4.森の集落は目がチカチカします
太陽が高く登った頃、なんと道が見つかった。
人が1人ようやく通れるくらいの細い道だけど、明らかに自然のものではない石の道だ。
「うわー!ルッカ凄い凄い!」
喜んで飛び付くと頬を少し赤くして、何か呟いた後プイッとそっぽを向いてしまう。
尊い!!ツンデレかなこれ!?
美少女の照れ顔最高です!
ーーーゲギャッギャッギャッ!
石の道を進んでいると突然、後方の茂みから謎の声が聞こえた。
「……!」
一瞬で身体に緊張が走る。
ガサガサと茂みを揺らして姿を表したのは、灰色の肌をした生物だった。
背丈は私より頭一つ分小さい。
ーーーゲギャッ!ギャギャッ!
太い棒の先に石を植物の蔦で取り付けた単純な武器を持ち、こちらに敵意を向けているようだ。
ゴブリン……?ファンタジーの定番だよねぇ……
そんなことを考えていると、周りの茂みから次々とゴブリンのような生物が出て来る。
1、2、3、4……囲まれている。
ど、ど、ど、どうしよう!?
ーーゲギャッッ!!
不快な鳴き声と共に、最初の一匹がルッカへ棒を振り上げて襲いかかる。
「駄目っ!!」
考えるより先に身体が動いてゴブリンに体当たりしていた。
そのまま一緒に転がってしまう。
ーーギャギャッ!!
地面に倒れたゴブリンが転がった状態から直ぐに起き上がり私に襲いかかる。ルッカが無事なのか見ている余裕がない。
ひー!!無理いぃっ!!
内心大パニックだが、それでも武器で殴られないように至近距離からゴブリンの顔に頭突きをかます!
「いったあぁぁぁ!!」
我ながら捨て身過ぎると思った。
私、石頭主人公じゃないから普通に痛い。
「ーーー!!」
ルッカが何か言ったと思った瞬間、ドンッと地面が振動した。
肌を刺すような冷気が辺りを覆い、何が起きたのかがわからず呆然としてしまう。
4匹のゴブリンが地面から生えた氷に貫かれていた。
どれも動いていないので、即死の一撃だったようだ。
ルッカが何か言いながら座り込んでいた私に手を差し出す。
その顔は困ったように笑っていた。
ルッカの魔法……?
強いんだねぇ……。
聞きたいことや言いたいことが沢山あるのに、言葉が通じないって不便だな。
ゴブリン事件から数時間後、私達は遂に森の切れ目に立つ事が出来た。
こちらが小高くなっていて、下の方に建物がいくつも密集している集落が見える。
川や畑、羊がいる牧場もある。
けれど集落の向こうにはまだ森が遥か遠くまで広がっていて、一体どれほどの広さなのか見当もつかない。
……うん、ルッカに出会えてなかったら間違いなく死んでたな。
ふたりで集落へと降りて行くと、集落の外側に人が十数名ほど集まっていた。
ルッカに気付いた人達が安堵の表情と喜びの声を上げる。
うんうん、良かったね。心配してたよね。
金髪の美女が目に涙を浮かべてルッカを抱き締めた。
その横で銀髪の美男がルッカの肩に手を置いて話しかけている。
たぶんご両親だよね。
それと弟や妹らしき淡い金髪の小さな子供達もぴょんぴょん跳ねてルッカに飛び付く。
それと近所の人かな?金髪のおじさま達が……ってちょっと待って。
金髪、銀髪、赤みがかった金髪、青みがかった銀髪……
なんかキラキラした髪の人ばかり、美麗な顔ばかりで目がチカチカするわ。
エルフ?ここはエルフの村なの?
念の為確認してもみんな丸い普通の耳だ。
なんということでしょう。
ここだと黒髪モブ顔の私の方が目立っている……!!
美形ばかりの集団に1人のモブ顔。
なにそれ辛い。
集まった人々の容姿に驚いていると、ルッカと話していた金髪美女が私の手を笑顔で握り、銀髪美男が何か言っている。
何言われてるのかわからないけど、雰囲気的にお礼を言われているような……?
縄切った以外は全面的に私がお世話になってますよ!
ルッカがいなかったら今頃は池の水か毒の実かゴブリンで天国行ってます!
……いやほんとよく死ななかったな。
首をぶんぶん横に振る。
あぁ言葉が伝わらないってもどかしい……!
それから集まっていた人達は解散して、ルッカ家族と集落で1番大きな建物の前へとやってきた。
きっと村長とかそういう人の家だろう。
どの家も石造りの茶色い屋根と薄茶の壁をしている。
窓にはガラスが嵌められているし、花が好きなのか窓や家の軒先には様々な花が植えられていて素敵な景色だ。
歩いている途中、ルッカから聞いたのかご両親がにこにこと自分の顔を指差してブルーノ、ラナと名乗ってくれた。
チビっ子達もレック!ニナ!と元気いっぱい教えてくれた。
ぐぅ可愛い。天使が増えた。
もう私ここで天使と暮らしたい。
村長ー!キラキラじゃないけど村民にして下さいな。