえといて大した魅力ないと思ってんの?嘘だろ?
追いかけて捕まえて俺がなんでこんな頑張って来たか言いたくなる。
ミオリが好きだから負けてんのがイヤだったんだけど!
「……あぁもう」
しゃがみこんで溜め息を吐いた。
けど追いかけるのも慰めるのも俺の役目じゃないんだよなぁ……。
暫くしてルッカさんに連れられてミオリが戻って来た。
明らかに泣いた後のような顔になっている……辛い。
「……ヤマトが頑張って来た結果なのに……逃げてごめんね」
言いながらまた目がちょっと潤んでいる。
「いや、ミオリが頑張ってたのも知ってるし……」
今めちゃくちゃ抱き締めたいけど後ろでルッカさんが睨んでるから駄目だよな。
わかってますよ……友達、俺は友達。
自分にそう言い聞かせながらミオリの謝罪を聞いていた。
初めての勝利は何とも言えない苦い味がした。




