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2-4.海辺の街


眼下に広がる晴れ渡る青海原。潮の香りと波の音。

夏だねぇ。泳ぎたくなるわ。


「泳ぎたいなー」


「やめなさい。体調戻ったところでしょ」


爽やかな光景に私が呟くとルッカがお母さんのような口調で嗜めた。


海辺の街マーレ。

造船と漁業か盛んで、近年は美しい海と海産物を売りに観光にも力を入れているとか。

渡り人の1人が生涯を過ごした街だ。


最初の街から本来なら20日程だった道のりが、私が途中の街で高熱を出したせいで数日余計にかかってしまった。


解せないわ。

小・中学校の時にインフルエンザで学級閉鎖になった時も家で元気にヤッハーしてた側だったのに。

宿代無駄にかかるから本気で体調管理気を付けないとなぁ。

ルッカにもとても心配をかけてしまった。



小高い丘を登った先にその人の墓石はあった。

麓で購入した花をそっと手向けて手を合わせた。



本当に本当に、ありがとうございますっ!!



墓石にはこちらの言葉とアルファベットで

Anna Nicholson 1870 - 1911と掘られていた。


このお方こそ私が五体投地で毎日感謝を捧げても足りないくらいの大恩人であり、魔道具翻訳機の生みの親である渡り人だ。


アンナ・ニコルソン……女性だったんだな。

残念ながら何処の国の人か私には分からない。名前読めるから英語圏かな。

100年も前だと日本でも早世する人は多かっただろうけど、アンナさんも思っていたより早く一生を終えていることに少し切なくなった。


アンナさんが在籍していた魔道具研究所は今も存続しているが、彼女の死後に起きた研究所の火災により手記や手紙などは失われてしまったらしい。


残ってても読めなかったかも知れないけど、読んでみたかったな。

少しでもいいから彼女が何を思い、どんな日々を過ごしたのか知りたかった。


アンナさんには翻訳機が無かったのだからきっと最初は物凄く言葉で苦労したんだろうな。

自分が辛かったから、それを解決する為の物を開発して後世に残した。


凄い人だ。

そしてとても優しい人だと思う。

貴女に助けられて私は今を生きている。


「満足した?」


「うん。資料が残って無かったのは残念だったけど」


渡り人にはアンナさんの他にもう1人有名人がいる。

次はその人のところに行きたいと思う。

その他の渡り人ははっきりとした伝承が伝わっていないので探すのが少し難しい。

何かの発祥の地を探せばそこにいた可能性が高いかも、というような確証がない旅になる。


「戻って観光でもしようか。海にも行きたい」


「泳ぐのは駄目だよ」


「わかったってば。足だけ浸けていい?」


「わかってないねそれ」


私が笑顔で聞くとルッカが困ったように笑っている。

せっかく海に来たのに見るだけって勿体なく思うのは私だけ?


ルッカと並んで歩き出してから、最後にもう一度だけ振り返って墓石に頭を下げた。





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