3-10.痴話喧嘩と訪問
「それでドラゴンがくれた木の実食べてから乗せて貰って帰って来たんだけど」
「……なんでミオリそっち側歩くの」
「突っ込むところが多くて戸惑うわ……」
フォンス村に帰る道中、私はみんなに森での出来事を話しながら歩いていた。
時間で言うと3〜4時間くらいの出来事だった。送って貰えなければもっと掛かっていただろうけど。
ルッカが横に来ようとするけど私は移動して誰かを挟むようにしている。
今はリオンさんが私とルッカの真ん中にいる。
私は怒っているのだ。
周りの迷惑を顧みず人前であんな恥ずかしいことをされたので近寄らないことにしている。
「しかし世界の穴ってどういう原理なんだろうな」
ルッカがこっち側に来たので私はリオンさんの反対側へ移動する。
「創造神の力を借りれば塞ぐことが出来るって言ってたけど方法までは教えてくれなかった」
「……こっち来てよ」
「創造神か。スケールがデカい話だな……お前ら鬱陶しいな!痴話喧嘩に他人を挟むな!」
周りをうろうろされてリオンさんが切れた。
避けてるのにルッカが寄って来るのが悪い。
「……ミオリが俺の隣に来ないから」
「ルッカがあんなことするからだよ。横にいないといけない理由もないし」
何か言いたそうなルッカをひと睨みしてふいっと顔を逸らす。
「……じゃあもういい」
諦めたらしい。そのまま私達は調査団の人としか話さないままフォンス村に戻って来た。
宿で遅めの昼食を食べて各々休息を取り始めた。
「俺らは報告があるから行ってくるけど、その間にアレどうにかしてくれ」
リオンさんがルッカを指差して言う。
一人で座っているルッカは明らかに不機嫌そうだ。
本人が悪いのだから私が機嫌を取りに行くのは納得がいかない。
「森でお前のこと凄い心配してたぞ」
「……」
「ちょっと調子に乗っただけだろ。許してやれよ」
「……はい」
仕方ないなぁ……私が折れるか。
リオンさん達がいなくなった後もルッカは席を立たないのでテーブルまで寄って行く。
「……近寄らないんじゃなかったの」
目を合わせないままルッカが言う。
「人前で……しかもみんな体調が辛い時にあんなことしたのはルッカが悪いからね」
「……」
「けど心配かけ過ぎたし私もごめんね」
「……」
まだ駄目かな?こっち見ないし。
隣に座って顔を覗き込む。
「人前じゃなければ嫌じゃないよ」
不機嫌そうだった顔に迷いが浮かぶ。
ほんの少し間を置いてからこっちを見た。
「………ごめん」
謝ってくれた。
素直で可愛いな。そういうとこ好きよ。
「じゃあもう仲直りね」
笑顔で言うとルッカも少し笑って私の手を握った。
「いつも俺の横にいて」
もちろんだよ。だって夫婦になったんだしね。
「うん!」
◇◇
問題はまだ解決してないけれど私達は調査団の人達とラスタナ村に帰って来た。
往復で10日程留守だったことになる。
オリヴァーさんの家に調査と帰還の報告に行くと、留守の間に退院していたヤマトがいた。
「よぉ。なんか仕事頼まれてたらしいな」
「退院おめでとう!退院祝いしないとだね」
「いいよそんなん」
「リリアの食堂行こう。可愛いよ」
「それは行きたい」
「それとさ、聞いて聞いて!私ドラゴンに会って来たよ!」
早速自慢してみる。魔法使えないし体験談しか自慢することないからね。
「マジか!いんの?」
「いたよ!黄金色の話すと穏やかな優しいヤツが!乗せて貰った!」
「うわ凄ぇ。俺も見たいなドラゴン」
「また会いに来るって言ってたからそのうち会えるかもよ」
「ミオリに会いに来んの?」
「話し相手欲しいらしいから、来たらヤマトも友達になったらいいと思う」
「いろいろ突っ込みたいけどまぁいつものことか……」
その時玄関のドアベルが鳴った。
ナタリーさんが応対しに行ったようだ。
「頼もう。ここにミオリがいると思うのだが」
ん?呼ばれてるかな?
訪問者の声に聞き覚えもないし誰かと会う約束もしてないので見に行ってみると、玄関にとても綺麗な人が立っていた。
ふわふわの波打つ金の髪は足の付け根くらいまである。銀糸で刺繍の入った上等なローブを着た美少女だ。
村の人もみんな美形だけど、目の前の美少女は目が離せないような不思議な雰囲気を持っている。
「こんにちは。どなたかな?」
「早速だが会いに来たぞ」
……知り合いだったかな?
一度見れば忘れる筈のない容姿だけど記憶にないな。
睫毛の長い大きな金色の目がじっと私を見ている。
よく見ると瞳孔が人と違って縦長だ……まさか。
「……ヴァルド?」
美少女がにこりと笑った。
「わかると思ったぞ」
「えええ!ヴァルド女の子だったの!?」
「……驚くところはそこなのか」
突然のドラゴンの訪問に驚く私の側にヤマトがやって来た。
「……その子誰?」
こそっと聞こえないように言ってるつもりかもだけど、たぶん聞こえてるよ。
……もしかして好みだった?
視線がずっとヴァルドの方だ。
「ヴァルドだよ……さっき話した黄金色のドラゴンが化けてるみたい」
「……冗談だろ?」
「冗談では無い。その者はミオリの配偶者か?」
ヴァルドがヤマトを見て言う。
「違います。友達のヤマト。夫はもうすぐ戻って来ます」
オリヴァーさん達の話し合いに参加していたルッカが戻って来た。
「こっちが夫のルッカです」
夫だって。慣れなくて照れるわ。
「こっちが配偶者か。ヴァルドだ」
「どうも」
挨拶をしながら誰?とルッカが視線で聞いて来る。
玄関で立ち話もなんだから外に出ることにした。
「急だから驚きました」
「驚かせてやろうと思ったのだから成功だな」
歩きながら話す私達にルッカとヤマトが付いて来る。
人気のない村外れに来るとヴァルドにお願いをした。
大きな黄金色のドラゴンが姿を現した。
ーーーこれで信じたか?
再びヴァルドは美少女の姿に戻る。ドラゴンもかっこいいし可愛いけど、こっちも可愛い。
ルッカとヤマトは無言のままだ。
「そんな感じだよ。ついでだしみんなで食堂でも行こうか」
「ルッカさん、元々思ってたけど……やっぱあいつの順応性ヤバくないですか?」
「………それも長所だと思う」
「思ってないですよね?」
「……」
私には新しい友達が増えた。
1日1更新を目標にしてるのですが、書き上がる時間が自分でもわからんのです。ストックとは何かな。




