3-11.退院祝い
昼前の食堂はまだ客入りはまばらだった。
「いらっしゃい!あとお帰りなさい!」
入ると店主のリリアが元気な声を掛けてくれる。
リリアはルッカの二つ上のご近所さんらしい。小さい村なので歳が近い子は大体ルッカの幼馴染と言えるかも知れない。
ピンクっぽい金髪をお団子ヘアにした、青い目の可愛い女の子だ。
「ただいま!今日のランチは何?」
「今日は揚げ鶏のソース掛けだよ。甘いのと辛いのとでソース選べるよ」
どっちにしようかなー。
「オーダー後で聞くから座りなよ。その人は診療所にいた人?退院したの?」
「そうそう、彼がヤマト」
「いらっしゃいヤマト!退院おめでとう。大変だったね」
眩しい笑顔を向けられてヤマトの表情が硬くなる。
「……どうも。いつも昼飯ありがとうございました……」
可愛いから緊張するのはわかるけど硬いな。
「どういたしまして。ゆっくり食べて行ってね」
暫くして4人前のランチと追加オーダーした炒め物や揚げ物がずらりとテーブルに並んだ。
「今日はヤマトのお祝いだから好きなだけ食べてね。あ、ヴァルドはほどほどに食べて下さいね」
ドラゴンだもの。底無しに食べそう。
「この姿で食事をするのは久々だ」
言いながらヴァルドが料理を頬張る。両方の頬が膨らんでとても可愛い。
「美味いな」
「普段は何食べてるんですか?」
「イノシシやクマだな。大きいヤツが好きだ」
一角猪とか赤目熊か……さすがドラゴン。
「いつもは生で食べるが」
「そっか、生肉の方が栄養取れるらしいもんね」
加熱するとビタミンとか減るもんね。
「そういう話じゃないと思うぞ……」
ヤマトが私達の会話に突っ込む。
「ソース甘いのと辛いのどっちが好みですか?」
「辛い方が好きだな」
「こっちの炒め物は食べます?」
「うむ」
「創造神ってどうすれば力借りられる?」
「それはお前達が考えろ」
ちぇっ。やっぱ引っかからないか。
「俺お前の度胸凄いと思うわ……」
ルッカとヤマトが手を止めてびっくりしたようにこちらを見ている。
「さらっと会話の中に爆弾放り込むのやめろよ」
何のことかな?答えてくれたらラッキーじゃないか。
「……ミオリ、ドラゴンの怒りって村とか街とか滅ぼすから気を付けようね」
ルッカがアホの子を諭すように丁寧に言う。
「失礼だな2人とも。こんな可愛いヴァルドを暴れん坊みたいに言うなんて」
「今のはお前が注意されてんだよ!」
ヤマトが声を張り上げると、ヴァルドが楽しげに笑った。
「ミオリの周りは騒がしくて面白いな」
「騒がしい奴ですいません。ヤマト、食事中は騒いじゃ駄目だよ」
「俺が悪いみたいになってんの納得いかないんだけど……」
不満そうに呟くヤマトに私も笑ってしまった。
本当に元気になって良かったな。
初めて見た時は怪我だらけで大変だったもんね。
「……何?」
私がにこにことヤマトを見ていると本人が訝しげな顔をする。
「元気になって嬉しいなぁって思って」
「……」
「魔法も使えるし頭もいいし、きっと仕事もすぐ見つかるだろうね」
ヤマトが片手で顔を覆って俯いた。
「……ミオリその辺にしといて」
ルッカからストップが入った。何故?
「……俺のだから」
「知ってます……ああくそっ。自覚してすぐ玉砕ってなんだこれ。初体験だ」
俯いたままのヤマトとルッカの会話を聞いていたヴァルドが再び楽しげに笑う。
「ミオリの周りはやはり面白いな」
そうですか?気に入って頂けたのなら良かったな。




