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22.旅立ちの決意


夢を見た。


私の部屋で母が泣いている。

リビングでは父が項垂れていた。

兄は自室でゲームしていた。この野郎。


元気にやってるよ泣かないで。

話したいことがいっぱい増えたよ。


お母さん、と母の肩に触れようとしたところで目が覚めた。




「リーダー、背中貸して」


辛いことがあった時は羊の背中に顔を埋める。

もこもこを堪能していると癒されるから。

香ばしい匂いも良い。

あれ?私ちょっと変態っぽいかな。


今朝は考えないようにしてたことが夢に出て来て胸をえぐった。


私は家族は元気だと信じていけるからまだいいよね。

急に消えられた側の痛みはどれほどのものだろう。

自分の子供が当たり前に暮らしてた中で突然消えてしまったら……。



他の渡り人はどうだったんだろう。



たぶんみんなが私と同じ年頃だったわけじゃないだろう。

誰かのパートナーだったり、誰かの親だったり、考えたくないけど幼い子供もいたかも知れない。


そこまで考えて、ゾッとした。


今まで私は無双した先輩達が羨ましいと思ってたけど、その裏には両方の世界に無数の悲劇があったのかも知れない。

何でこんな簡単なことに気付かなかったのか。



……私の場合は憧れの異世界楽しんでたからだわ。

諸先輩方すいません。



ここに来てから常に胸にある翻訳機に触れる。



ーーーこれを作った人は誰?



言葉、医療、料理、美容、服飾……数え切れない誰かが残した物に私は助けられて生きている。

楽しむ余裕があったのもその人達のおかげだ。





先人の足跡を無性に追いたくなった。






「というわけで、渡り人の先輩を探しに行こうと思う」


その日の夕方、私はルッカに言った。

いやー、最初の村を出る決意をするのに2年近くもかかるとは我ながら驚きだ。

ルッカは夢から始まった私の話を黙って聞いてくれていた。


「……もうみんないない人かもよ」


ルッカがぽつりと呟く。


「うん。翻訳機なんて100年も前だしね。他の先輩も生きてる可能性は低いよね」


「それでも行くんだ」


「……うん。行きたい」


ルッカと離れるのは寂しい。

けれど今は行きたい気持ちが勝ってしまった。


「……戻って来る気はある?」


「ここに?」


「一生旅したいってわけじゃないでしょ」


「……まぁそりゃ。自分が納得出来たら終わると思う」


「じゃあここに戻って来よう。俺と」


……ん?俺と?


聞き間違いかと思って顔に疑問を浮かべてしまう。

ルッカは真剣な顔で私を見ている。


「逃がさないって言ったよね」


「……結構前だよね?」


「何勝手にお別れみたいに決意してんの。俺も行くから」


え、本気ですか?

目を丸くする私にルッカは怒ったように続ける。


「ちょっと腕が上がったからって簡単に俺置いて行こうとするとか傷付くんだけど」


「……すいません」


「ミオリの気持ちってそんなもんかー」


「いや、そういうわけじゃ……」


「俺自惚れてたかもなー」



……なんか凄いえぐってくるんですけど!



でもよく考えたらそうか、お互いちゃんと言ったことが無かったかも知れない。


「ルッカ」


「なに」


声が怒ってるね。

こっち見てくれないかな。



「大好きだよ」


「……」


青紫の綺麗な目に私が映る。


「ルッカが、ずっと大好き」


怒っているような、拗ねているような、何とも言えない表情のルッカが両手を広げてくれた。


私は迷わずその中に飛び込んだ。


「俺も」


背中に回した腕にぎゅうっと力を入れてお互いを抱き締めた。

暖かくて安心出来て、幸せな気持ちが溢れる。


「……もうちょっと身長差が欲しい」


抱き締めた状態のまま、ルッカが呟くので笑いが漏れた。


「もっと背が伸びてからちゃんと言おうと思ってたのに……」


「そんなに身長に拘りがあったのは知らなかったな。今も十分かっこいいのに」


「……好きなのは知ってた?」


「うん」


ふふふ。

私は鈍感系主人公ではないので、いつも一緒にいる人の好意がわからない程の天然ではない。

お互い隠しても無かったと思うし。


「じゃ勝手にどっか行こうとするのもっと酷いと思うんだけど」


「……ごめん」


「当分許さないから」


そう言ってルッカが腕に力を込める。




……すいません、ちょっと息が苦しいです!



ほんとに怒ってるのかギリギリと胴体を締め上げられて肋骨が悲鳴を上げる。


「っぎぶ、ギブ!」


「何言ってるのか分からない」


「くっ…苦し……!」


息が出来なくなってルッカの背中をペシペシと必死に叩く。


「反省した?」


「………!」


しました!したから力を抜いて下さい!!


「ちゃんと反省してね」


ようやく絞め技から解放されて、ゴホゴホと咳き込んで息をする。



………酷くない?



ほんとに息止まってたんだけど!


涙目でルッカを睨むといい笑顔が返って来た。


「次似たようなことしたら許さないからね」



………絞め殺すってことかな?



いつからそんなヤンデレみたいになったの。

ヤンデレ系は私の守備範囲外なんだけど……。



健全が一番いいんだよ、愛しい人よ。



ひとまず一章が終了です。

拙い文章にお付き合い頂きありがとうございます!

次は旅編が始まりますが、どこまで続くのかがまだ未定です。

ゆるい目線で暇な時にお読みいただければ幸いです!

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