小話 歌
「ミオリが時々歌っているその歌を聴かせてくれないか」
ある日の昼間、綺麗な湖畔で昼食の準備をしていた私にヴァルドが言った。
まぁ準備といってもハムとトマトとチーズ切ってパンに挟むだけなんだけど。
……今つい歌ってた鼻歌のことかな?
「歌詞とかそんなに覚えてないんだけど……」
「構わないぞ」
いや私が恥ずかしいから構うんだけど……。
ルッカとヤマトまで何か期待するような目でこちらを見ている。
いや、娯楽が少ない旅路だからって私の歌ではそんな楽しくはならないよ。
けどヴァルドのお願いって出来るだけ叶えてあげたくなるんだよねぇ……。
「ヤマトはこの歌知ってるよね?」
「まぁちょっとは……」
「輪唱のとこよろしく!」
「えっ」
ええい!旅の恥は掻き捨てよね!
一緒にいるの夫と友達だから全然掻き捨てにならないけど!
覚えている一番だけ歌って、ラストの部分とくっつけてしまえ。
ブルーが美しい湖のほとりで雪がまだ残る山々を眺めながら、元の世界で数年前に流行った歌を歌い始めた。
ヴァルドは楽しそうな顔で聴いてくれている。
サビを歌ってからヤマトの顔を見る。
……凄いイヤそうな顔してるから面白いわ。
私だけ歌の披露とか恥ずかしいことしてるのだから巻き込ませて貰うわ。
この歌は男女で輪唱する部分があるのだ。
その部分を歌い始めると観念したようにヤマトが私に続いて歌い出した。
……結構上手いじゃないか。
ちゃんと輪唱から2人で声を揃えるところまで歌い上げてくれた。ブラボー。
続きを私が歌い終わるとヴァルドとルッカが手を叩いてくれた。
「良い歌だな。特に2人で歌う部分が良かった」
お粗末様でした。
「ヤマト歌上手いね」
「そうか?ミオリはこの歌流行った頃くらいにこっち来たんだっけ」
「うん。だからこれより後の歌知らないんだ。相変わらず売れてる?」
「売れてたなぁ。バカ売れだな」
そうか。まぁ前から人気あったもんね。
「ルッカもいい歌声なんだよ」
「ミオリやめよう」
「普段の声からも想像付くけどな」
「ルッカも一緒に歌おうよ」
「ちょっ……!」
巻き込み2人目を確保して、私はヴァルドに今度は森の人のお祭りの歌を歌った。
ルッカもちゃんと参加してくれたので、歌いながら笑い合う。
アカペラで歌うって恥ずかしいけど他に人いないし結構楽しかったな。
「なかなか楽しく聴かせて貰った。良かったらまた聴かせてくれ」
ヴァルドにも満足して貰えたみたいだ。
歌が好きなのかな。
それなら今度は村の子供達が歌えるドラゴンの歌を作って更に仲良くするきっかけ作りにしようかな。
そんな計画案をルッカとヤマトにこそっと伝えると2人は揃って困った顔をした。
「俺曲は作れないよ」
「いいのいいの。メロディーはあっちの歌を模倣すればいいんだよ」
またの名をパクりという。
「お前……その考え方は全ての作曲家に謝罪するべきだぞ」
「バレないから大丈夫」
「良心ないのかよ……」
ヤマトが呆れた顔をする。
駄目かな?いい案だと思ったんだけど。
まぁヤマトは反対みたいだし歌作りはまた今度にしようかな。
何の歌かわかった人〜(・∀・)ノ




