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2-21.魔法都市3

今から40年ほど前のこと。


ヴィオラさんが10代の頃に故郷の街に渡り人が現れた。

正確には街の近くの山でぼろぼろで倒れていたところを狩人に発見され担がれてやって来たそうだ。

病院で手当てを受けた後、町長だったヴィオラさんのお父さんが面倒を見ることになった。

やはり翻訳機が町長の家にしか無かったことと、家に空き部屋があったのでそうなったらしい。

渡り人は元の世界に妻子がいる二十代の男性だった。


「兄のように思っていたの。彼は奥さんや子供に会いたいってよく言っていたわ」


ヴィオラさんが過ぎ去った日々を懐かしく思い出しているように語る。


男性には魔導士としての才能があった。

ヴィオラさんがこのヴィソネアの魔導研究所に就職した時も共に出て来たらしい。


「転移の魔法を熱心に研究していたわ。家族の元に帰る為の希望をそこに見出していたの」


現在使用されている転移の魔法陣はその人が改良し縮小化したものだという。

今はテーブルの上に広げられる魔法陣も昔は家一軒分ほどの広さがないと作れなかったらしい。


取り憑かれたように男性は研究をしていた。

家族と再会することが彼の悲願だった。


「放っておくと寝ないし食べないし本当に手がかかる人だったわ」


ふふ、と可笑しそうにヴィオラさんが笑う。

ご飯を食べるように促し寝室に叩き込むのが日課だったらしい。


「けれど彼が何年研究しても魔法陣は生き物を乗せると発動しなかったの」


物は転移させられる。けれど蛙1匹でも乗せると魔法は発動しなくなる。

大きな壁にぶつかって、更に男性は心を奪われたように研究にのめり込んでいった。

そしてヴィオラさんが出張で留守にしていた時に徹夜を重ねて倒れ、そのまま亡くなったという。


……まさかの過労死……。


「私は彼がいなくなってから渡り人の研究を始めたの。どうしてこんな運命の人がいるのか知りたかった」


結果として特に理由はなく、全て偶然起きたことだと納得出来るまでに時間が必要だった。


「結婚して子供を持ってから、どれだけ彼が辛かったか初めてわかったの」


鳶色の目に涙が滲む。

胸が痛いな。

私が思うより世界は人に厳しいみたいだ。


「他の渡り人も様々な功績を残した人が多いのは知ってる?」


私はこくりと頷く。


「そこに載っている人の中にも彼と似たような亡くなり方をしてる人が何人かいるのよ」


魔導士は人々を苦しめた魔竜と戦い相討ちに。

医学の道を推進させた人は病院で勤務中に。

農業で病害虫や連作障害と戦った人は畑で。


「生き急ぐように働いて、誰かや何かの為に自分の命を削ってしまう人が多いの」


何となくわかる気がする。

きっとみんなここに来た意味を探していたんだと思う。

何か役目や理由があるはずだ、と。

渡り人の先輩達、まさか過労死が多かったとは……。


「あなたは自分の命を大切にしてね」


ヴィオラさんはそう話を締め括った。





魔導研究所を出て宿を探しにいく道中、ルッカは黙って私の手を握っていた。


病気と過労に気を付ければ長生き出来るのかも知れないけど、本当に解決しているのか不明な状態になった。

けどいつまで生きられるかなんて他の人だってわからないものなんだし仕方ない気がするな。


「……話を聞いてさ、転移現象って残酷だなって思ったんだけど」


ルッカがぽつりと呟く。


「俺はやっぱり出会えて良かったなって思うんだ。ミオリからしたら辛いことかも知れないけど」


「私も来れて良かったと思うよ」


こちらを見たルッカに笑顔で言う。


「結婚する相手も見つかったし?」


婚約者って言ってた件を突っ込んでみる。


「……冗談で言ったわけじゃないからね」


立ち止まってルッカが真剣な眼差しで私を見つめる。


「ミオリとずっと一緒にいたいと思ってるよ。俺と結婚してください」


……おわ、びっくり。

街中の歩道でプロポーズして貰いましたよ!

やったね!おめでとう!


「……はい。よろしくお願いします」


嬉しい気持ちと驚きで胸がいっぱいだ。

近くにいた人達が「よかったな!」「おめでとう!」と笑顔で声を掛けて通り過ぎて行くので照れるわ。


「でもルッカまだ15なのに本当にいいの?」


「いいよ。前もちょっと言ったと思うけどそんな簡単に言ってないからね」


森の人流だと結婚してねに了承した時点で婚約したことになるらしい。

じゃあ前から婚約者だったの私が知らなかったということなんだね。


「帰ったら誓約書出しに行こう」


「うん」


渡り人の先輩の足跡を追ってみたくて始めた旅の終着点ってここなのかな。

先輩達がどんな風に生きたのか少しは理解できたし。

そろそろ帰ることも考えないといけないか。


残る問題はあいつかなぁ……。



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