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2-20.魔法都市2

待ち合いスペースで待つ私達の元に魔導研究所の制服の藍色のローブを着た女性が近付いて来た。

腕には他の人が付けていない銀色の腕章を付けているので役職に就いているのかも知れない。

年齢は50代くらいかな。白髪交じりの栗色の髪を上品なアップにしている。


「魔導士のヴィオラです。渡り人の話を聞きたいと言ってたのはあなた達かしら?」


「突然の訪問で申し訳ありません。ミオリと言います」


「ルッカです」


立ち上がって挨拶をするとヴィオラさんは鳶色の目で私をじっと見つめた。


「……あなたは渡り人なの?」


「はい」


「……そう。彼は?」


ルッカに視線を移す。


「婚約者です」


真顔でしれっとルッカが嘘を付いた。

吹き出すかと思ったわ。そういうの事前に言っといてくれないと。

あれ、でも前に口約束みたいなのはしたかも。

あれで婚約って成立するの?


「大切な人がここにいるようで良かったわ」


ヴィオラさんが初めて少し微笑んだ。


「もしも帰る方法があったとしたら試したいと思う?」


……え、帰る方法あるの?


驚く私をヴィオラさんは再びじっと見ている。

ルッカも返事を待つように見て来るのは心配してるのかな。


「家族に会いたい気持ちはありますが、こちらに戻って来れないのだったら帰りません」


ルッカと一緒に生きていくって決めたからね。

一方通行なら帰らないよ。

ヴィオラさんに応えてから安心してねとルッカに微笑んだ。


「それなら話すことが出来るわ」


ほっとしたようにそう言うと、ヴィオラさんは私達を個室に案内した。


「私が渡り人の研究をしてたのはもう30年以上前だから古くなっているけれど……読める?」


古い紙を挟んだファイルを渡してくれる。

細かい文字が色々書かれた資料が悲しいことに私には読めない。


「私の考察と国内で見つけた渡り人の情報を書いているの」


「天災……?」


資料を見てルッカが呟く。


「そこに私が見つけた渡り人の年齢や性別があるでしょう。みんなバラバラで何の共通点もない」


魔力の有無もランダムで、何かに選ばれたわけでも呼ばれたわけでもないと言う。


「私が見つけた人達だけだから15名程度なのだけどね。最年少で12歳、最高齢で71歳」


12歳という言葉に心がずしりと重くなった。

まだ小学生くらいじゃないか……。


70代から異世界もキツいなぁ……病院とか凄い困るし、その年齢なら家族とのんびり過ごしたいわ。


やっぱり異世界転移って怖いな……転生の方がまだマシかな。

転生は転生で死が先にあるから怖いけど。


この世界には通信手段として転移の魔法が使用されている。

人や生き物は運べないけれど物は魔法陣がある場所へ運べるのだ。手紙や物はそういった手段で運ばれることが多い。

魔法陣が複雑かつ扱いが難しいので一般化はされていないけれど王宮や研究所、ギルドや病院などといった街の主要機関には置かれている。

ヴィオラさんはそれらを使用したり時には自分で出向いて集めた情報をまとめていたらしい。


「自分の意思ではなく強制的にやって来るのだから天災みたいなものだと私は考えているわ」


魔法が発動する上で大切なのは本人の魔力だけど、世界には魔素というものも存在する。

魔素の強い場所で生まれた魔物ほど強くなるのだとか。

そしてこの魔素が転移現象を引き起こす原因だと考えられているそうだ。

たまたま魔素の雪崩に巻き込まれた人、というのが渡り人ということらしい。


「こっちの世界で起こる現象なのにあっちの人が巻き込まれるんですか……?」


「こちらの世界にも人が突然いなくなるという事例はいくつもあるの。もちろん事故もあるだろうし全てが魔素のせいってわけではないと思うけど」


転移現象が起きる時に次元に穴が開き、こちらの人が飛ばされることもあれば穴の向こう側の人が落ちて来ると考えているそうだ。


……飛ばされた人は何処に行くのだろう。

少なくとも私の世界には異世界から来る人はいなかったと思うけど……別の異世界なのかな。


……転移現象、知るほどに怖い!!


私が生きてたのって奇跡なんじゃないのかな。

例えば森じゃなくて海に落ちていたら困る暇もなく死んでいただろうし。

そんな酷い目に誰も遭っていないことを祈るしか出来ない。


「渡り人の寿命が短いんじゃないかって思っていたんですけどそれについてはご存知ですか?」


「生没年も調べたから知ってるわ。原因として考えられるのは、まず病気に弱い」


……やっぱりか。

よく熱出すようになったから何となくそんな気はしたけどさ。


「育った世界が違うのだから、この世界の人が子供の頃からかかるような病気に抵抗力がないのよ」


それと、とヴィオラさんは続ける。


「生き急ぐ人が多いの」


どういう意味だろう……続きを待っているとヴィオラさんが寂しそうな微笑みを浮かべた。


「これは考察というより私が感じたことなのだけど……」


そう前置きして昔の話をしてくれた。


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