3-16.魔竜と魔導士
安心したと言うローマンさんが言葉を続けた。
「もう10年は前ですが、黒竜がタムノスで倒されたと聞いたので人間にお怒りになったのではないかと心配していたのです」
「それはアレが悪いからな。むしろ魔導士に悪いことをしたと思ったくらいだ……私がやるべきだった」
「本当に人間贔屓なのですね」
「いや、アレに知性がなさ過ぎたんだ。本来ならどう生きようと好きにすればいいんだか……やり過ぎて討伐されたのはアレの責任だ」
……どういうことだろう。
ローマンさんとヴァルドが話しているのはタムノスで渡り人が倒した魔竜の話のようだけど……。
私の視線を受けてヴァルドは苦笑した。
「タムノスで倒された竜は私の息子のうちの一頭だ」
……ヴァルドまさかの子持ち!
いや500年も生きてたらいてもおかしくないか。
変身中が美少女だから子供いてるって言われても不思議な感じがするわ。
しかも息子のうちの一頭ってことは他にもいるの?
「普通に驚きました。何頭子供がいるの?」
「気にするのはそこなのか……いつもミオリは気にする部分がズレているな」
ヴァルドが笑って言う。
そう?ズレてるかな?
「今までに7回ほど卵を産んだ。他の子供はそうでもないが、一頭どうしようもないのがいてな。家畜も襲う、人も襲う見境のない奴で討伐隊が組まれて倒されたんだ」
「渡り人の魔導士が命掛けで倒したらしいですね」
凄い先輩だと思ったよ。嫁いっぱい欲しいって言ってたような人なのにね。
「そうだ。魔導士には悪いことをした」
「親がどんな人物でも子供がどうなるかは保証がないので仕方ないと思いますよ」
「ミオリはズレている割に妙に達観した部分があるな」
「そうかな?ヴァルドが好きなだけですよ」
「そうか」
親と子は別の生き物だ。どうしようもないことだってあると思う。
私の言葉にヴァルドがふっと笑った。
きっと当時は魔導士の死にも魔竜の死にも心を痛めたんじゃないかな。
私はヴァルドの両手を握った。
「そんな事があっても仲良くしてくれてありがとう」
「……ああ」
私は優しい貴女との約束をちゃんと果たしたいな。
結果が出るまでに長い時間が必要だけど、頑張るからね。
◇◇
さて、お使いも終了したことだし枝を持って早速帰らないと!と思っていたらヴァルドがローマンさんと積もる話があるそうで夜は留守にすると言って出掛けて行った。
「二人部屋を一つと一人部屋を一つで」
宿で部屋を頼み二人部屋の鍵をルッカ達に渡そうとすると、一人部屋の鍵をひょいとヤマトが手に取った。
「俺が今日は一人部屋でいいから」
「えっ!いや、気を使わなくていいから……」
友達にそういう気の使われ方するの恥ずかしいよね。
「この機会で邪魔する程の野暮じゃねぇし後が怖いから今日は気を使っとくわ」
そう言うとさっさと歩き出す。
「……ちょっといい奴かもって思った」
ルッカが現金なことを言う。
いや元々いい奴だからね?
何で好きじゃないのかな。
「じゃ行こうか」
妖しく美しい笑みを浮かべてルッカが言った。
色気がヤバくてぞくっとする。
うん、やっぱり寝不足になりました。




