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20.モブ雑談

呼び出してわざわざ来て貰ったのに、流石に悪いことをしたなと思った私は日没後の宿屋に訪ねて行った。

丁度夕食時のピークのようで食堂は賑わっている。

2人用の席にジークが1人で座っているのを見つけて声を掛けた。


「ジーク」


呼び掛けると私を見て意外そうな顔をする。


「さっきはごめんなさい。慌ててたとはいえ、失礼だったと思う」


立ったままペコりと頭を下げるとジークは口角を上げた。


「わざわざそれ言いに来たのか?」


「うん。ロブさんとオズワルドさんは?」


「森にいる間は嫌でもずっと顔合わせてるからな。ここにいる時は別行動なんだ」


話をしているとジークのワインと料理が運ばれて来た。


「何か食ってけば?」


ワインに手を伸ばしながらジークが言う。


「帰ったらご飯あるから」


「じゃ何か飲めば」


1人で食事するのが寂しいのだろうか。

そんな可愛い性格してるようには見えないけれど。


「じゃあジュース頼もうかな。あ、今日悪いことしたからワインだけおごるよ」


「ワインだけってのがお前っぽいな」


財布持って来てて良かった。

ジークの向かい側に座って果実ジュースを頼んだ。


「ジークはいつから冒険者になったの?」


「12だな。登録出来る年齢になってすぐだったから」


ジークが食べているジャーマンポテト風の炒め物がとても美味しそうでお腹が空いて来た。


「剣持つようになったのは?」


「5歳くらいだな。親父が傭兵稼業してたから」


「早いねー」


戦闘能力をスポーツに置き換えてみるとどうだろう。

ルッカやジークが全国ランキング上位の選手だとして、私が去年から毎日1時間練習してそのレベルに追いつけるだろうか?

間違いなく答えはノーだろう。

私が毎日練習してもせいぜい平均的な女性よりはちょっと健康な人の域から出られるとは思えない。



……私、健康な人目指してるのかな?



運ばれて来たジュースを切ない気持ちで口にする。

マンゴーとオレンジの果汁を混ぜたような味がした。


「私が森抜けるとか夢の話だね……」


思わずぽつりと呟くとジークが不思議そうな顔をする。

そのソーセージ美味しそうだね。


「ここ出たいのか?見た目はともかく、馴染んでるように見えるが」


おい。見た目は確かに浮いてるだろうけど言わないでくれるかな。

ホクホクのじゃがいもも美味しそう。


「そうだね、居心地いいよ。だけど本当にここにずっといていいのかって時々思う」


せっかくの異世界なのに旅しないとか勿体ないよね?

街も一回くらいは見てみたい。

だけどそのハードルがとても高い。


「まぁどこにも行けないっつーのは窮屈かもな」


そうなんだよ。森で助かっただけ運が良かったんだろうけど、今は単に外に出られないという状況だ。


「ジークはいろんな街に行ったことある?」


「そうだな。あちこち回ったな」


「海辺の街とか行ったことある?」


「ある。なんかグニャグニャした生き物食ったな」


嫌なことを思い出したような顔をするジーク。

たぶんそれ、タコかイカだよね?


「足に吸盤とか付いてるやつ?」


「知ってるのか?屋台で売ってた赤いやつ食ったけど、飲み込むタイミングが全然わからんかった」


タコだな。


「それ私がいた所では茹でて食べたり、細かく切って生地に入れて焼いたりして愛されてたよ」


「あれが……?」


信じられない物を見る目で呟くジークに笑ってしまった。美味しいのに。

ああタコ焼き食べたいな。

もっとお腹空いて来たわ。帰ろうかな。


「食っていいぞ」


ジークがお皿を私の方に寄せる。

通りかかったホール係の人にフォークの追加を頼んでくれた。


え、いいの?


「お前さっきから視線がずっと皿だからな。腹減ってるんだろ」


「やだな私の食い意地が張ってるみたいじゃないか。ずっと見てたわけじゃないよ。時々だよ」


「いいからちょっと食って帰れ」


呆れたように言ってから、ジークは可笑しそうに笑った。




ポテトもソーセージも美味しかった。




ジークと食事してたことが何故かルッカの耳に入っていた。

村の情報網が怖い。

浮気を問い詰められるかのような圧のかかった尋問を受けた。


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