7.森の事情
ここで少しこちらの世界の説明をしたいと思う。
私が今いる場所はモーロ大陸にあるウォルズ王国という国らしい。
モーロ大陸には5つの国を跨ぐ広大な森があり、エルフやドワーフや獣人といった亜人種の多くがその森に集落を設けている。
人族は500程前に他所の大陸からやって来たという。
そしてルッカ達は亜人種側に分類されるそうだ。
……だよね。こんなに綺麗な人ばかりの村、普通あり得ないと思う。
こちらの世界の人達が全員美形ではないとわかって安心した。人族の街に行けば私のようなモブ顔もたくさんいることだろう。
うむ、モブはたくさんいてこそモブなんだ。
脱線したわ。話を戻そう。
種族名は森の人って意味のシルウァポポ。
耳尖ってないけどエルフの親戚なんだって。
ここラスタナ村の他にも森にいくつか集落があるらしい。
エルフと違い寿命は人族とあまり変わらないが強い魔力と強靭な肉体を持つそうだ。
森はウォルズ王国では『起源の森』と呼ばれている。
現在では先代の王により森の保護法と平和協定が結ばれて随分と平和になったが、それ以前の人族と亜人種の関係は悪かった。
奴隷狩り、資源の採掘などによる先住民の暮らしを無視した森の伐採などを人族側が行なった為に完全に敵対していたという。
あー…先住民が迫害されるって元の世界にもある問題だね……
ただしこちらの亜人種は厳しい森で生きる為に強い種族が多く、人族側の惨敗が多かったという。
……なんか悲しいなぁ。元の世界もこっちも実はそんなに変わらないんだろうか。
ラスタナ村は他の集落に比べると人族の街に近く、その容姿から犯罪者に狙われることがある。
見目麗しい彼らは人族の闇ルートで高く売れる。
子供を攫おうとする犯罪者との戦いは保護法が出来て30年経つ今も終わらないそうだ。
ルッカが捕らわれたのは冒険者としてやって来た2人組の男による犯行だった。
男達が村に来た翌日、幼い子供が1人行方不明になった。
ルッカはたまたま男達が大きな麻袋を抱えて森に出て行くところを目撃し、怪しさから追い掛けたところ攻撃されたらしい。
子供を逃がした後ルッカだけが捕まる結果になったそうだ。
「ルッカすっごく男前だね」
「……捕まってるんだから負けてるし」
素直な感想を口にするとルッカは不服そうに言う。
大人の男2人と戦って子供を逃しただけでも十分凄いよ。
そして隙を突いて逃げ出したところで私と出会ったらしい。
「そういやあの男、私が現れた時に逃げたよね?」
「ミオリの言葉が呪文に聴こえたんだろうな」
……危なかったのね私も。邪魔な奴めってグサッとやられててもおかしくなかったのかも。
男の一人は追跡班に捕まったが、私が遭遇した方は未だ逃亡中だという。
捕まった方は尋問の後、人族の冒険者ギルドが犯罪者として連行しに来るそうだ。
ルッカをあんなにキツく縛り、あろうことか子供を売ろうとした誘拐犯許すまじ。
次会ったら覚えてろよ!
まだ見ぬ私の何かの能力でぶっ飛ばしてやるわ!
……何かあるよね?役に立つ能力的なの。
お願い神様ー!私も魔法使いたいよーーー!!