4-1.旅立ち前
ヴァルドと旅をした時から季節は移り、冬を越えて春がやって来た。
夕暮れ時、いつものメンバーで訓練を行う。
今は私とヤマトが打ち合いを始めたところだ。
ヤマトは動きはまだ雑だけど力は私より強い。
なので攻撃をまともに受け止めると力で押されるのでやってはいけない。
避けるか受け流すのが正解だ。
何度か流しながら打ち合った後、ヤマトが棒を振り上げた瞬間を狙って一気に踏み込んだ。
ガッ!!
私が横に振り抜いた一撃がヤマトの手から棒を弾き飛ばした。
一瞬の静寂の後、ヤマトが膝に手をついて大きく溜め息をつく。
「ミオリ強いな……」
ふふふ、そうでしょう。偉大な先輩を敬いたまえ。
「ほんと強くなったよねぇ」
ぱちぱちと手を叩いてニナが笑顔で賞賛してくれる。
いててっと思って手を見ると、右手はマメが破れて血が出ていた。
自分より力が強い相手から得物を弾こうと思うと渾身の力がいるんだよね。
「いい感じで流せてたね」
ルッカが手を取り最近覚えたという回復呪文を唱えてくれる。痛みがマシになっていく。
「ヤマトも手出して」
ルッカが言うとヤマトも大人しく手を出した。
私と同じくマメを潰して血が出ていた。
勝ちたいヤマトと負けたくない私とで、切磋琢磨と言えば聞こえがいいけどお互い意地になってる部分があると思うわ。
「勝ちたいのはわかるけど手は大事にしないと駄目よ」
「お互い様だろ……」
私が言うとヤマトが納得いかないという顔をする。
ヤマトには私にない攻撃魔法もあるんだからこっちに拘らなくてもいいと思うんだけどな。
「冬に思ったけど、ミオリの仕事って実戦も多いよなぁ。なんであんな危ない仕事選んだんだ?」
ヤマトは秋から魔道具屋で働いている。
道具に魔力を付与して魔道具を作成するのが楽しいらしい。
「最初は知らなかったから。魔法使えないし動物好きだし掃除ならって選んだら意外とハードな部分があったというか……」
「意外とハードで済むとこが凄いよな。熊出て来たら普通辞めないか?」
「グレゴさんとか自警団の人達があまりにも普通に対応してたからこんなもんかと思ってしまって」
「……参考にしない方がいい人達を参考にしたんだな」
そうなのよ。まぁ羊好きだからいいんだけどね。
「明日はミオリ集会所に来る日か?」
「そうだよ。新作出来たから持って行くよ」
私が言うとレックとニナが少し嬉しそうな顔をしてくれる。弟妹って可愛いな。
少し前からだけど私は子供達が集まる集会所で自作の紙芝居を披露するようになっていた。
最初は絵本にしようかと思ってたんだけど、より多くの子供達に一度に見て貰えるので紙芝居の方を選んだ。
黄金色のドラゴンと少年の冒険物語は紙芝居というものが無かった村の子供達にわりと好評だったので2作目を作成した。
「紙芝居みんな楽しいって言ってるからちょっと自慢なんだ」
それは嬉しいな。気合いが入るわ。
原案が私、文章の編集がルッカ、絵はヤマトの指導の元で描いているのでわりとちゃんとした物を作ることが出来ていると思う。
紙芝居用の木製の枠も作ったのよ。
村の子供達をドラゴン好きにする布教活動の第一歩だ。
私はドラゴン大好き教の教祖になるのだ。ふはは。
「もうすぐヴァルドが来る頃かな」
秋に次の旅の約束をしてからそろそろ半年が経つ。
ヴァルドが来たらまた暫く村から出ることになる。
オリヴァーさんや各々の雇い主には説明しているけれど、休むことが多くて申し訳ないわ。
「君達が参加する旅は世の為になることだから、堂々と行って来なさい」
オリヴァーさんはそう言ってくれた。
世界の修理屋ドラゴンのお供になるってだけなんだけど、そう言って貰えるのは嬉しかった。
グレゴさんも帰ったらまた来いよと気楽な感じで言ってくれた。有難いな。
まぁ仕事が危険だから人気ないせいもあるんだけどそこは気にしないことにするわ。
どんな所に行けるのか楽しみだな。




