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小話 負けず嫌い

「ラッシュは私達と同じ部屋においでよ」


『えっ』


道中の宿で、いつものように2人部屋を2つ取った私がそう言うと何故か微妙な空気になった。


「ラッシュ男の子だけど……」


ルッカが遠慮がちに言う。

ラッシュ本人も何とも言えない顔をしている。


「知ってるけど子供だし」


「ミオリかヴァルドと同じベッド使うってこと?」


「それでもいいけどラッシュが気を使うでしょ。私とヴァルドが一緒に寝てラッシュはベッド1人で使ったらいいよ」


「そういうことね」


「ルッカかヤマトと寝るのは狭いだろうし」


ルッカとヤマトが一緒に寝るのはもっと狭いだろうしね。

でも想像したら面白いな。

笑いそうになってルッカ達を見ると2人が嫌そうな顔をした。

……考えてることがバレるのは何故なんだろう。

私そんなに顔に出る?表情筋を鍛える必要があるかな。


部屋を増やすのも有りかも知れないけど無駄なお金は使わないに越した事はないよね。


「これはこれで面白いな」


部屋に入り一緒にベッドに座るとヴァルドが言った。


「オレのせいで狭くてごめん……」


「そんな狭くないから気にしなくていいよ。私もヴァルドも寝相いいし」


「そうだぞ。気になるならばそっちで寝てやろうか?」


ヴァルドの言葉にラッシュが慌てて首を振る。

10歳とはいえ男の子だもんね。親でも姉でもない人と同じベッドは抵抗あるよね。


「ご飯まで好きに過ごしてていいよ。ルッカ達の部屋に行ってもいいけど、外に行くなら声掛けてね。暗くなると危ないから」


ヴァルドが狩りをして来ると出掛けて行き、私は上着を脱ぐと床に手をついて腕立て伏せを始めた。

ラッシュがその様子を不思議そうに見ている。


「……何してんの?」


「筋トレ……身体鍛えてるの。ヤマトに負けたくないから」


ヤマトと打ち合いで勝負していることを説明する。

絶対ヤマトも筋トレやってると思うんだよね。


「ミオリは女だしヤマトより弱くてもいいんじゃないの?」


「男女の問題ではなく先輩としての意地が……というか魔法も使えるくせに剣まで勝ちたいとか狡くない?イヤなんだけど」


「狡いかなぁ……勝ちたい気持ちわかるけど」


「狡いよ。絶対負けたくないわ」


「変なの」


あ、笑った。

笑い事ではないんだけどね、笑顔が可愛いからまぁいいや。


「ちょっとあっち行って来る」


行ってらっしゃい。


腕立て伏せを限界までやって腹筋をしているとラッシュが戻って来た。

まだ床にいる私を見て可笑しそうに笑う。


「……ヤマトもやってた」


やっぱりね。


「1年も経たずに負けたら4年目の私は情けなくて泣くわ」


「ヤマトは体格も力も上なのに負けてるのがかっこ悪いって」


「……一個くらい私が勝ってる部分置いといてくれたっていいのにね」


頭いいし魔法あるし絵も上手いし歌も上手いのよ奴は。あと性格も良い。

私が勝てるとこ剣しか残って無いのに。


……更に負かそうだなんて腹が立つわ!


そう話すとラッシュが困ったような顔をしていた。


「そんな風に思われてること知らないと思うけど……」


絶対負けてなるものか!うおー!!


意地になって筋トレを続けた結果、夕食時に腕とお腹と足がプルプルして食べ辛かった。

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