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6.渡り人って結構いるらしい

夕食の支度をする時間が近くなっていたので、ルッカ達は一度帰ることになった。

けれどまだ話すことがあるらしくブルーノさんとルッカはまた来ると言っていた。

私はこのままオリヴァーさんのお宅に泊めて頂くことになった。

ルッカの家は客室がないそうで、ブルーノさんラナさんが申し訳なさそうにしていた。


こちらこそ気を使わせてすいません。


夕食の手伝いをしようとしたけれどナタリーさんに明日からでいいから今日は休みなさいと強く断られてしまった。

最初に入った談合用の部屋とは別の、ベッドのある2階の客室を用意して貰い、お風呂や着替えまでさせて貰った。


どんどん周りに恩人が増えていくなぁ。

何か返したいけど私に何が出来るかな……



ナタリーさんお手製の夕食はクリーミーなシチューに香ばしいパン、酸味と旨味が絶妙なドレッシングが掛かったサラダだった。とても美味しかった。


断言しよう。飯マズ世界などではない。

なので私の素人料理など出る幕はなさそうだ。


神様、どこに私の隠された能力があるの……

なんか凄い発明品を残してる先人いるんですけど……



生活に使う水は清流を汲み上げて濾過し、飲む場合は煮沸もするそうだ。

このシステムを作ったのも50年くらい前に来た渡り人らしい。

井戸の水を直に飲んでいた頃より水が安全になり、昔より病気が減ったとか。


そりゃ池の水飲まないわ……。


翻訳機、濾過装置……他にもあるんだろうな。

あれこれ先人が残してるんだけど、みんなどんだけ頭いいんだよー!



夕食の片付けが終わった頃、ブルーノさんとルッカがやって来た。

ルッカは着替えていたし洗った髪はさらに艶と輝きが増している。

やっぱり美少女にしか見えないのだけど、将来はブルーノさんのようなイケメンになることだろう。

……ここだと普通なの?



「後から他の班長達も来ますが、先に渡り人の話をしておこうと思います」


オリヴァーさんが静かに言った。


このラスタナ村はオリヴァーさんが村長だが、次の役職として村を東西南北に分けた班長がいるそうだ。

ブルーノさんは北側の班長らしい。


「ルッカは渡り人と会うのは初めてだね?」


問いかけられてルッカは頷く。


「実は、私とブルーノは会うのはこれで2度目です」


思ったより異世界人って多いな……


「前の渡り人は面白い人でしたよ。魔法が得意だったので、有名になって嫁をいっぱい貰うんだー!とよく言っていました」


思い出したようにオリヴァーさんとブルーノさんは笑う。


「いろんな女性に告白しては袖にされてたね」


……何だろう、先輩がすいません。

私と同類で異世界に夢たっぷりのオタク臭がするけれど15年も前の話らしい。


「実際に随分と有名人になったみたいでしたけど…外国で魔竜と戦い、命を落としたと風の噂で聞きました」


「……」


渡り人には他に通称がある。

役立つ知識や道具をもたらすことから『幸福の人』

それとは逆に、もたらした物で世界が悪い方へ行く場合もあることから『災いの人』

どう呼ばれるかは地域や国によって様々らしい。


どうして場所によって違うんだろう……


「例えば、弓矢が渡り人からもたらされた物だったとします。それにより鳥や兎を狩れる量が増えて暮らしは豊かになりました」


けれど、とオリヴァーさんは続ける。


「それ以上に戦で弓矢によって死ぬ人が増えた場合、この渡り人はどちらになるとミオリは思いますか?」


「……」


すぐには答えられなかった。


きっと良かれと思って渡した技術だろう。

それが多くの悲劇を産み出すとは思わずに。

もしくは渡り人が教えなくても弓矢くらい、こちらでも自然と道具として作られていっただろう。

少し早めてしまっただけのこと。


……早めなければ、死なずに済んだ命もあっただろう。


……うーむ…私の残念な脳みそには少々荷が重い問題である。



「ミオリもまた渡り人なので我々が知らない知識や技術を持っているかも知れません。ですが、それらをここで出す時はよく考えて欲しいのです」



オリヴァーさんの台詞に私はこくりと頷いた。



……ご安心ください。私、今のところ無双出来そうな気配が一切ありません。



それはそれで悲しいわ!



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