小話2 一瞬痴話喧嘩
2日目の深夜、今日も私は寝付けない。
寝不足になる→昼間に寝てしまう→夜また眠れないの悪循環が出来てしまった。
船の間はこれが続くかもしれないなぁ……。
やっぱり宿は部屋分ける方がやましさもなく健康的に過ごせるわ。
そっとベッドを抜け出しルッカの寝顔を堪能し、頬にキスをしてから部屋の鍵を持った。
わりとしっかり目が冴えているので星でも見て来ようかな。
そろそろと歩いてドアノブに手を掛けた。
「ミオリ」
後ろからの声にびくっと驚いた。
振り返るとルッカが起き上がるところだった。
「ごめん、起こした?」
「起きてたよ。それよりどこ行くの」
……ん?起きてたっていつから?
「甲板行って星でも見て来ようかなって……」
「危ないから夜中に1人でうろうろしようとしないで」
鋭い眼差しで言われる。
起こしたから機嫌が悪いのかな。
「ちょっと出掛けるくらいで過保護だよ」
「夜中だよ。何かあっても周りに人がいない場合助けて貰えないんだよ」
………甲板から落ちるとか?
そこまではしゃぐほど子供じゃないんだけど。
怪訝な顔をする私にルッカが溜め息をつく。
「ちょっとこっち来て」
怒っているみたいなので仕方なく寄って行くとルッカが私の手首を掴んだ。
「振り払える?」
「……なんで?」
「いいからやってみて」
よくわからないけど振り払えってことよね。
なんとか手を抜こうと力を入れて引いたり、体ごと後ろに下がろうとしてもルッカの手はびくともしない。
「……無理」
手首が痛くなっただけだった。
「夜中にうろうろすると知らない男にこういう目に遭わされるかもよ」
思い掛けない言葉に驚いてルッカを見る。
「ミオリは自分がそういう風に見られないって思ってるかも知れないけど、誰から見ても女性なんだよ。危ない目に遭うかも知れないってこといい加減に自覚して」
「……」
確かにここは夜もコンビニに行けてた日本とは治安が違う。
夜中の街に繰り出す程の不用心ではないつもりだったけど、他人が集まる船や宿も危ないってことなんだろう。
私の感覚はルッカからすると呆れるくらいの不用心だったのかも。
「……ごめん」
素直に謝るとルッカが掴んでいた手首を離した。
「わかってくれたらいいよ」
「……大人しく寝ます」
しおしおと項垂れてベッドに戻ろうとした私の手を再びルッカが掴む。
「もうわかったから」
「……そんな顔させたかったわけじゃないのに」
「私が悪かったんだからルッカが気にすることないよ」
「それはそうなんだけど」
……そうですか。
「ちょっとここ座って」
まだ説教する気なのかな。
「わかったからもう寝ます!」
掴まれた手を引っぱってみたけどやっぱり振り払えない。
「今は振り払えって言ってないよね」
「……離して」
「嫌だ」
何だか険悪な空気になってしまった。
これは喧嘩になってるんだろうか。
「……ミオリの馬鹿」
……何だよもう。
「不用心だったのはもうわかったから」
「違う。俺がどんな気持ちでいるか全然わかってない」
掴んだ手を引っ張るので私も力を入れて踏ん張っている。
「こっち来てよ」
「なんで」
「お願いだから」
ルッカが切ない顔をしている。
私がこんな顔をさせてしまったらしい。
意地を張ってもいいことってないよなぁ……。
無言で近付くとルッカは私を抱き締めた。
「好きなんだ。危ない目に遭わせたくないし他の奴に触らせたくない。だから夜中勝手に何処かへ行かないで」
わぁ何それ。凄いきゅんと来る口説き文句だな。
「……わかった。ごめんね」
「……離してって言われたの傷付いた」
「ごめん」
「ごめんとは違う言葉がいい」
「……大好きとか?」
「うん」
可愛いな。
笑ってぎゅっと抱きついた。
「大好き」
ちょっと喧嘩みたいになってびっくりしたわ。
一瞬だったけど。




