3-17.ゲームと誘引
ビシッ!
「いったーっ!!」
額に走った衝撃に私は大声を上げた。凄い痛い!
やった側のヤマトは笑っている。
帰りの道中の昼下がり、突然降り出した雨に私達は足止めを食らっていた。
通り雨のような感じだけど空がごろごろ鳴っていて危ない感じがするのでヴァルドから降りて森の中で雨宿り中だ。
あんまり高い木の近くは落雷の危険があるからね。
背が低めの木々の下を選んだ。
大して雨は気にならないらしいけど落雷は流石にダメージが大きいらしいのでヴァルドも人型に変身している。
連日顔を合わせている面々でそんなに話す話題が豊富にあるわけでもないのでちょっとしたゲームを開催していた。
ジャンケンしてあっち向いてホイ。
負けたらデコピンという罰ゲーム付きだ。
ヴァルドにルールを説明する為にまず私とヤマトが初めに勝負し、数回目のあっち向いてホイ後に私がデコピンを食らった。
「もうちょっと加減しようよ!アザになるわ!」
「そこまで強くしてねーよ」
額を押さえて喚く私にひとしきり笑ったヤマトが可笑しそうに言う。
「うう……この仇はルッカが取ってくれると信じてるわ」
「個人プレイだろ……ルッカさんのデコピン怖いな。骨やられない?」
「そこまで強くないし加減するから」
私とやったことがあるルッカは既にルールは知っている。
ルッカのデコピンもなかなか痛いよ。
数回のジャンケンの後、今度はヤマトが叫んだ。
人がやられてるの見るのは楽しいね。
私達の様子を見ているヴァルドも楽しそうだ。
「ヴァルドもやりません?」
「いや、見てるだけでいい。私にはたぶん力加減が難しい気がする」
相手にダメージを与え過ぎてしまう上に人の指の攻撃くらいは変身中でも痛くも痒くもないらしいのでゲームにならないそうだ。
元の身体のサイズ考えたらそりゃそうか。
「お前達は見ていて飽きないな。どうだ、私と共に暫く世界を回る気はないか」
ヴァルドの何気なく言った台詞に3人とも驚いて一瞬黙ってしまった。
神殿の帰りに話してくれたのだけど、魔素の異常が特に濃い場所を回って緊急性が高いようなら今回のようにすぐ枝を手配出来るようにするそうだ。
ヴァルドはこれから世界のあちこちを回る。
「俺まだ弱いから……」
「半年待ってやろう。それまでに基礎的なものを身に付けろ」
「私達は村での生活があるし……」
「何も一生付いて来いとは言ってない。半年や一年でも構わんぞ。帰りたい時に送ってやろう」
「……」
思わずルッカと目を合わせる。
村の仕事を考えると申し訳ないと思う反面、行ったことのない場所に行けるのは魅力的な話のようにも感じた。
「ルッカはどうしたい?」
「ミオリと同じこと考えてると思うよ」
ルッカも魅力的な話に感じてるってことかな?
「ヤマトが訓練してる間は旅費貯めようか」
「そうだね。それに私ももっと上を目指すわ」
行ったことのない場所にはもっと強い魔物や危険もあるかも知れない。
それにヤマトに負けたくない気持ちもやっぱり大きい。
頑張る後輩に『上達したな。しかしまだまだ甘いな』とか言うクールなキャラになりたいんだ私は。
……いや無理なのも知ってるけど。
よーし!やるぞー!
新たな目標に私達は決意を新たにした。
◇◇
ヴァルドと出会った場所で手にした枝を地に刺した。
数秒の沈黙の後、枝がざわざわと震え出した。
根が張り始めたのか地面が少し波打ち、どんどん枝が伸びて太くなり、あっという間に3mくらいの木になった。
「これで修復作業は終わりだ。この近くで転移現象を起こすような力が溜まることはお前が生きているうちはもうない筈だ」
これでヤマトみたいな目に遭う人を減らせたんだな。
先輩としての役目を少しは果たせたかな。
まだ見ぬ後輩を見ないままに出来たみたいだから。
魔物も通常モードに戻るだろうから村の生活も危険が減るはず。
殆どヴァルドのおかげだから私がやったことは少ないけれど。
大した功績じゃなくても少し役に立てたんなら動いた甲斐はあったよね。
そんな話を帰り際にするとヴァルドは微笑んだ。
「自覚も欲もないミオリが私は気に入っている。そのままでいろ」
無欲ではないよ。
かっこいい先輩でいたいしドラゴン大好き教を広めたいとか。
もちろんルッカとずっと仲良くいたいし。
ヤマトとヴァルドに出会ったから欲が少し増えたな。
いい傾向だよね。生きていく上で欲は大切らしいから。
ヴァルドに乗って森の上を飛び、待っているルッカとヤマトに上空から手を振った。
三章終了……に出来るような気がしないこともない。うん、終わり。たぶん終わり。
緩い世界観にお付き合い頂いている皆様、誠にありがとうございます。
今後もお付き合い頂けたら有難いです。
四章どうしようか考え中です。




