2-17.船旅
今日の私は快晴の空とは裏腹に不安を感じていた。
雄大な自然、巨大な河川を立派な一隻の帆船が進む。
中世ちっくなこの世界の船が怖いというわけではない。
ちょっとは怖いけど。もっと個人的な問題が大きい……。
私は子供の頃からバスと船に弱いんだ。
遊覧船で酔う人間が船旅ってヤバいんじゃないだろうか。
「大丈夫?」
「今のところ大丈夫」
まだ船が出て10分くらいだからね。
隣国タムノスには船で行ける。
この国ウォルズとタムノスを跨ぐ大きな川があるのだ。
5日間川を船で下り、そこから馬車か徒歩で首都である魔法都市ヴィソネアを目指す。
船着場がある街からは2日で着くのでそんなに遠い気はしない。
徒歩だと15日以上かかる道のりが船だと5日で済むのだからとても助かる。
帰りは川を上る為に本来なら倍の時間がかかるらしいけど、爆風の風魔法が使える船員が交代で魔法を使いやっぱり5日で帰るらしい。根性だね。
帰りのその光景をみるのがちょっと楽しみだ。
ひんやりした風が心地良い。
外でずっと風を感じていたい。
寧ろここに泊まりたい。夜は寒いだろうけど。
船室に入ると酔うかも知れないのが怖い。
ちなみに船賃は等級で変わる。
一番安い雑魚寝の大部屋でいいんじゃないかと提案したけど危険だからとルッカに却下されて個室タイプの2人部屋になった。1.5倍の値段なのに……。
キラキラと光る水面を見たり、水鳥を眺めて過ごす。
……
……
………暇だな。
船、暇だわ。
進みは遅くても歩いて旅してる方が好きかも知れない。
「船内見に行く?」
「そうだね」
酔いませんように。
船室は5〜6畳くらいの部屋に荷物を置く棚、シングルより細めのベッドが2つと、壁に取り付けられた小さな照明があるだけのシンプルな作りだった。
窓ないから朝ちゃんと起きられるかな。
そしてここで5日も2人で寝泊まりするならもう街で宿の部屋を別にする意味ない気がするなぁ……。
もしかして罠に掛かってしまったのだろうか。
「雑魚寝よりはマシだよね」
「そうだね」
にこっと笑顔を向けられて気のせいかと思い直す。
シングルの部屋2つだともっと高くなっちゃうもんね。仕方ない。
手洗いは部屋から出て行かないといけない。
手洗いを済ませて部屋に戻る途中で困ったことになった。
……部屋どっちだっけ?
やだわこの歳で迷子なんて恥ずかしい。
他の部屋の番号を確かめながら行けばいいのだけど、数字も私の知ってる文字とは違うので解読に少し時間がかかるんだ。
……これが確か1で、これが2だから12番。部屋は確か35番だったからこっちね。
……これは確か6と5だから65番。遠ざかってるじゃないか。じゃああっちだな。
……これが4でこれが8だから48ね!近付いてる!
……12番に帰って参りました。
どうしようかな。もう大声でルッカ呼ぼうかしら。
……いや恥ずかしいわ。
よし、人に聞こう。大声よりはマシだわ。
通りかかったご婦人に部屋の方向を聞くと扉の前まで連れて行ってくれました。
有り難くて恥ずかしい経験をした初日だった。
翌朝。
寝れない……。
少しは寝たけど安眠出来ない。
夜中やましさで何度も目が覚めてしまう!
寝返りの音とか気になるの!
普通こういうのって逆だと思うんだけどあっちは気にせず寝てるんだよこれが。
おはようって目覚めた瞬間から隣にいるのも気恥ずかしいし。
私やっぱり雑魚寝部屋に移動したい……。




