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2-14.鉄の街と死神の助言

秋晴れの気持ちのいいある日、私達はその街に到着した。


鉄の街と言われるノーティオ。

良質な鉄鉱石を産出する鉱山の麓に作られたその街は製鉄を生業とし、生活必需品や武器、農工具など様々な物が製造されている。

その為に街のあちこちに武器屋や鍛冶屋がある。


ルッカが行ってみたいと言った唯一の街だ。


「作業場も見学してみたいんだけど、まず店回ってもいい?」


歩けば鉄を打つ音がどこかから聞こえて来る通りを心なしか声を弾ませてルッカは歩く。

その目はキラキラと期待に満ちている。


うんうん、好きな所に行こうね。

気分はさながら子供をテーマパークに連れて来た保護者のようだ。

こんなに喜んでくれるなら年パス買うわ。


ルッカは村でやっていた鍛冶の仕事が好きだ。

鉄で作る物は何でも作ってみたいと言っているのに私に付き合ってくれているので申し訳なくなる。

どこかで終わりを見つけて帰らないといけないと思うのだけど、旅で各地を見て回るのも楽しくてまだ切り上げ時を見つけられずにいる。



まずは街の中心部にある大きな武器屋に入ってみた。

剣、弓、槍、盾、甲冑など様々な物が所狭しと置かれている。

様々な武器を手に持ち食い入るように見ているルッカを微笑ましい気持ちで眺める。

正直私には武器屋の面白さは全然わからないのだけど、楽しそうなルッカを見ているのは嬉しい。


店内をぐるりと見渡した時、カウンターの後ろの壁に飾られた武器に目を見開いた。


組紐を菱形模様に巻いた柄、艶のある木製の黒い鞘。

緩やかに弧を描く細身の刀身。

ジャパニーズ侍の心、日本刀。

こんなところでお目にかかると思っていなかった物がそこに存在していた。


「すいません、それ見せて貰えますか!?」


日本刀を作ったのはきっと間違いなく渡り人だ。

日本人なのか、侍好きの外国人なのかはわからないけど。


「これか?何十年か前にいた職人が作った武器らしいが、折れやすいしどっちかってぇと鑑賞用だぞ」


「構いません見せて下さい。あとこれを作った人がいた作業場ってわかりますか?」


「1人でその細い剣ばっか作ってた変わり者だったらしいからなぁ。本物の輝きはこんなもんじゃない!ってよく言ってたとか。たぶん作業場はもうないと思うぞ」


先輩、こだわり強い方だったんですね……。

どなたかはわかりませんが日本刀への熱い想いは伝わりました。



街を周りあちこちで話を聞いて辿り着いた墓石には、こちらの文字と日本語で名前と生没年が掘られていた。

やっぱり日本人だった。

花を手向けて手を合わせてから、今まで見つけた3人の先輩のことを思う。


……みんな40代で亡くなってる?


生きた場所も時代もバラバラなのでそういうこともあるかも知れない。けれど何か少し引っかかる。


そういえば死神が言ってたすぐ死ぬ人間って人間全体のことを言ってると思っていたのだけど、もしかして私のことを言ってたのかな?

……もしくは渡り人のこと?


次に会ったら確かめなければいけないことが出来た。





いつもの黒い夢の中。


ーーー顔の使い方も間違えていると王からお叱りを受けた。


そうね。無駄に良いその顔使えてなかったね。


グラディウスが姿を現した。

やはり輝くようなイケメンだ。中身は残念だけど。

というか満月の日以外にも今まで通りコンタクト取れるのね。


ーーー行かずに済むのならその方が手間はないだろう。


こっちは電話みたいなものなのか。

業績悪いんだから足で稼いだらどうかな。

それよりちょっと聞きたいことがあるんだけど。


ーーー何だ。


……もしかして渡り人って短命なの?


ーーー人間の基準は知らぬ。だがそうだな、お前のように異界より渡って来た者は地上との繋がりが薄い為に気付くと死んでいて王に幾度かお叱りを受けたことがある。


王様ほんとに大変だな……グラディウスは渡り人の魂を集めるのが役目なの?


ーーーいや、少し珍しい色をしていれば異界かどうかは関係ない。


地上との繋がりが薄いってどういうこと?


ーーーそのままの意味だ。血縁もおらず、この大地で生まれ育っておらず、地上にあまり執着がない。

生に執着しないということは魂が身体から離れやすい。

お前も他の者と同じ感じがする為に早めに呼び掛けた。


いや私長生きしたいけど……。


ーーーそんな風には感じないな。

お前が今想う者が心変わりした時、お前はどう思う?



ルッカが?

んー……仕方ない気がするな。

元々私があんなかっこいい人に好きになって貰えたのが奇跡なんだし。

他の人を好きになったなら諦めるわ。

一生の良い思い出として生きるよ。



ーーーそういうところを言っている。

お前達は一度全てを失って次元を渡る。

失ったものの重さに悲嘆した後、何にも追い縋ることがなくなる。自らの命でさえもな。



……そういうものかなぁ。

どうしたら長生き出来るかな?



ーーー表面で見ずにもっと考えろ。



グラディウスのくせに難しいこと言わないでくれるかな。

私は頭があんまり良くないんだから。



ーーーでは諦める癖をやめろ。それだけだ。



………。



ーーー痛みから目を逸らさず向き合え。



そういうことか。



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