2-19.魔法都市1
5日間の船旅はつつがなく終わり、予定通りに隣国タムノスの河川港のある街に到着した。
船から降りる人の中にニコラを見つけて挨拶をした。
出会った日から何度か歌を聴かせて貰ったり、食事もたまに一緒に取ったりしたのでもう友人のような感覚だった。
「私もいろんな街に行く予定だから、またどこかで会えたらいいね」
「うん。ニコラなら有名な歌姫になるよきっと。あの歌も聴かせてくれてありがとう」
「どういたしまして。元気でね」
「ニコラも」
旅って出会いと別れがワンセットだからこういう時が寂しいな。
笑顔で手を振ったニコラの背中が行き交う人の中に見えなくなった。
「じゃあ私達も行こうか」
まだ昼前なので食事をしたら次の街へ出発する予定になっている。
今日も朝食がりんごとクラッカーだったからお腹空いたよね。
適当に入ったレストランでスープやパスタなどの温かい料理をしっかり食べた。
ご飯が選べるって控えめに言っても最高だ。
帰りも朝はクラッカーなのかなぁ……せめてパンにしてくれないだろうか……。
ウォルズ王国は赤茶の煉瓦の街並みが多かったけれどここは砂色の煉瓦が多く使われている。
他所の大陸から移住して来たご先祖が同じ出身地だからか建物や人の雰囲気などはあまり変わらないようだ。
言葉や文字も同じらしい。
国の規模は人口も国土面積もタムノスの方が大きい。
君主制なのはどちらも同じで国のトップは王様だ。
タムノスの先代国王の妃はウォルズの王女だとか。
人質的な意味合いで輿入れってよく聞くけれど、国と国の間に戦火が無くなって50年は経過しているらしいので関係は良好と思われる。
河川港の街と道中にあった街で気になっていた情報を集めた。
魔法都市ヴィソネアにある魔法学園ノヴァスコラ。
ある程度の魔力を持つ15歳から18歳までの貴族や平民の若者が通う学び舎だ。
聞いたことない名前なので乙女ゲームの舞台なのかはわからない。
けれど悲しい事実を一つ知った。
タムノスの皇太子殿下は現在14歳らしい。その婚約者である侯爵令嬢も14歳。
つまり、来るのが1年早かった。
私が生で見れるかもと思った悪役令嬢や攻略対象や聖女達の学園ライフはまだ始まっていない。
今頃はきっと悪役令嬢が避けるつもりの婚約者や攻略対象に溺愛されてる頃だ……。
「私あと1年ここにいたい」
「どうしたの急に」
「悲しい!今じゃなかった!」
「何があったの」
令嬢もの大好きなんだ。一時期読み漁っていたと言ってもいい。
わくわくきゅんとする素晴らしい作品の数々を知っているからこそ、その実写を見てみたかった……!!
……取り乱しました。
本来の目的はそっちじゃなかったね。
渡り人の謎解きが目的だったね。
魔法学園の方が気になり過ぎてこっちを疎かにするところだったわ。
自分の寿命問題がかかってるのにね。
こっちの方を考えるのはスンッてテンションが下がってしまうわ。
魔法都市には現在7万の人口がいるそうだ。
その為街は今まで見た中で一番大きく発展している。
往来を様々な人種や生き物や乗り物が行き交っている。
まずは魔導研究所に行ってみることにした。
賢者って簡単には会えないかも知れないけど何かわかることもあるかも知れない。
一般人も出入りできる部分が有り、魔法を学びたい人は有料で申し込み出来るらしい。無料で魔力測定もして貰えるとか。
たぶん私には魔力がないと思うんだけどやってみたいな。
魔導研究所は街の北部に位置する大きな建物だった。
魔導研究所の魔導士は国お抱えの公務員であり有事の際には騎士や兵士と国を守る盾や剣になる人々だ。
「これは……!魔力が強いですね。エルフ並というか……ああ、森の人なのですね」
測定用の水晶に手を乗せたルッカに職員のおじさんが驚いて呟き、その後に納得したように頷いた。
「あなたは魔力が全然ないですね。これもまた珍しい」
……わかってたけど泣ける。
魔力が皆無という人も珍しいそうだ。
普通は魔法が使えなくても身体にある魔力袋というものに少しは反応するらしい。
私は本来ならあるはずの内臓が備わってないくらいの珍しさだという。
……そんな珍しさ欲しくなかった。
魔導研究所には魔法だけではなく様々な研究をしている人がいる。
「渡り人の情報を探してるんですが、詳しい人っていますか?」
「渡り人ですか。今はあんまり研究する人がいないんですが、昔に研究してた者ならいますよ。呼んで来ましょう」
「ありがとうございます」
少しずつ答えに近付いているんだろうか。




