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2-12.月夜と死神

部屋の窓から綺麗な月が見える夜だった。

3つある月は全て常に満ち欠けしている。

今日は一番大きな青の月が満月みたいだ。


窓を開けると秋の涼しい風が入って来る。

湯上がりの熱を冷ますのに丁度いい。

宿のお風呂は大浴場とまでは言えないが、数人が同時に入るお風呂が多い。もちろん男女は別だけど。


この世界には残念ながらドライヤーがなく、洗った髪は拭いて自然乾燥だ。春夏秋はいいけど冬は寒い。

そろそろ脇下くらいまで切ろうかなぁ。

そんなことを考えながらのんびりしていると、不意に外から扉が叩かれた。


「ルッカ?」


扉は開けずに聞いてみる。

知らない人だと怖いからね。


「契約に来たぞ」


低い声がした。

ルッカの声ではない。


……え、怖い怖い。誰だ。


思わず扉の前から後ずさる。

強盗かも知れないから置いていた剣に手を伸ばす。


「部屋を間違えていませんか?」


念の為に聞いてみる。部屋間違いであってくれ。


「いや、お前だ。お前がなかなか呼び掛けに応えぬせいで王より『もう直接行って来い』と命令を受けた」


……うん?

なんかこういうやり取り凄く覚えがあるぞ。

耳に心地良い低音の声なんだけど、話す内容から漂うそこはかとない残念感。


「……死神?」


「お前はそう呼んでいるな」


えー……夢だと思ってたのに。

それか今も夢だったりする?


「契約に来たってどういう意味?」


剣を握る手に力が入る。

今からあの世行けって言うなら全力で抵抗させて貰おう。


「本人の合意がない限り契約は成り立たない。武器をしまえ」


扉の向こうから見えているかのように言う。

カシャッと音を立てて内側からしか開けられない鍵が勝手に外れた。


ちょっと怖い!ホラーっぽいのやめて!


扉が開くと背の高い黒い衣装の男が立っていた。

膝丈の黒いロングコート、インナーもブーツもボトムスも全て黒。

怪しさ爆発な格好ではあるが、着ている人物は息を呑むほどの美形だった。

白銀の髪、日に焼けた肌に金色に光る切れ長の目。

冷たい印象を与える美形がそこに立っていた。


「……何しに来たの?」


「お前と契約して来いという命令を受けている。『お前は言葉がアレだから顔を使って来い』と王が仰ってな」


……よくわかってる上司だね。


「では契約内容だが、お前の死後に魂を冥府の王の元へ送らせて貰う。大体の魂は死後に自我は薄くなりやがて消える。だからお前に不利益はないはずだ」


え、待って。急にそんなこと言われても凄い困る。

説明が下手過ぎる奴を急に寄越さないで欲しい。


「……普通に死ぬのと何が違うの?」


「契約者ではない魂は、大気と混ざり合い時間を掛けて再び形を成して地上に降りる。水のようなものだな。契約者は王の元で暫しの時を過ごし、魂の色や形は変わらずやがてまた地上へ降りることになる」


……なるほどわからん。ってこういう時に使うのね。


「契約者にするのって何か意味あるの?」


「異界の珍しい魂は保存して置きたいというのが王のお考えだ」


……珍しい物コレクションみたいな感じかな?


「死ぬ間際とかに言ってくれたらいいのに、どうして今言うの?」


「お前達の時間に合わせるのは難しい。気付くと既に死んでいたりするからな。死んでからでは遅いのだ」


……もうちょっと頑張って合わせられないのか。


「契約したら早死にしたりしない?」


「生きている間は干渉しないと約束しよう。自然に命が終わるまで生きるといい」


それなら確かに何も私に不利益はないよね。

けど何かこの死神相手だと不安が残るよなぁ……。


「他の死神に交代出来ない?」


「私の何が不満だ」


「言葉がアレなことかな」


「……信用できないということか」


「そうだね」


「……では信用されるまで青の月が満ちる日にお前の元に通うことにしよう」


……そういう問題じゃない。

不安な営業に毎月通いますって言われても。

担当を変えて欲しいんだけど……。


「私のことはグラディウスと呼んでくれ。ミリア」


「ミオリです」


「すまない……すぐ死ぬ人間の名前など覚えても何の得にもならぬから間違えてしまった」


こいつが業績悪い理由がわかって来た気がするわ。

死ぬ時こんな奴が担当イヤだもの。

もっと嘘でもいいから真摯な死神がいい。


「担当変えてくれたら考えるって上司にお伝え下さい」


「む。何故だ」


「何故だじゃねーわ!帰りなさい!」


いい加減腹が立ってグラディウスをぐいぐい押して部屋から追い出す。

廊下まで出るとルッカが驚いた顔で立っていた。


「ルッカ……」


「ミオリ、それ誰……」


違うよ!?浮気現場じゃないからね!!


「ではまた青の月が満ちる夜にな」


「来なくていい!」


グラディウスはニヤリとした笑みを残して消え去った。


突然消えた黒服の男をルッカに説明するのにとても時間を割くことになった。


凄い迷惑なんだけど!!


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