表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/160

21.じわじわレベルアップ中

「鹿が出たから追い払いに行くぞ」


グレゴさんにそう言われて牧場から程近い農地に私はやって来ていた。

鹿って言われたら日本人なら観光地とかにいるニホンジカを思い浮かべるよね。


ヘラジカみたいな巨大生物だとか聞いてない。


少し距離を置いた向こうには馬のように巨大な鹿が数頭、我が物顔で畑を歩いていた。

キャベツに似た野菜を食べ続けている。

あんな集団を放っておいたらあっという間に食べ尽くされてしまうだろう。



いやぁでもさ……数百キロはありそうなあの鹿、私に倒せとか無理じゃないですか?



「最初に爆撃して散らすから、逃げる奴は放っておけ。向かって来る奴は頑張って仕留めろ」


畑の被害を最低限にする為に魔力石は使わないようにとグレゴさんが淡々と言う。



……要約すると死んで来いってことですね?



「蹴りが強烈だから足に気を付けろよ。あと角な」


雇い主がスパルタ過ぎるので訴えたいのですが、訴える機関がありません。


「じゃ行くぞ」


行きたくないよぉー!


「………はい」


悲壮な決意で私は腰の剣に手を掛けた。




こちらの世界に来てから、2度目の春を迎えた。


ルッカと訓練を続け、冬は熊や狼から羊を守る中で私は少し強くなったと思う。

巨大な鹿を一頭仕留めることに成功したよ。

自分でも驚きの成長だ。


グレゴさんは四頭仕留めてたけど。

そして私は返り血いっぱい浴びたのにグレゴさんはあまり浴びて無かった。

どうやるんですかそれ……まぁ聞いたところで出来るわけないけど。


仕留めた鹿は村の人達と解体して分け合った。

動物の解体を見ても吐かなくなったのも成長だと思う。



最近村に出来た食堂でルッカと昼ご飯をよく食べるようになった。


リリアという女の子が切り盛りする食堂は味が良く価格も優しいので評判も客入りも上々だ。

店主が可愛いので夏にやって来る変人冒険者もこぞって利用しそうだな。


「ルッカの剣凄く使いやすかったよ」


「それは良かった」


私が笑顔で報告するとルッカが嬉しそうに微笑んだ。


冬から仕事で武器を作らせて貰えるようになったルッカは作品第一号の剣を私にくれた。


「ゴブリンの首くらいならスパッと落とせるから」


そう言って渡された時は少し怖かったけど。


強度と切れ味を向上させる魔法が付与された剣だ。

結構前から計画してくれていたそうで、以前ルッカの部屋で見たノートは原案だったらしい。


空想武器ノートじゃなかったね。失礼しました。


私が使い易いようにと長さと重さを調節してくれた剣なので大切にしたいと思っている。


「ミオリが血塗れで歩いてたって聞いた時は心臓に悪かったけどね」


15歳になったルッカは私の背丈を追い抜き、顔つきも幼さが抜け精悍になりつつある。

まだ5センチくらいしか負けていないのにミオリ小さくなったねとご機嫌だ。


私は縮んでませんよ。


声も少し低くなって、可愛い天使が華麗なイケメンに変身していた。

まだちょっとショタ枠だけど。

男の子の成長期とは恐ろしい。



一方の私は……髪は伸びた。

残念ながら身長や胸のサイズが変わらないので見た目の変化をあまり感じない。


「心配かけてごめんね。鹿の血塗れになって服ダメになったんだよね」


グレゴさんに服代請求しようかな。


本日のランチは鹿肉ステーキ定食だ。

私が頑張った成果がここに。

ルッカは肉大盛りを食べている。

その細身の身体のどこに消えるの、というくらいルッカはよく食べるようにもなった。

きっとまだまだ大きくなってブルーノさんのようにモデル体型になるんだろうな。

美形遺伝子羨ましい。



「そういやアーヴィンが結婚するらしいね」


「あぁ、聞いた」


別の集落からやって来た婚約者の女性とオリヴァーさんのところに挨拶に来ていたのだ。

蜂蜜色の髪と桃色の目の儚げな美人だった。

見た目は良いアーヴィンと並ぶとお似合いのカップルに見えた。


「それでさ、帰りに彼女に聞こえないとこで『今まで悪かった』って言われたよ。凄くない?」


成長したなぁアーヴィン。いや元から私より年上だけど。

ある時期を境にアーヴィンから嫌味を言われることはぴたりと無くなっていた。

彼女に嫌われるような言動を控えるようになったのかもね。

話し掛けては来ないものの、態度は確実に軟化した。


「……ミオリは何て返したの?」


「普通に結婚おめでとうって言った」


これから結婚する人に恨み節を言う程私は小さい人間ではない。たぶん。

私からの祝辞にアーヴィンは複雑そうな顔で頷いていた。


「ミオリのそういうとこ好きだよ」


「……ありがとう」


柔らかく笑ったルッカが眩しくて心臓が痛い。


「ここの人達って別の集落の人とどうやって知り合うの?」


「秋に合同の祭りがあるんだよ。そこで相手が見つかったら手紙とか時々男が会いに行ったり。同じ集落で見つける人も多いけど」


年頃の男女しか出ない婚活祭だとか。

ちなみにブルーノさんとラナさんは幼馴染らしい。

文通でやり取りも素敵だけど、子供の頃の恋がそのまま実るのも素敵だね。


「ルッカもそろそろ参加する年頃?」


たぶんルッカはどこ行ってもモテるだろうな。

こんなにかっこいいのだから相手が森の人でもきっと選ぶ側のはずだ。

その辺の問題は私の方が深刻だろな……。


「俺は必要ないから出ない」


「モテそうだもんね」


なんて羨ましい……。


「……そう?」


「うん。かっこいいもん」


素直に口にするとルッカは嬉しそうに私の頭を優しく撫でた。


「ミオリも可愛いよ」


「……っ!」


ぶわっと顔が熱くなり心臓が跳ね上がる。


ぐぉお!これがイケメンの破壊力!!

慣れない!いつも一緒にいるのに未だに慣れない!!


たぶん真っ赤になっているであろう私の顔を見てルッカは満足そうに笑っていた。


……余裕があっていいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ