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モブ顔女子高生、異世界で何とか生きていく  作者: ソメイヨシコ
三章 新婚、後輩、ドラゴン
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3-9.新しい友達と帰還

トサッという軽い物音で目が覚めた。

目の前にオレンジ色の果実が転がっている。

これ知ってる。果肉が甘くて美味しいやつだわ。

どのくらい寝てたのかな。そんな長い時間じゃないと思うけど……。

少し離れた所でヴァルドがこちらを見ていた。


「……くれるの?」


こくりと首が揺れる。

ドラゴンなのに何か可愛いな。

というか何で食べ物くれるんだろう。


「ありがとうございます」


せっかくの厚意を無下にするのも申し訳ないので果実に齧りつく。

良い香りの甘い果汁が口内に広がる。

美味しいな。疲れに効く気がするわーとパクパク食べる私を見るヴァルドの尻尾がゆらゆら揺れている。


……ドラゴンの気持ちを想像してみようか。


突然弱そうなネズミがやって来た。

普通は一目散に逃げて行くのに何故かこのネズミは逃げず、自分の近くで急に眠り始めた……。

うん、弱ってるのかなって私も餌あげる気がするわ。

この果実はヴァルドの優しさなんだな。


休憩も出来たしルッカが心配してるだろうから食べたら早く帰らないとな。


「ごちそうさまでした。じゃあ、そろそろ私帰りますね」


ーーー何をしている?


ロープを木に巻き付ける私を不思議そうに見ている。


「これ使って降りて、また歩いて帰るんです」


ーーー面倒なことだな。


「人は飛べないんで仕方ないんですよ」


ーーーどれ、送ってやろう。


……ヴァルド親切過ぎないか。

弱ってるネズミを巣穴まで運んであげる感覚なんだろうか。

悪い人に騙されないか心配になるレベルだわ。


「えっと……大変ありがたい申し出なんですが私ヴァルドにお返し出来るものが何もなくて」


ーーー礼は特に必要ない。


尻尾を揺らしながら私をじっと見ている。

この優しいドラゴンは何を思ってるのかな。

……ごめん、全然わからないわ。


「じゃあお願いしてもいいですか?」


静かにヴァルドは身体を伏せた。

登れってことかな?

身体がマイクロバスサイズのドラゴンによじ登り、首の付け根辺りに跨った。

この首のトゲトゲ掴まっていいのかな?

ヴァルドは翼を広げると四足の足で地を蹴り一気に空へ舞い上がった。


「うわー!凄い凄い!!」


高所での恐怖もドラゴンに乗って飛ぶというファンタジーならではの体験に興奮が勝って気分は爽快だ。

うわー!風が気持ちいい!


ーーー乗り出して落ちないようにな。


「はい!あっちの方に仲間が待ってるのでお願いします!ヴァルドが近付くと驚くと思うので少し手前の方に降ろしてください」


ヴァルドが翼を羽ばたかせて風を切って進み出す。

この巨体って純粋に翼だけで飛んでるわけじゃないよね?何かの魔法かな。

私が数時間掛けて来た道もあっという間だ。

途中でマントも取らせてくれた。優し過ぎる。

ルッカ達が待ってる場所より少し手前で降ろして貰った。


「楽しかったー!助かりました!」


興奮覚めやらぬ私が笑顔で言うとヴァルドは首を降ろして顔を私に近付けた。


……触っていいのかな?


「ヴァルドは優しいね。本当にありがとう」


両手でその顔に触れるとヴァルドは金色の目を細めた。


ーーーお前は昔の友に少し似ている。その者も私を恐れなかった。


だって怖い要素が全然ないもの。可愛い優しいかっこいいっていう素敵な生き物だ。

ヴァルドが特別なのかも知れないけど。


「だから親切にしてくれたんですか?」


ーーーそうだな。また語り合える者が欲しくなったのやも知れん。


いいのかな。友達さんのおかげで私すごい棚ぼた状態だわ。


「話し相手が私で良ければ大歓迎ですよ」


私がそう言うと、一瞬目の前が光った。


ーーーお前の居場所がわかるようにした。また会いに行く。


急に村にドラゴン来たら騒ぎにならないかな?


「出来れば目立たないような形で来て貰えると助かります」


ーーー考慮する。


ヴァルドはそう言うと再び空に舞い上がり、森の奥へと戻って行った。

その姿を見送ってから私も駆け出した。

きっと物凄く心配してる。急がなきゃ。

ここで待ってるって言ってたから自分の不調も構わず同じ場所にいるはずだ。

息が切れるほど走り続けて、ようやくその姿が見えた。向こうもすぐ私に気が付いた。


泣きそうな顔をしたルッカが立ち上がって両手を広げる。

私は駆けて来た勢いのままその腕の中に飛び込んだ。


「ただいま!」


「……おかえり」


ふらつくことなく受け止めて、強く抱き締めてくれる。

やっと帰って来れた……安心して緊張が抜けそうになるけどまだ森の中だから気を抜き過ぎるのは良くないよね。


「心配したよね。ごめんね」


「……うん」


「いっぱい話すことあるけど、とりあえずここから早く離れよう。ルッカもみんなも辛いよね」


「……うん」


「ルッカ?」


返事はしてくれるけど腕から力が抜けないので身体を離せない。


「二度とこんなことしないで」


ルッカの声が震えている。


「……もう俺が行けない所に行かないで」


「ごめんなさい。もうしないよ」


「……嘘でしょ。また頼まれたら行くよね」


……よくわかってるね。


「どれだけ心配したと思ってんの……俺がどんなに嫌だったかっ……」


締め上げられるのかと一瞬覚悟したけど腕の力は変わる事がない。

そっか、心配かけ過ぎたんだな。

ルッカの背中を落ち着かせるようにぽんぽんと軽く叩く。


「私も出来ればもう行きたくないよ」


「絶対行かないで」


「……約束は出来ないけど善処します。ね、移動しよう?」


周りの人の目も気になるの。みんなも身体が辛いだろうし。


「約束してくれないなら人前でされたくないことするよ」


……何するの。


「先に移動し……っ!!」


言いかけた私の口をルッカが噛み付くようなキスで塞いだ。


「……!!」


人前!人前だから!!

みんな具合悪いのに何してんだ!!

背中をばしばし叩いても腰にまわした腕と後頭部を押さえる手がびくともしない。

息が苦しくなるようなディープなやつをされて腰がくだけそうだ。


「……そろそろ許してやったらどうだ?ってかもう放って行くぞお前ら」


リオンさんだったかな?ルッカの友達が呆れたように言う。

引き剥がすの手伝って貰えませんか!

周りには痛い新婚にしか見えないよねこれ!!

すごい恥ずかしい!!


「……!!」


ルッカの嫌がらせ行為は調査団の人達が移動を始めてまぁまぁ離れて行くまで続いた。



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