3-14.約束と初陣
眠っていると頭を撫でられた気がして目が覚めた。
私のベッドにヴァルド座っている。
「おかえり、ヴァルド……お腹いっぱいになりましたか?」
「ああ。食い出があるクマがいた」
可愛いこの姿で言われてもピンと来ないな。
「起こして悪かった。寝てろ」
そう言って小さい子にするように頭を撫でられる。
……犬みたいな扱いかな?
「ヴァルドの友達はどんな人だったんですか?」
私の言葉にヴァルドが微笑む。
「もうずいぶん前になったが……優しく頭の良い娘だった」
私と同じように山の中で出会ったらしい。
農村の村娘さんだったけど弓で兎か鳥を狩りに山に出るパワフルな面もあったそうだ。
「時々山で会って話をしていた。普通に伴侶と生涯を共に過ごし、子を成して老いて死んだ」
……ヴァルドから見れば私達の生涯はとても短いんだろうな。
実家でハムスターを飼っていたことがある。
私が中学に上がった時に買って貰って、卒業する頃に天国に行った。
ほぼ寿命だったんだろうけどあの時は悲しかったな。
回し車が夜カラカラ言わなくなったことに慣れるまでに時間がかかった。
ヴァルドは人と仲良くなるとあんな寂しさを感じ続けることになるのだろうか。
「私もヴァルドより先だと思うけど、仲良くしてくれるのは嬉しいですよ」
「そうか」
「ヴァルドが寂しくならないように何か出来たらいいのだけど……」
「その気持ちだけで十分だ」
……何か残せないかな。
いつか子供を産んだらその子に、その子のまた子供にも優しい黄金色のドラゴンの話をしたいな。
「私の子孫はヴァルドをいつでも歓迎するようにしときます」
「それは嬉しいな」
「はい。だからラスタナ村にはいつでも遊びに来てくださいね」
帰ったらドラゴンの絵本か紙芝居描こうかな。
他のチビっ子達にも受け入れて貰えるように活動しよう。
新たな使命を胸に初日の夜が終わった。
翌朝はすっきり目覚めることが出来た。
営みがないから夜遅くなることも朝から体力使うこともないのでルッカには悪いけど普段より元気かも。
身体がちょっと軽い。
やっぱり色気対策をする必要があるってわかったわ。
今日のジャンケンはヤマト、私、ルッカの順になった。
ヴァルドに乗って空を進み、日が高くなったので下に降りて昼食を取ることにした。
適当な木陰に座り、ヴァルドも人型になり買って来たパンを一緒に食べながら地図を広げた。
「昨日の街がここなら今この辺かな?」
「もうちょい来てんじゃないか?」
「さっき遠くに川が見えたからこの辺だと思うよ」
一番目が良いルッカには遠くに川が見えていたらしい。
ヴァルドは私達の様子をただ楽しげに見ている。
その時ゲギャッ!という鳴き声が聞こえた。
ヤマトの肩がびくりと跳ねる。
少し離れた茂みからゴブリンが出て来た。
数は6匹だ。
……野生の本能大丈夫かコイツら。
変身してるとはいえヴァルドがいるのに。匂いとかでわからないもんなのかな?
「蹴散らしてやろうか」
「いえ、大丈夫です」
この程度なら私とルッカで十分対応出来るし、ヤマトの初実戦に丁度いい気がする。
「ヤマト、デビュー戦だよ」
「……おう」
「フォローは私やるから、ルッカは危なかったら手を出して」
「わかった」
私が剣を抜くとヤマトもそれに倣って剣を抜く。
私のよりヤマトの剣の方が少し長い。
私のと同じく切れ味と強度向上の魔法を付与されている。
「首か心臓狙ってね。行くよ!」
駆け出したヤマトから離れないように私も走る。
ザシッ!という音を立ててヤマトが1匹目のゴブリンの首を刎ねた。
その隣にいたヤツの胸を私が貫く。
ヤマトが駆けて斬り付け、それに合わせて私は危険がないように最低限の手を出した。
十分も立たないうちに6匹のゴブリンは全滅していた。
剣の青い血を払って鞘に収める。
ヤマトはまだ剣を握ったまま倒れたゴブリンを眺めて呆然としていた。
「どうだった?」
「……びびった。びびったけど、もうコイツらに怯える必要がないってわかった」
それは良かった。
トラウマみたいなものを払拭出来たのならデビュー戦は大成功じゃないかな。
「ナイスファイト!お疲れさま」
ヤマトの背中を軽くぽんと叩いて笑いかけると照れたような笑みが返って来た。
「でもヤマトの腕だとゴブリンが限界だから他のに突っ込んだらやられるよ」
「……知ってます」
ルッカの注意には不貞腐れたような顔をするので笑ってしまった。
ドラゴンに戻ったヴァルドが倒れたゴブリン達を炎のブレスで焼き消してくれた。
美味しくないからゴブリンは食べないらしい。
火がちゃんと消えたかを確認してから私達はその場を後にした。




